巨大地震の前触れとされる、ナマズが暴れる、カラスの大群移動、深海魚リュウグウノツカイ打ち上げといった生物の異常行動や地震雲、地質的な異変などをまとめて〝宏観異常現象〟と呼ぶ。
地鳴りもその1つ。関西方面では地鳴りの報告が後を絶たないという。
2011年の東日本大震災、阪神・淡路大震災(1995年)の直前にも「地鳴りが聞こえた」という地元住民の証言などがあっただけに、なんとも不気味である。
武蔵野学院大学特任教授(地震学)の島村英紀氏が次のように解説する。
「大正関東地震(1923年)の際にも、地鳴りが聞こえたといわれています。地鳴りは、浅発地震や群発地震などの場合に発生することが多く、人が揺れを感じないごく小さい地震においても聞こえることがある。地震波は周波数が低いが、20ヘルツ以上のものは人間の耳にも聞こえるので、地鳴りとして感じることができます」
長野県の松代群発地震(65年〜70年)では、爆発音を思わせるような地鳴りも観測されたという。
「地鳴りは、地盤が堅固な岩石からなる土地で聞こえることが多々あり、日本では茨城・筑波山周辺が地鳴りのよく聞こえる地域として有名です」(同)
活断層が密集する震源
さて、関西方面でキャッチされたという地鳴りは、巨大地震の来襲と何か関係があるのか。
「4年前の6月18日には、震度6弱を記録した大阪北部地震があったばかり。関西には『近畿三角帯』という敦賀、淡路島、伊勢湾海峡を頂点とした三角形内で形成された活断層が密集する、世界で最も危ない震源があるから心配です」(サイエンスライター)
この三角地帯では天正地震(1586年)、慶長伏見地震(1596年)という巨大地震が起きている。
「天正地震は、若狭湾から三河湾までの広い地域で被害を出しました。しかも、豊臣秀吉がまだ天下統一をしていない時期ですから、死者が極めて多数ということだけしか分かっていません。伏見地震は、有馬―高槻断層帯などを震源とし、京都で約1000人の死者が出たようです」(同)
前述のように、地鳴りも宏観異常現象だが、科学的に証明されたわけではない。
「地鳴りは、地震に結びつくものもあれば、そうでないこともある。はっきりしたことが言えないので、用心するしかありませんね」(前出・島村氏)
5月以降、関西では京都と和歌山を中心に15回も有感地震があった。5月2日には京都で震度4の地震も発生している。
日本はまさに地震の活動期。近づく南海トラフ地震の先駆け地震と見られる阪神・淡路大震災は、すでに起きている。さらなる警戒が必要だ。
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