企業経済深層レポート (C)週刊実話Web
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外食業界の“朝食革命”に注視〜企業経済深層レポート

外食業界では今、「朝食」が大注目だ。その背景を外食業界関係者が解説する。


「外食産業は、コロナ禍の時短や三密回避などで経営に大ダメージを受け、挽回策に躍起でした。同じ頃、消費者は在宅勤務などで時間に余裕ができ、朝食を食べる人が増えた。さらに健康を気遣う人も増え、朝食を摂る傾向が強まりました。それらがマッチングし、外食業界では朝食が注目されているのです」


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経営コンサルタントも次のように指摘する。


「厚生労働省の2020年の国民健康栄養調査では、日本の朝食を食べない成人は総人口の約12%。21年の総人口に照らせば約1500万人です。この人たちが外食などで朝食を摂れば、年間約54億食、一食平均400円でも2兆円を突破します。コロナ禍で、こうした層の一部を朝食に呼び込める気配が出てきただけに、外食産業界では近い将来『半分にしても1兆円市場』と騒然としているのです」


そうした読みもあってか、大手外食チェーンを中心に昨今は朝食メニューが相次いで充実している。また、新規参入組も増えている。


フードアナリストが、その全体傾向をこう指摘する。


「食料品をはじめ軒並み値上げ傾向の中、外食産業は朝食でなんとか客を呼び込もうと、各企業が涙ぐましい努力をし、質と量を充実。同時に驚きの低価格で提供し、まさに『朝食革命』が起きつつあるのです」

ファミレス系はセレクトメニューで

では、主な飲食店の朝食メニューを覗いてみよう。

セブン&ホールディングス傘下の大手ファミリーレストランチェーン『デニーズ』(326店舗=22年1月・東京)は、業界でいち早く朝食に目を付けてきた。特徴は、その安さ。前出フードアナリストが言う。


「『デニーズ』では、一部店舗で朝食サービスを展開中です。例えば、ゆで卵付きのトーストモーニングおよびグリルドチーズサンドモーニングが、なんと税抜き200円と最強の安さ。栄養バランスと量を重視する人は、セレクトモーニングがある。例えばスクランブルエッグ、パンケーキ、ドリンクバーの付いたセットが税抜き600円です」


『デニーズ』の売り上げ(21年2月期:売上高508億円)は、他店同様コロナ禍の影響で厳しく、昨年は各月とも対前年比を下回ることが多かった。だが、今年に入り、1月で対前年比29.9%増と復活の兆しが見える。朝食パワーか。


『デニーズ』の200円より安い価格で愛されているのは、カフェ業界ベスト3に入る『コメダ珈琲店』(950店舗=22年5月・名古屋市)の「価格ゼロモーニング」だ。コメダを愛する顧客の1人はこう話す。


「朝、飲み物を頼むとトーストなどのパン類とゆで卵、バターなどのモーニングがタダ。無料といっても飲み物が400円以上なので、まずまずの価格設定ですが、コメダ特有のゆったりした店内でモーニングを食べながら新聞類を読む昔ながらの時間帯は、至福の時です」


『コメダ珈琲店』を運営するコメダホールディングス(名古屋市)の決算も順調で、22年2月期は売上高333億円と対前年比プラス15.5%。来期予測も370億円、同プラス11.1%だ。

安価攻める牛丼チェーン

一方、牛丼チェーンの朝定食も高い人気を誇る。

安さでいえば、松屋フーズホールディングス(1180店=21年3月・東京)の『松屋』と、ゼンショー傘下の『なか卯』(464店舗=20年3月・東京)が出色だ。外食関係者が言う。


「『松屋』の『玉子かけごはん』は、ごはん、みそ汁、生卵か半熟卵、それにミニ牛皿か冷や奴などが選べる小鉢のセットで税込み290円の安さ。『なか卯』は、ごはん、みそ汁、のり、生卵か目玉焼きで『松屋』のような小鉢はないが、税込み250円。値上げに頭を悩ます庶民の味方と評判です」


ゼンショーグループ傘下『すき家』(1940店舗=22年5月・東京)の朝食は、メニューの多さが売り。フードアナリストが言う。


「朝食だけで16種もある。一番人気は税込み350円の『まぜのっけ朝食』で、並ごはん、みそ汁、牛小鉢にオクラと温たま、かつおぶしが付く。栄養バランスのよさと安さが光ります」


ゼンショーは経営も順調で、22年3月期の売り上げは6585億円、対前年比プラス10.7%だ。牛丼部門は対前年比106.4%。23年3月期の同部門はプラス260億円と鼻息は荒い。


「朝ラー」、つまり朝食でラーメンを出すことで話題なのが『幸楽苑』(435店舗=22年6月・郡山市)だ。幸楽苑の朝食ファンが言う。


「中華そばクラシック290円を筆頭に、サイドメニューが充実の『Cセット』600円など、『朝ラー』がガッツリ食えるのが嬉しい」


海外からも朝食ブームに殴り込みだ。台湾のタピオカで有名な『春水堂』は、運営会社が17店を全国展開する。21年から一部店舗で豆乳スープなど珍しい台湾朝食を提供し話題だ。


外食関係者は朝食ブームの今後を、こう見る。


「朝食は健康見直しムードで右肩上がり。追い風は外国人観光客の受け入れ再開です。かつて外食の朝食に多くの外国人観光客が訪れただけに期待は大きいです」


外食業界での朝食戦争はより激化の気配だ。