5月20日に後藤茂之厚生労働大臣が記者会見を開き、マスクの新しい着用基準について、「屋外で2メートル以上の距離が確保できる場合は、マスク不要。屋内でも図書館など、距離があり会話をしない場合は不要」とした。マスク着用義務の大幅な緩和だ。
また、同じ日に松野博一官房長官は「6月1日から入国者数の上限を1日2万人に引き上げ、リスクが低い国と地域は、入国時の検査と待機を求めない」という方針を明らかにした。低リスク国の数は、全体の8割程度になるようだ。
政府が、このようなコロナ規制の大幅緩和に踏み切った背景には、ゴールデンウイークの「社会実験」がある。3年ぶりとなった規制のないGWは、大きな人流を生み出した。私は、それが原因で感染第7波に突入する可能性もあるとみていたのだが、GW中の検査減による反動はあったものの、2週間後には感染者数が緩やかな減少に転じたのだ。
いったい何が起きたのか。私は、感染制御学が専門の愛知県立大学、清水宣明教授の説明が一番腑に落ちた。清水教授によると、オミクロン株に変異後、主たる感染経路が空気感染になったというのだ。飛沫感染の場合は、距離を取れば感染を防げるが、空気感染は防げない。また、清水教授によると、コロナ感染は「こうしたら必ず感染する」というものではなく、同じ行動をしていても、感染するかどうかは確率の問題なのだという。運の悪い人が感染するのだ。
こうしたことを前提にすると、なぜ中国が厳しいロックダウンを続けても、感染の封じ込めができないのか、なぜ北朝鮮が鎖国状態のなかで感染爆発を起こしたのかが、よく分かる。
国産ワクチンに移行しないのはなぜ…!?
もちろん、現在の全国で1日3万人前後という新規感染者数は、かつて緊急事態宣言が出されていた時期の感染者数と同レベルだ。しかし、人流抑制で封じ込めができないことが分かった以上、行動規制を緩めて、経済活動再開に舵を切ろうというのが、政府の考え方なのだろう。
私は、望ましいやり方だとは思わないが、感染を封じ込める方法を失ったのなら、仕方がないことだとも思う。問題は、これからのウィズコロナ生活が、どのようなものになるのかである。いまの政府の方針では、すでに3回目接種から5カ月経過した国民に、自治体の判断で4回目の接種券を郵送することになる。
しかし、4回目接種も4~5カ月ほど経過すると、効果が薄れてしまう。だから、その頃には5回目接種をしなくてはならなくなる。もしかすると、我々は年に2回から3回のワクチン接種を続けざるを得ないのかもしれない。ただ、そんなことをしていたら、アメリカから大量のワクチンを輸入し続けなければならず、それは日本の貿易赤字の原因になっていくのだ。
私が一番疑問に思うのは、いまだに日本政府が従来株用のワクチンを輸入していることだ。もちろん、そのワクチンがオミクロン株に対しても一定の効果を持っているのは事実だが、研究レベルではすでにオミクロン株用のワクチンが完成しているという。だったら、なぜ日本政府はそれに切り替えないのか。なぜ国産ワクチンを作らないのか。
ウィズコロナだというのなら、いまこそウイルスとの長い付き合いを考えるべきではないのか。
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