『クジメ』福岡県北九州市/戸畑産~日本全国☆釣り行脚
ムシムシと暑い日は、夕涼みがてらの夜釣りが快適です。
盛夏の頃の熱帯夜と比べれば、まだ今の時期は幾分か過ごしやすい日没後。風呂上がりにチョイと竿を出して晩酌の肴を釣る、なんてのもよいものです。そんな夕涼みがてらのチョイ釣りを楽しもうと、福岡県は北九州市の戸畑岸壁にやってまいりました。洞海湾の湾口に面し、何かと魚種豊富なエリアですから、チョイと岸壁際を探ればサクッと晩のおかずくらいは釣れるでしょう、多分。
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釣り場近くの朝日湯にて、1日の仕事の汗を流してリフレッシュ。ついでに人気のラーメン店にて旨いチャンポンで腹を満たしてから、日没を迎えた岸壁に赴きます。平日とあってか、釣り人はルアーマンが1人竿を振るのみで静かなものです。西日本、とりわけ九州や沖縄の今の時期は日没が非常に遅く、20時を過ぎてもまだわずかに明るさが残るといったところなので、夕飯や風呂を先に済ませてしまうというのもアリなんですな。
ところで、今回の釣り場となる洞海湾は、八幡製鉄所をはじめ、明治期以降に産業の発達により大きく街が発展した地域でもあります。産業の発展と公害問題は切っても切れぬ縁ですから、この洞海湾も深刻な海洋汚染に悩まされた期間があります。
以前は“死の海”だった
特徴的なのは、他の公害問題の多くが戦後の高度経済成長期に発生しているのに対し、ここは第二次世界大戦以前、昭和の初期には、すでに公害汚染が深刻になっていたことです。もっとも、半世紀にわたる地域住民のご尽力のおかげで、今ではきれいな海が戻り、多様な海洋生物が生息する豊かな海となっております。かつては魚はおろか、大腸菌すら住むことができないことで〝死の海〟とまで呼ばれた洞海湾は、いわば日本における海洋汚染の大ベテランでありパイオニア。ドブ好きのワタクシとしては相手(釣り場)に不足はありません。
当日は夜半に満潮を迎える潮周りとあって、ユラユラと満ち込みを感じさせる雰囲気はいかにも〝釣れそう〟です。安物のセット竿(竿とリールで1980円)に市販の胴突仕掛けを結び、エサのアオイソメを付けたら岸壁際にそっと仕掛けを落とします。
と、沈むはずの仕掛けが止まり、軽く竿を煽るとギュルギュルッ! と元気な手応えで15センチほどのメバルがヒット。〝待ってました〟とばかりの食い上げのアタリからは高活性がうかがえます。持って帰るにはもう少し型のよいものを、と魚を逃がし、再び仕掛けを沈めるとすぐにメバルがハリ掛かり。入れ食いです。
仕掛けを入れる度に釣れるのは嬉しい半面、型が今ひとつゆえ、「おかずにするには、もう少し大きい物を…」と魚を逃がしては岸壁を探り歩くうちに、ふと一番奥にあたる角が目に入りました。1本の常夜灯が灯り、いかにもショボくれた雰囲気の奥の角。ドブ好きで、奥が大好きなワタクシとしては見過ごせないポイントです。こういうショボそうなポイントには、型のよい魚が残っていることが結構あるんですな。
白身魚らしい風味もしっかり
ということで、期待を抱いて奥の角に仕掛けを沈めてみますと、ほどなく、やや力強いアタリでカサゴが釣れました。やはり魚は残っているようです。これで納得。コイツを晩酌の肴にしてもよいのですが、今日はなんとなく「もうちょっとイケるはず…」などと欲が出てカサゴをリリース。常夜灯の陰になった際の部分に仕掛けを沈めて着底。と同時にグリグリッとアタリがあり、竿を煽ると元気な手応えで釣れたのはクジメです。それほどの型ではありませんが、入れればアタるという楽しい時間が満喫でき、「まあ、こんなところでしょう」とクジメをキープして竿を納めることにしました。
クジメというと一般的には聞き慣れない魚かもしれませんが、見た目が非常にアイナメと似ていることから、釣り場では混同されることの多い魚です。このクジメを煮付けにして晩酌を楽しむことにします。
肉付きのよい魚体に箸を入れると、身離れのよい白身は淡白で美味。アイナメと似ているだけあって、白身魚らしい風味もしっかりと感じられ、ワンカップとの相性もなかなかです。
その昔は〝死の海〟とまでいわれた洞海湾で、仕事終わりにチョイと竿を出して肴を確保。豊かな海を取り戻していただいた地元の方々に感謝!
といったところで、また次回。
三橋雅彦(みつはしまさひこ) 子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。
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