蝶野正洋 (C)週刊実話Web
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蝶野正洋『黒の履歴書』~時代に合わせ変化するスポーツ中継

日本キックボクシング界で世紀の対決と謳われている「那須川天心VS武尊」をメインに据えた『THE MATCH』が6月19日に東京ドームで開催される。


当日にはフジテレビで生中継が予定されていたんだけど、「契約合意に至らなかった」ということで、放送が中止されることが発表された。


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なぜ中止になったのかという理由が正式に発表されていないから、これは臆測でしかないんだけど、放送権利料が高額だったとか、運営スタッフの一部が反社会的勢力(反社)と繋がりがあるという疑いがあったなど、いろいろな説が飛び交っている。


今や「疑いがある」レベルでも、反社との関わりは決定的にダメなんだろうね。


格闘技やプロレスは全国各地で興行を打つから、今でいう反社との繋がりがある時代は確かにあった。でも、今は断ち切っている所がほとんどだと思う。


新日本プロレスで言えば、大型スポンサーをつけるために旧来の関係を徹底的に排除する流れになって、1989年に坂口征二さんが社長になった頃には、すでに一掃されていた。そこまでやらないと、90年代のドームツアーみたいな大きなイベントは仕掛けられなかったと思う。


格闘技興行については、それほど詳しくはないけど、それでも真っ当なスポンサーをつけるためには反社を排除するという流れは同じだったんじゃないかな。

時代のシガラミがある

もう1つの放送料の問題だけど、これもあると思う。安めの価格設定だったというけど、これだけのビッグイベントだから、それなりに高かっただろうからね。

そもそもテレビのスポーツ中継番組というのは斜陽で、今やプロ野球中継もほとんどやってない。BS・CSやケーブルテレビの専門チャンネル、それにネット配信などになっていて、それなりに課金しないと見ることができない。


今回の『THE MATCH』も、ネットメディア『ABEMA』のPPVでは生中継されるというから、これも時代の流れというか、ここでテレビから離れて課金メディアに振ってしまうタイミングなんじゃないかな。


世界的にも、プロレス・格闘技中継は、ほとんどがネットか課金メディアに移行している。ただ、日本のプロレスだけは、またちょっと事情が違う。


テレビとプロレスの関係は古くて、それこそ力道山の時代は視聴率の取れる優秀なコンテンツとして不動の地位を築いていた。それから団体も中継枠も増えたり減ったりしていくんだけど、新日本プロレスでいえば、所属選手はテレビ朝日との専属出演契約も結んでいた。だから契約中に他団体に移籍したら試合は出来るかもしれないけど、他局の中継番組には出られないという縛りがあったんだよ。


今は契約も変わっていると思うけど、要するにその時代からのシガラミがあるから、ネットや課金メディアに完全移行するのが難しいんだよね。


最後に、天心VS武尊の勝者予想をしてみたいけど、実はそんなにキックボクシングに詳しくない。ただ、天心が所属している『RISE』のプロデューサーを務める伊藤隆さんとは旧知の仲。だから今回は『RISE』側について、天心が勝つと予想しておくよ。
蝶野正洋 1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。