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『南海トラフ地震』目前!? 能登地方震度6と不気味なカツオ豊漁の“宏観異常現象”

(画像)Roman Samborskyi / shutterstock

石川県珠洲市で6月19日、震度6弱を記録する強い地震が発生し、翌20日にも震度5強を観測する地震があった。大地震が起きた後の1週間は比較的大きい余震に見舞われる傾向にあるが、能登地方を襲った地震について武蔵野学院大学特任教授(地震学)の島村英紀氏はこう分析する。

「南海トラフ巨大地震の前には内陸直下型が発生することが知られています。今回の能登地方の地震はマグマを起源とする群発地震だと思います。日本は東日本火山帯と西日本火山帯が広く覆っています。日本のどこにマグマが上がってきても不思議ではないのです。同時に、内陸直下型の群発地震の場合、地下深くのマグマが地表近くに上昇しているケースがあります。普段、活動が見られない火山で噴火を起こすこともあるため、注意が必要です」

能登地方では4年前から地震が増え始め、2020年12月から今年6月20日までに発生した震度1以上の地震は160回を超えている。大地震でいえば、昨年9月にも震度5弱の強い揺れを観測し、一昨年3月も震度5強、07年には震度6強を記録している。京大、金沢大の合同研究チームは「地下深くから上昇した水などの流体が、地震を引き起こす断層面に入り込み、断層がすべりやすくなっている可能性がある」と指摘しているようだ。

「合同研究チームは2つの原因を考えているようです。1つは、地下に水などの大量の流体が溜まって膨張し、周囲の地盤を押すような力が加わっている。最大震度6弱を観測した珠洲市の地表面は20年12月以降、約4センチ隆起した。もう1つは、断層の隙間に入り込んだ流体が断層を押し広げ、すべりやすくなっていることです。22年になって隆起は収束傾向にあるが、地震の数自体は増えている。最近は断層面に流体が入り込み、潤滑油のような役割を果たしているようです」(サイエンスライター)

本震か余震かも分からない

流体の正体は何なのか。

「私は地下で何かが起こっている、その原因は水ではなく、先ほど言ったように、マグマだと思います。能登半島には火山はありませんが、西日本火山帯に属している。そういう例は過去にもあるのです」(島村氏)

水かマグマか。話を先に進めると、地下の流体が群発地震を起こしたケースは、1965〜70年に長野県で発生した松代群発地震が有名だ。能登半島の地震にしても、震源の深さが約10キロメートルで浅くなっているのが気掛かりだ。

「地下の流体の上昇と共に震源が浅くなり、地表に大きな揺れをもたらす地震が起こりやすくなっている。流体の量は20年12月からの1年間で約200万立方メートルに達したとする見方もある。これは国内の活動的な火山が1年間に蓄えるマグマの量に相当するそうです。今後、マグニチュード(M)7程度の大地震が発生する可能性もあるので注意を要します」(前出・サイエンスライター)

気象庁は6月20日に記者会見し、鎌谷紀子・地震津波監視課長がこう述べた。

「1年以上続いている中で起きた地震で、本震、余震も分からない。一連の地震が長く続く中で起きた。今後も続くと思われる」

能登半島の北岸には、1729年の能登・佐渡地震(M6.6)や前述した2007年の能登半島地震(M6.9)などを引き起こした海底活断層がある。これに流体が入り込むと、大地震を引き起こすかもしれない。そして、巨大地震の前兆として内陸地震が連鎖して発生する「チェーン地震」にも警戒しなければならなくなる。

「気象庁が警戒を呼び掛ける山陰と北陸の地震も危ない。石川から島根までの日本海側の全域、そして世界でも有数の活断層密集地帯である『近畿三角帯』で、極めて強い地震が発生する可能性がある。阪神・淡路大震災のように震度7クラスの内陸地震です」(全国紙社会部記者)

地震前の“宏観異常現象”

さらに、不気味な現象がある。本来なら喜ばしい朗報なのだが、今年はカツオの豊漁で千葉の勝浦港や銚子港では、5月の水揚げ量が4月と比べると35倍になった。阪神・淡路大震災の際は淡路島沖合で真鯛が空前の豊漁。これは「宏観異常現象」ではないのか。

「分かりません。ただ、空前の豊漁の後に、大地震が発生するケースはあります。福徳岡ノ場噴火の後に動物性プランクトンが大量発生したようですから、それを狙ってきたのかもしれない。その意味では太平洋プレートの活性化がもたらしたとも言えます」(島村氏)

東北・三陸地方では、「イワシが大漁の年には大地震が来る」という言い伝えがあるという。実際、1896年の明治三陸地震と1933年の昭和三陸地震の際、イワシの豊漁だった。

「海底で岩盤がぶつかり合うと、その際に電流や磁気が発生し、それを水中生物が捉えるんです。その感度は人間が作ったセンサーよりも桁違いに高い。水中生物が海底の異常を感じ取ることにより、彼らの生態や行動に異変が生じる可能性がある」(同)

6月26日には熊本県で震度5弱の揺れを観測する地震が起きた。

「日本列島は(巨大地震の)Xデーに向かって確実に近づいています」(同)

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