日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web
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『エゾイワナ』岩手県/大船渡産~日本全国☆釣り行脚

釣友の案内でヤマメ釣りを楽しんだ前回。「山さ行ぐど〜」とのことから、ちょっと及び腰ではあったものの、着いてみれば人家もあるエリアで、沢沿いにはガードレールもあるお手軽ポイントだったのでひと安心。〝これならママもOKさ〟と、ひとしきりヤマメ釣りを楽しんだのですが、竿を納めて帰るのか…と思いきや「んで、もっと奥さ行ってみっか」との提案が。「いや、ご覧のとおりワタクシ、作業着に運動靴なのですが…」と言ってはみたものの「大丈夫大丈夫、いいとこあっから」と勧められるがままに車を走らされ、やがて山の中の林道に。


【関連】『ヤマメ』岩手県/大船渡産~日本全国☆釣り行脚 ほか

これはいよいよ本格的に山の中ですな。左手には、はるか谷底を流れる沢が、うっそうと生い茂る木々の間から見てとれます。林道はギリギリ車が1台通れるくらいの幅です。これはさすがにママもパパもOKしないのでは…と不安を抱えつつ運転する横で、そんな気配を察知したのか「大丈夫だぁ。この先に車も止められて、下さ降りられっとこがあっから」と釣友。


しばらく走ると沢が近づき、林道脇に藪の広がる場所に。「藪ん中さ車突っ込んで止めて」ということで、キィキィと草や枝が引っかく音を聞きつつ停車。「んで、降りてやってみっぺ」と竿を片手に斜面を降りる釣友について行くと、確かに、なだらかな斜面はこの服装でも難なく沢まで降りられます。「ここはイワナが出っから。でも熊も出っけどな」と準備を進める釣友に、「ふざけたコトを言ってんじゃねーよ」と思いつつこちらも準備。

小気味よい手応えにヤマメが

気持ちを落ち着けて、あらためて沢を眺めてみると、人里離れた山の中だけに水は清冽。うっそうとした木々に囲まれ、涼しい沢は〝昼なお暗く〟といったところで、マイナスイオン溢れる抜群の環境です。もちろん、釣り場としても大きな岩で形成された高低差のある沢筋ゆえ、落ち込みも至る所にあり期待は十分。先ほどまでの不安はどこへやら、これからの釣りに胸が高鳴ります。現金なものですな。

日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

仕掛けを結んでいると、「ほれ、来たど」との声。顔を上げると、いち早く準備を終えた釣友が、早くもイワナを釣り上げております。「漁協も放流もない沢だから、ちゃっこい(小さい)のや掛かりが浅いのは逃がさねどな」とリリース。「そっちもやってみらいん」と言われ、そそくさと岩影に仕掛けを入れると、グリグリッとアタリが出て小気味よい手応えが伝わります。が、ハリに掛かっていたのはヤマメ。普段なら十分に嬉しい1尾なのですが、せっかく山奥まで来たのだからイワナが釣りたい…。釣友も「あれぇ、ここはイワナが多いんだけっど、ヤマメは珍しいなぁ」とのこと。とはいえ、まずまずのサイズでもあり、ハリを飲ませてしまったこともあってビクに入れ、再び沢を登りながら竿を出します。

鮮やかな美しいイワナ

さすが、慣れている釣友にはポツポツと小振りのイワナが掛かり、都度リリース。対してこちらにはなかなかアタリがありません。しばらく沢を登ると大きな滝にぶつかりました。豪快な水音をたてる幅広の滝は美しく、これを見られただけでも沢に降りた価値があるなぁ、と眺めていると「ここだけは先にやらしてくれな」と釣友が竿を担いで滝壺に。後ろから見ていると、ほどなく竿が立ち、絞り込まれる竿先。バシャバシャと水面で暴れるイワナは、まずまずの大きさです。無事に取り込まれ「コイツはおめ(お前)が持って帰れ」と魚を差し出す釣友は、なんとも満足気な表情です。羨ましい…。

イワナ (C)週刊実話Web

「いいのが1尾釣れたからオラはもういいや。まだいっぺから、おめもやってみらいん」ということで入れ替わり、静かに滝壺へと仕掛けを沈めます。グリッ! グリグリッ! ほどなく出たアタリに竿を煽ると確かな手応え。踊り出たのはだいだい色の腹が鮮やかな美しいイワナです。釣友も「おお、いがったっちゃ」と喜んでくれ、ワタクシも「アンタ先にやったくせに」とは言わず、2人仲良く竿を納めて山を後にしたのでありました。


イワナ (C)週刊実話Web

さて、持ち帰ったイワナとヤマメは、串に刺してオーソドックスに塩焼きで賞味。山奥の沢の魚だけにクセはほぼありません。ただ、山あいの民宿などで食べる養殖イワナと違い、純天然だけに脂乗りはなく少々パサついた身質です。でも、かえってそれが天然物らしくもあり、うっそうとした沢や美しい滝の情景を思い返しながら日本酒をチビリ。


イワナとヤマメの塩焼き (C)週刊実話Web

終わってみれば作業着&運動靴でも、山深い沢を堪能でき、素朴な山の幸で晩酌もできたのですから釣友には感謝です。ま、車にはだいぶ引っ掻き傷がつきましたけど…。
三橋雅彦(みつはしまさひこ) 子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。