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蝶野正洋『黒の履歴書』~“カネの扱い方”で分かる信頼性

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web

コロナもまだまだ油断ならないし、ロシアとウクライナの紛争も続いている。

それにバイデン米大統領が来日したりと、世界的なニュースがたくさんあったのに、テレビのワイドショーでは山口県阿武町の誤送金問題ばかりをやっていた。視聴者も、この話題には興味津々なんだろうね。

最初にこの問題が発覚した時は、まずこの「着服男」がどんな素性なのかを探るような報道が多かった。そして、着服したカネをオンラインカジノで使ってしまったという供述があり、男が逮捕される頃には過去の写真や経歴が次々と暴かれ、それが一転して、今度はカネが回収できる見通しが立つと話題は収束していった。

俺は最初から思ってたんだけど、着服男の素性よりも、最初に誤送金してしまった町役場の体制や責任をもっと追及するべきだよね。

それに今回の事件は氷山の一角で、同じようなことは全国各地で起こっているとも思った。田舎の小さな役場のことだからミスは仕方ないという意見もあるけど、大都市でも案件が多い分、振り込みの間違いは多いと思う。逆に市民側から役所に納めるカネも多く取りすぎてることがあるんじゃないと疑ってしまうよね。

ともかく役所とはいえ、カネにルーズだということが分かった。やっぱり、カネの流れにだけは気をつけておかないと、すぐトラブルに発展してしまう。

カネの細かい扱いが財をなす

俺は昔から友達同士でカネの貸し借りはしないように心掛けてきた。どんなに仲が良くてもカネでモメたりするのは面倒だからね。プロレス界にも、カネ関係にルーズな人は多い。いつも名前を出してしまうけど、橋本真也選手とかね(笑)。俺も一度頼まれたことがあったけど、それはできないと断った。それから彼は俺の前で二度とカネの貸し借りの話はしなかった。橋本選手は豪快な男だったけど、本当にカネを儲けてる人というのは細かいんだよね。

その昔、ある大企業の会長のお屋敷に招かれたことがある。会長は大スポンサーとして有名で、常に1000万円くらい持っていて何か困ったことがあればすぐに用立ててくれる、という評判だった。

俺は「会長は、今までどんな人に援助してきたんですか?」と聞いてみた。すると会長は「名前や金額は言えないけど、誰にどれだけのお金を渡したか1円単位で覚えている」と教えてくれた。

適当にみえて、ちゃんと管理している。こういう人だからこそ、財を成すことができたんだと思ったね。

俺もカネの細かい扱い方で人を見ることがある。例えば、新人にちょっとしたお使いを頼んで、そのお釣りをちゃんと返してくれるか、とかね。もちろん、後でお駄賃はちゃんとあげるんだけど、まずはそのカネのやりとりを綺麗に完了することができるのか。そういう細かい感覚をみて、信用できるかどうかを推し量ってるんだよ。

カネは人と結びついているからこそ、有り難みが分かる。今回の件も、通帳の数字だけを見てラッキーと思考停止になり、それがどんな人たちから出たカネなのかまで考えられなかったことが大きいと思う。今後はさらにキャッシュレス社会になるから、ますますカネを介したコミュニケーションというものが希薄になってしまうだろうね。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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