企業経済深層レポート (C)週刊実話Web
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話題の新ビジネス“メタバース”とは〜企業経済深層レポート

インターネット上で、現実に近い体験ができる立体仮想空間「メタバース」が、世界中で大注目だ。


ICT(情報通信技術)業界関係者が「メタバース」について解説する。


「メタバースとは英語の超(mata=メタ)と宇宙(universe=ユニバース)を合わせた造語で、1992年アメリカのSF小説に登場しました。現在は、コンピューターグラフィックス(CG)でネット上に構築された立体仮想空間を指します。利用者はゴーグルを使ってその仮想空間に入り、CGで出来た自分のアバター(分身)を動かして活動します」


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それが、なぜ今大注目なのか。


「昨年秋、米Facebook(フェイスブック)のザッカーバーグCEOが、『メタバースはインターネットの次の章』と語り、メタバースが次世代のインターネットになると明言したのです。そして、世界的に知られたFacebookの社名を『Meta=メタ』に変え、21年に1兆円、22年はさらに投資を加速すると言ったためです」(同)


加えて米金融大手シティグループが今年4月、メタバースの世界経済圏が2030年までに最大約980兆円から1600兆円にまで拡大する可能性があり、ユーザー数は50億人程度に達すると予測した。これらの流れから、全世界でメタバースブームに火が点いた。

試合観戦もメタバース上のアバターで

国内でも今年に入り、メタバースを促進する業界団体が続々と結成され、企業の動きも活発化している。

例えば、一般社団法人「日本デジタル空間経済連盟」(東京)では、SBIホールディングス(東京)の北尾吉孝社長が代表理事に就任。ヤフーを運営するZホールディングスを筆頭に、ソフトバンク、電通、凸版印刷、野村ホールディングスなど、国内ICTのリーディングカンパニー33社が参画した。同様に一般社団法人「メタバース推進協議会」(同)の代表理事には、ベストセラー『バカの壁』で知られる養老孟司東大名誉教授が就任。ANA、三菱商事など22社が名を連ねる。


では、国内の大手企業の動きはどうか。


まずはKDDI(東京)。ICT関係者が言う。


「20年から東京・渋谷で渋谷区と提携し『バーチャル渋谷』を公開しています。ハロウィーンや、サッカー日本代表戦のパブリックビューイングなどをメタバース上で実施。さらに、プロ野球の横浜DeNAと組み、横浜スタジアムを仮想空間上に再現。ファンのアバターを集めて試合を配信する企画も、20年からチャレンジしています」


プロ野球観戦といえば、福岡ソフトバンクホークス(福岡市)も5月からソフトバンク(東京)の支援を得て、ホークスの本拠地『福岡PayPayドーム』をメタバース化し、各種サービスを開始した。


プロ野球関係者が言う。


「仮想空間『メタバース』上の球場に『アバター』で訪れ、球場内を散策することができます。また、バーチャル空間で実際の試合をほぼリアルタイムで観戦できるほか、プロのピッチャーが投げたボールがバーチャル空間に再現され、『軌道』や『球速』を見ることも可能です。テレビとはまったく違う観戦方法なだけに、実際の球場に行けないときは大いに楽しめます」

多様な出会いの場に

スポーツ観戦といえば、ソニー(東京)も英サッカーの強豪『マンチェスター・シティ』と提携。実際のスタジアムをメタバース上に再現する計画を進めているというから驚きだ。

パナソニック(東京)は、系列子会社がゴーグル開発に力を入れ、従来の半分の重さという軽量かつ顔にフィットするメガネ型ゴーグルを開発し、注目されている。IT機器関係者が言う。


「バーチャル空間には長時間滞在するため、ゴーグルが軽いことはユーザーにとって極めて大切です。それとパナソニックのゴーグルは、普通の液晶パネルよりもクリアな有機ELパネルを用いており、リアル度が半端ないと評判です」


ゲームや音楽の世界では普及が早そうだが、日本の住宅業界にも動きがある。大和ハウス工業(大阪)が業界初の「メタバース住宅展示場」を始めたのだ。不動産業界関係者が言う。


「大和のメタバ展示は、メタバース上に構築した住宅をアバターで内覧できるもの。これまでもオンラインでの住宅展示はあったが、それは単に画像を見るだけでした。メタバ展示場では、顧客のアバターが営業アバターと話し、納得した上での住宅購入が可能になるというメリットがあります」


メタバース市場に意欲的な業界は、まだある。ICT関係者が言う。


「コロナ禍で旅行業界が苦しい中、ANAは京都市と提携し、年内にもメタバース京都旅行を開始します。また、ブライダル業界では、メタバース・アバター婚活が登場しつつあります。今は、ネット上でのマッチングアプリ婚活全盛時代ともいわれますが、アバター婚活はさらにその先を行き、アバター同士の会話が重視されるだけに、外見によらない中身重視での出会いが増えるかもしれないという期待も高まっています」


メタバース市場は、日々熱くなるばかりだ。