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蝶野正洋『黒の履歴書』~“リバイバル”をより楽しむには…

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web

ウチの息子が映画『シン・ウルトラマン』を劇場まで見に行っていた。

初代『ウルトラマン』をモチーフに、現代的に再構築した作品ということなんだけど、若い世代からも人気を集めて大ヒットしているそうだ。

俺はリアルタイムだと、1971年に放送された『帰ってきたウルトラマン』世代なんだよ。もちろん『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』も見ているけど、当時よくやっていた再放送で後追いしたと思う。

前田日明さんが、『ウルトラマン』の最終回でゼットンに倒されたウルトラマンの姿にショックを受けて、その仇を取ると誓って格闘技を始めたという有名なエピソードがあるけど、前田さんは1959年生まれの63歳だから、そのくらいが初代『ウルトラマン』の直撃世代なんだろうね。

とはいえ、50年以上も前の作品が令和になってリバイバルヒットするというのは凄い。これは元々の原作エピソードに、今も通じる普遍的なメッセージがちゃんと込められているからなんだろうね。

『アンパンマン』だって、子供向けアニメの定番でお馴染みだけど、あの設定にも自己犠牲の精神や、飢えのない平和な社会を目指したいという、原作者・やなせたかしさんのメッセージが込められている。それが自然に伝わってくるから、いつの時代でも支持されているのだと思う。

リバイバルやリメイクよりも…

リバイバルでいうと、もう1つ航空アクション映画『トップガン』の36年ぶりの続編が公開されて、こちらも大ヒットしている。

当時、中高生だったオジサンたちが懐かしさに引かれて見に行ってるのが大きいけど、若者や女性たちも迫力満点の映像を見ようと映画館に詰めかけているそうだ。やはりこうしたリバイバル企画は、世代を問わずに広く客を呼べるというのがポイントなんだろうね。

このブームに乗って最近はいろいろな作品がリメイクされたり、続編が作られたりしているけど、俺が見たいのは『ゴッドファーザー』だね。リメイク的なものでもいいけど、俺は続きの「パート4」が見たい。コッポラ監督も、アル・パチーノもまだまだ元気そうだから、あともう1本くらい撮ってほしいよ。

プロレス界もリバイバルというか、レジェンドと呼ばれるベテラン選手が集まったイベントや試合は手堅い人気がある。

でも、俺が見るかぎり、レジェンドレスラーたちと同じ時代を過ごしたオールドファンが楽しんでいるだけで、あまり若い層には響いてないね。やっぱりオールドスタイルなプロレスを今の若い世代が楽しんでくれて、はじめて「リバイバル」といえる。

レジェンドレスラーたちも、往年よりは動きも落ちているし、昔のままとはいかない。だからこそリバイバルブームを起こすのは難しいんだけど、そういう意味でも新たな可能性があるのが「メタバース」だよ。

俺も今、NFTやメタバースに進出していて、仮想空間に蝶野正洋のアバター着ぐるみが歩いてたりするんだけど、これが進化したらメタバース内でプロレスができるんじゃないか。そうすれば、どんなレジェンドでもずっと現役で試合ができる。近い将来、メタバースでリバイバルを超えたプロレスの世界が始まるかもしれないよ。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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