Ⓒ2022『PLAN 75』製作委員会/Urban Factory/Fusee
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やくみつる☆シネマ小言主義~『PLAN 75』/6月17日(金)より全国公開

『PLAN 75』 監督/早川千絵 出演/倍賞千恵子、磯村勇斗、たかお鷹、河合優実、ステファニー・アリアン、大方斐紗子、串田和美 配給/ハピネットファントム・スタジオ


長編初監督作品で、今年のカンヌ国際映画祭で「ある視点」部門に出品し、見事、特別賞に輝いた本作。


超高齢化社会が一層進んだ日本の近未来が舞台。満75歳以上の人が申請すれば、国の支援のもとで安らかな最期を迎えられる「PLAN 75」制度が施行されたという話。増えすぎた高齢者と現役世代とのバランスの調整弁として、映画の中の社会では歓迎ムードです。


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明るい調子のロゴマークが入ったのぼりがはためく横で、若い職員が保険か何かを販売するような口調で「死の選択プラン」を説明。対する高齢者も「支度金としてもらえる10万円は何に使ってもいいの?」と、まるでコロナの見舞金がもらえるような明るさで確認する、リアルで空恐ろしいシーンから始まります。星新一あたりが書きそうな、ちょっとダークなSFホラーです。


2025年には5人に1人が75歳以上と、少子高齢化スピードが世界一の日本が、今後どうなっていくのか。米・電気自動車企業『テスラ』のCEOイーロン・マスクが「何も対策を取らなければ、日本は消滅する」とつぶやいて話題になったように、海外でも注目の的になっているようですし、本作の審査員諸氏も身につまされたのかもしれません。

コロナ禍も重なりタイムリーなテーマに

63歳の自分も高齢者のとば口に立ってますし『週刊実話』の読者も同年代が多くいらっしゃるのではと推察しています。相次ぐ芸能人の自殺報道はもちろん、自殺者数の発表報道などでも、最後に「いのちの電話はこちら」みたいなテロップが流れます。この映画の後でも、これが必要なのではとすら思いますものね。「どうせこの先、生きていても大して面白いことねぇしな」と考える自分のようなタイプは、本作を見て相当にヘコむでしょうから。逆に、「PLAN 75」があれば、利用したいと思う方もいるかもしれません。

昔の日本にも、口減らしのために高齢者を山に捨てる「姥捨山」のような慣例があったわけです。近未来でも、増えすぎた高齢者が生きづらい世の中なのかもしれない…と不安になっている上に、「コロナ鬱」も重なる今、非常に時宜にかなったテーマです。


そして、主演の倍賞千恵子。自らの老いの晒しっぷりが、潔すぎです。しかも、皺の影を強調するライティングが残酷な追い討ちをかけています。まぁ、年をとるってこれが現実ですよね。吉永小百合の若さのほうがむしろ不思議なわけで。


もはや、高齢の映画解説者はいなくなりましたが、もし淀川長治さんが生きていたらなんて言うか…。「怖いですね、怖いですね」の声が聞こえてきそうです。
やくみつる 漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。