今回は証拠のない話をしようと思う。1つの思考実験として読んでいただきたい。新型コロナ禍の中、どうやったら経済を成長させられるのかというテーマだ。
新型コロナの感染拡大時に、外出規制や県を越える移動の規制、あるいは営業自粛を要請すると、大きな経済的被害と財政負担が生ずる。そのことは26兆円もの補正予算を投じたにもかかわらず、4~6月期のGDPが前年比マイナス10.2%と、二桁の落ち込みを示したことでも明らかだ。
だから、経済のことだけを考えたら、人々の移動規制は絶対にしてはならない。むしろ、旅行や飲食に補助金を出して、どんどん人を移動させれば、経済は活性化する。しかし、そこで問題になるのが、そういった施策が感染を拡大させてしまうことだ。欧州を襲った感染第2波も、夏のバカンスで人の移動が増えたことが原因だった。
にもかかわらず、旅行や飲食の促進政策をやめない。どんなに重症者が増えても、医療機関がパンクして医療崩壊になっても、絶対にやめない。旅行者が感染を広げている証拠はないと強弁する。統計的に2次感染が増えていることが明らかでも、それは状況証拠であって、直接の物証がないのだから、旅行自体は安全だと強弁するのだ。
喫煙が寿命を短くするという統計的な証拠があっても、喫煙がどのようにして寿命を縮めているのかという病理的なメカニズムが明らかではないから、喫煙は無害だと主張するのと同じ論理構造だ。
そして、PCR検査はできるだけ抑制する。検査数を増やすと、陽性者があぶり出されて、隔離されることになる。その間は労働力が減少して、経済活動が停滞してしまうからだ。
菅政権は高齢者=社会的負担と考えている!?
感染拡大による最大の問題は、死亡者が増えることだが、そのことも無視する。新型コロナの特徴は、年齢別の死亡率が大きく異なることだ。60代以上は、感染すると5.7%が死亡するが、50代以下は0.06%と、ほとんど死なない。つまり、感染拡大は労働力を奪わず、高齢者の命を選択的に奪うことになる。
高齢者層に生産性は、ほとんどない。むしろ経済の足を引っ張っている。75歳以上の後期高齢者の場合、1人あたりの医療費は年間91万円、介護費が48万円、年金給付が137万円で、合計276万円もコストがかかる。もし、それがなくなれば、生産性を大きく引き上げることができる。
しかし、そんなことを正面から言ったら、政権がもたない。だから「国民の命と生活を守る」「高齢者の命を守るために旅行は自粛してほしい」と言うが、高齢者はもともと自ら旅行を控えているし、現役世代によって感染が拡大しているのだから、感染者数は減らない。医療崩壊して感染が広がれば、多くの高齢者が自宅療養に移り、大量死につながるのだ。
そして、極めつけがワクチンだ。ワクチンの安全性に関しては、まだ分かっていないことが多いが、そこで「高齢者の命を守るために、優先してワクチンを投与します」と言う。成功すれば、政権の評価は上がるし、うまくいかなくても構わない。その場合は、高齢者という大きな社会的負担が軽減されるからだ。
このような「悪魔のシナリオ」を菅義偉政権が考えていないことを、私は強く祈っている。
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