企業経済深層レポート (C)週刊実話Web
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回転寿司が絶好調!大手4強チェーンに敵なし!?~企業経済深層レポート

コロナ禍で外食産業が軒並み苦戦する中、「回転寿司」市場が絶好調だという。大手回転寿司チェーンの関係者が解説する。


「帝国データバンクによると、2021年度の国内回転寿司市場は一昨年からのコロナ禍を乗り越え、売上高で前年比約600億円増の約7400億円まで伸びました。11年の売上高が約4640億円でしたから、ここ10年で右肩上がりです」


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近年の市場動向をフードアナリストが語る。


「コロナ発生時の20年前半は、前年比約7割減の大ダメージでした。しかし、その後のコロナ鎮静時に売り上げを盛り返したのです」


総務省統計(家計消費状況調査)によると「回転寿司」の世帯あたりの年間消費額は約1万2600円。これは前年(21年2月まで)を約1000円上回る。


「実は、三密回避の巣ごもり需要でテイクアウト分野が伸びたことも大きいです。巣ごもり時前後に家族と囲む食卓で、テイクアウト寿司盛りが大人気だったともいわれています」(同)


これに加え、各大手チェーン店の積極的な店舗展開も業績アップに寄与した。


例えば、帝国データバンクの調査では、大手5社の店舗数は約2200店(22年2月)で、コロナ前の19年から150店も増加。この数は10年前の1.6倍規模である。大手回転寿司チェーン関係者が言う。


「従来、回転寿司チェーンは郊外のロードサイドを軸に店舗網を広げてきました。しかし、最近はターミナル駅近隣など都市部での開拓に力を入れ、若者を中心に客を集めつつあります」

いち早く取り入れたテイクアウト

それではここで、大手チェーン店ごとの売り上げの伸び具合を見てみよう。

市場全体の約7割を占める大手4強チェーン。そのトップが「スシロー」(国内644店=22年5月現在)を運営するFOOD&LIFE COMPANIES(大阪府吹田市)だ。


21年9月決算では、売上高2408億円で前期比17.5%増、営業利益は229億円(同89.9%増)、純利益は同2倍の131億円と、いずれも過去最高を記録。経営コンサルタントは、「スシロー」躍進の理由を次のように語る。


「1つ目は、食材への徹底したこだわりです。例えば最近、マグロの赤身では味が濃厚な40キロ以上のメバチマグロだけを使用しています。原価は高くなりますが、長期のリピートを見込んだ質本位の姿勢です」


原価率が高い分、利益はどう上げているのか。


「入店時の発券、注文、レジにまでDX(デジタルトランスフォーメーション=デジタル技術による業務改善)を導入し、人件費などを軽減しています」(同)


「スシロー」好調の原動力の2つ目は、他社に先駆けて、テイクアウトを重視したことだ。


「テイクアウト専門店『スシローTO GO』や、客がアプリで注文し店員と非対面で好きな時間帯に商品を受け取れる『自動土産ロッカー』を展開。それらがコロナ禍で大人気なのです」(同)


22年9月決算では売上高3100億円を見込むなど、さらなる飛躍を目指す。

アフターコロナも見据えて

その「スシロー」を追いかけるのが「くら寿司」(国内495店=21年10月現在・大阪府堺市)だ。経営アナリストが分析する。

「21年決算での売上高は前年比8.7%増の1478億円。コロナ禍でも国の助成金や、アニメグッズなどが当たる『ビッくらポン!』ガチャが好評で、当期利益の黒字化にこぎつけました」


しかも「くら寿司」は早くも、アフターコロナを見据えた次の手を打ち始めている。観光客の回復を想定し、浅草やスカイツリー前などの観光地に客席200を超えるグローバル旗艦店を次々と出店。5月には、巨大浮世絵や「番付ウォール」などの内装がSNS映えする新店を京都に出店した。


「スシロー」「くら寿司」を追うのが、「すき家」などを展開するゼンショーを親会社とする「はま寿司」(546店=21年10月現在・東京都港区)と、「牛角」などを運営するコロワイドグループの「かっぱ寿司」(308店舗=22年5月現在・横浜市)だ。


「『はま寿司』は非上場なので正式な数値は不明ですが、売上高は1200億円前後。一時期、平日一皿90円の格安ぶりで話題になり、最近は他のチェーン店と同様、一部店舗を除き一皿100円からと横並びにしています。ただ、全体的にコスパがよいイメージが強く、メニューの豊富さも人気です」(同)


また、「かっぱ寿司」は老舗だけに根強い人気がある。最近はシャリを山形のブランド米「はえぬき」に統一するなどネタ以外にもこだわりを見せ、22年3月決算の売上高は672億円で前年より約24億円伸びた。


このように、絶好調の回転寿司市場だが、一方で懸念もある。フードアナリストが言う。


「急激な円安などで、今後大幅なコスト増は不可避です。『スシロー』は10月から一皿最安価格100円(税抜き)を38年ぶりに110円へと値上げ宣言しました。『はま寿司』も5月末から『富士山盛りまぐろ軍艦』などの高価格商品を値上げし、他のチェーン店も追随する気配が高まっています」


長く一皿100円が定着してきた回転寿司は今、大きな転換点を迎えつつある。