『父よ、あなたは…』幻冬舎/本体価格1000円
沖田×華(おきた・ばっか)
1979年、富山県生まれ。漫画家。高校卒業後、22歳まで看護師として病院に勤務。2008年、『こんなアホでも幸せになりたい』(マガジン・マガジン)で漫画家として単行本デビュー。18年、『透明なゆりかご』(講談社・既刊8刊)で第42回講談社漫画賞(少女部門)を受賞。
――17年間絶縁状態だったお父さんの突然の訃報を聞いた時、どんな気持ちでしたか?
沖田 亡くなる直前に、急に父から青汁サンプルが届いたんです。名前も「沖田罰華様」って間違ってたし…。どんな嫌がらせだよって。だから、母からの電話で死んだことを聞いた瞬間は、まったく信じられなかったですね。母も半信半疑で、地元の警察に確認すると言って、2時間後に「やっぱり死んでる」って聞いた時、初めて本当に死んだんだ…とあぜんとしました。
――暴力や警察沙汰など、かなり破天荒なお父さんだったそうですね。一番の思い出はなんですか?
沖田 暴力は犯罪スレスレってことばかりで書けないし、他もありすぎて絞れないのですが…(笑)。でも、父の匂いが場面場面で結構印象に残っていますね。父の車の灰皿には、いつも黄色の粒状の芳香剤? が大量に入っていたんですが、それが滅茶苦茶臭くて、さらにニコチン、父の油臭さがブレンドされていて、夏の車内は地獄の香りで死にそうになっていたのは、今でも強く印象に残っています。
「家族がいても孤独死する人はするんだな…」
――孤独死、遺産相続、認知症など、現代社会が抱える問題が見事に現実となっています。目の当たりにして、どう思いましたか?
沖田 父は当時、認知症の姉(叔母)と2人暮らしだったんですけど、父が亡くなってどう対処したらいいのか分からず、私が連絡するまで、数日間、父の遺体とすごしていました。だから、家族がいても孤独死する人はするんだなって実感しましたね。
あと、他の漫画でも描いたのですが、孤独死する人は自分が明日死ぬなんて想像していなくて、死後、今までどういう風に生活していたのか手に取るように分かるんです。エログッズが残っていたり、どういうジャンルのAVが好きだったのか分かった時は、さすがに複雑でしたね。
――夢に出たお父さんの言葉で救われることになりました。どのような状況だったのでしょうか?
沖田 父は夢の中でほとんどしゃべらなかったのですが、2回目に見た夢では、若い父が元気そうに釣りをしていて、その姿を見るといろんな想いが込み上げてきて、やっと感謝の言葉を伝えることができたんです。なのに、最後に父が「うん!!」って甲高いアニメ声で叫んだんです。せっかく感動的なシーンだったのに、オチがギャグ漫画じゃん! って大爆笑したんですね。当時、連載の過密スケジュールと葬式が重なって鬱っぽかったので、久しぶりに泣くほど笑ったなーって少し元気が出ました。
(聞き手/程原ケン)
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