日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web
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『クロソイ』岩手県/大船渡港産~日本全国☆釣り行脚

「あったげくなってきて、カレイやネウ(アイナメ)がおもせぐなってきだよ~(面白くなってきたよ)」と、釣友からの誘いを受け、そういえば、もうそんな季節ですな、と好機を迎えるカレイ、アイナメを狙って岩手県は大船渡に行ってみることにしました。


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三陸界隈では毎年6月あたりから水温が安定し、それまでは比較的夜釣りに分があったアイナメやカレイが日中でもよく釣れるようになります。そして、どちらも北っ気の強い魚ですから、40センチクラス、時には50センチオーバーの型物が望めるというのも三陸のカレイ、アイナメ釣りの魅力といえましょう。


昨年の12月に全線開通となった三陸道をひた走り、まだ新しい気仙沼湾横断橋〝かなえおおはし〟を渡ると、ほどなく岩手県に入ります。〝奇跡の一本松〟で知られる陸前高田を過ぎ、大船渡の市街へ。三陸沿岸は、この三陸道が開通したことによりアクセスが大変便利になりました。そして、自動車専用道路ながらに奥松島からは無料というのも大変有り難いかぎりです(奥松島~八戸まで320キロメートルを超える日本最長の無料区間)。


震災より11年が経ち、すっかり復興が進んだ海岸沿いを進み、大船渡港の岸壁に行ってみると、晴天の休日とあってチラホラと釣り人の姿があります。とりあえず岸壁の空いているところからカレイ狙いの投げ竿を出し、アタリを待つ間にアイナメ狙いで岸壁際を探ってみることにします。


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好機とはいえ、カレイはそうそう数が釣れる魚ではありませんから、最悪カレイがダメでもヘチ(岸壁際)のアイナメでお土産確保という作戦です。

夜釣り突入…すぐにアタリ

まあ、やっていくうちにアタリが出るでしょう、と岸壁を一通り探ってはみたものの、なんとアタリは1回もナシ。さすがに、この時期の三陸ならばチョイと探れば小型のアイナメくらいは楽勝♪ と思っていただけにちょっと焦ります。さらに、エサ点検で巻き上げたカレイ狙いの投げ竿も、仕掛けには全く取られていないエサがそのまま元気に残っているというありさま。ためしに水くみバケツで海水をくんで手を浸してみると、ヒヤッとした感触です。う~ん、水温がまだ低いのかしら…。

釣友も全く振るわない様子で「ダメだぁ。こいな時は気分転換でメシ行ぐべ、メシ」と一旦竿をたたみ、近くの〝貝だしラーメン〟が人気のお店で早めの夕飯となりました。ご当地の旨い飯も釣り行脚の楽しみのうち。焦らず腹ごしらえを済ませて夜釣りに突入です。


日没を迎え、岸壁に戻ると大方の釣り人は帰ってしまったようで、日中はサラサラと平坦だった水面がヌラヌラと怪しく揺らめいています。「こいつは釣れるど~」と支度を急ぐ釣友の横でワタクシも急いで準備。投げ竿は面倒なので探り釣り一択。安物竿に仕掛けを付けて岸壁の際を探っていきます。


日中あれほど反応がなかったにもかかわらず、探り始めるとすぐにクンッ! とアタリがあり、竿が絞り込まれました。そのまま巻き上げると、心地よい手応えで釣れたのは20センチほどのクロメバルです。「いきなりよいのが釣れたよ~」と釣友を見ると、何やら竿を曲げてヤリトリの真っ最中。竿の曲がりからして結構な大きさのようで、ズポ~ンと抜き上げられたのは30センチほどのクロソイです。クロソイといえば大きい物では50センチで2キロを超えるほどまでになる魚ですが、30センチクラスでも風格は十分。羨ましい限りです。「な? やっぱり夜だべ?」と得意満面の釣友に「日中のアイナメ、カレイでお誘いを受けたハズですが…」とは言えず、こちらも負けじと岸壁際を丹念に探ります。

メバルより力強いヒキが!

一通り探って、いかにも魚が付いていそうな、岸壁の端のコーナーになった箇所でコツンッと前アタリが伝わりました。静かに竿先を下げて待つとコンッ! ゴンッ! とアタリが激しくなり、ギュンッ! と竿が絞り込まれたところでアワセるとハリ掛かり。

クロソイ (C)週刊実話Web

先ほどのメバルよりは力強いヒキに、慎重に巻き上げてくると掛かっていたのは25センチほどのクロソイ。嬉しいけれど、隣でよいサイズが上がっているだけに、ちょっと悔しいような複雑な心境です。「ほれ、せっかく来たんだからこいつも持って帰れ」と先ほどの良型のクロソイもいただき納竿。有り難く晩酌の肴にさせていただきます。


クロソイの刺身 (C)週刊実話Web

クロソイといえば北海道、東北では人気の魚ですから刺身で一杯。最初に釣れたメバルともども、淡白ながら磯魚らしい風味とほどよい歯ごたえを楽しみつつ日本酒をチビリ。カレイ、アイナメにはフラれたものの、終わってみればなんやかやと楽しめた初夏の三陸となりました。
三橋雅彦(みつはしまさひこ) 子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。