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『ヤマメ』岩手県/大船渡産~日本全国☆釣り行脚

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

アイナメ、カレイにはフラれたものの、夜釣りでメバルやクロソイが楽しめた前回の三陸岩手は大船渡。

「せっかく来たんだっけ、明日イイとこさ連れてってやっがら」と、現地の明るい釣友からの強い勧めにより、日帰りの予定を変更して、ビジネスホテルに一泊することとなりました。あれこれと予定を立てながら釣行計画を練るのが遠征釣行の楽しみですが、こういった〝行き当たりばったり〟の風まかせな釣りもまた面白いものです。

さて、単独釣行であればビジネスホテルにて、唯一の趣味ともいえる艶系動画観賞を深夜まで嗜むのが、ささやかな楽しみ…なのですが、今回は同行者アリ、しかも時間指定でフロント待ち合わせということで早めに就寝することにします。翌朝は、カーテンを開けっぱなしで寝たせいか、気持ちのよい朝陽の眩しさで起きることができました。

荷物をまとめてフロントに降りると、早くもヤル気に満ち溢れた釣友が待っており、「よ〜し、山さ行ぐど」とのこと。「いや、山と言われましても、ワタクシ、作業着と運動靴なのですが…」と不安を述べたものの「いいがらいいがら、その服装でもやれっから」と、言われるがままに車を運転し、朝のまだ静かな市街地を走ります。

道路脇に流れる沢にて

路地を曲がり、ちょっとは山合いの雰囲気が出てきたかなぁ、といったあたりで「この辺でやってみっぺ」と指示が出て車を止めたのは、山合いとはいえ、まだ住宅がポツポツと建ち街中の雰囲気が残るエリア。道路脇に流れる沢にもガードレールが設置されております。道路の上から、流れをのぞき込んでみると…あらやだ、渓流のごとく水は清らかに澄み、いかにも魚が潜んでいそうな落ち込みや淵が点在してよい雰囲気じゃないですか。「ホレ、あんまりのぞき込むと魚が警戒すっから下がれぇ」と言われて慌てて首を引っ込め、早速準備に取りかかります。

「オラはゆっくりやっから、先にやってみらいん(やってみな)」との有り難いお言葉に、そそくさと安物の竿に、糸、オモリ、ハリだけの簡単なミャク釣り仕掛けをセット。「エサはコイツば使え」と渡されたミミズをハリに付けて、川に自分の姿を映さぬように、そぉっとのぞき込みながら淵頭へと静かに仕掛けを沈めます。グリグリッ、いきなりアタリがあり、つい早アワセ。エサの取られたハリが返ってきました。

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

「落ち着いてやらいん」と言われ再トライ。警戒してしまったのか、すぐにアタリは来ず、仕掛けを沈めてしばらく待ってみると、グリグリッ! アタリが来ました。グリッ、グリグリッ! 二度目の明確なアタリで軽く手首を返してハリ掛かりです。ブルブルッと元気な手応えでパーマークの美しいヤマメが躍り出ました。カラッと気持ちよく晴れた朝、澄んだせせらぎに山からはウグイスのさえずり…素朴ながらも実に贅沢な時間です。

ヤマメ
ヤマメ (C)週刊実話Web

「んで、交代な」と、隣で竿を出す釣友にも、ほどなくヤマメがハリ掛かり。海と違ってポイントが限られる渓流釣りは本来、単独で行うことが多いものですが、気の置けない仲間とともに、こうして交代しながら竿を出すのもまた楽しいものです。

“渓流の女王”5尾ゲット!

あまり場を荒らさぬよう、この後は場所を変えて何カ所かの沢を点々と釣り歩き、そのすべてが宅地に隣接するお手軽ポイントながら、お互いヤマメの手応えを堪能。ハリを飲み込んでしまった物をキープ、そうでない物は丁寧にリリースをして、2人で5尾ほどキープしたところで「5尾もあれば肴には十分だべ?」と竿を納めることとなりました。

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

その見た目の美しさから〝渓流の女王〟とも呼ばれるヤマメ。清冽な流れにしか住むことのできない性質ゆえ、もちろん食味のよさでも評価の高い魚です。一般的には塩焼きがポピュラーな食べ方ではありますが、今回はそこまで大きくないことと、個人的な嗜好から甘露煮にして一杯やりたいと思います。

ヤマメの甘露煮
ヤマメの甘露煮 (C)週刊実話Web

弱火でじっくりと煮詰めてから冷ましたヤマメに箸を入れひと口。しっとりとキメの細かい身質を感じさせるホッコリとした食感、香ばしさのある白身に川魚らしい風味が僅かに感じられて実に旨い。コイ科のような川魚特有のクセとは異なる清々しい味わいに、ついつい酒も進みます。

海に山にと自然を満喫できた大船渡釣行。これで終わりかと思いきや「さて、準備運動はこのっけにして、もっと山の奥さ行ぐど〜」となりまして、このお話はまた次回。引き続き作業着と運動靴なんですけど…。

三橋雅彦(みつはしまさひこ)
子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。

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