
『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』
監督/ディーン・パリソット 出演/キアヌ・リーブス、アレックス・ウィンター、ブリジット・ランディ=ペイン、サマラ・ウィービング、ウィリアム・サドラー 配給/ファントム・フィルム
キアヌ・リーブス版バック・トゥ・ザ・フューチャーとも言える本作。キアヌの原点ともなった人気コメディーシリーズで、実に29年ぶりの「ビルとテッド」コンビの復活だそうです。もうこれは純粋に、ただ楽しめばいい映画じゃないかと思いますね。
チラシを見ますと、「『全人類の心が一つになる』という本作のテーマは、今の時代に必要なことなんだ」というキアヌのコメントが書いてありますが、いささか牽強付会、とってつけた感があるかと。まあ、パンデミックで疲れた日常を笑い飛ばそうという配給側の気概は感じますけれど。
ただ、「各時代から伝説のミュージシャンを集めて史上最強のバンドを作る」という発想は面白い。もうその切り口だけで無邪気に楽しめる映画でしょうね。
では、なぜ自分の評価が☆一つになってしまったかと言いますと、モーツァルト、ルイ・アームストロング、ジミ・ヘンドリックスなど、これだけ贅沢にメンバーを選んで、結局ロックかよ、という点に尽きますね。まあ、そもそもこの「ビルとテッド」コンビがロックスターを目指すというコンセプトがあるようですから仕方ないんでしょうけど、このメンバーならではの斬新な楽曲をつい期待してしまいました。
せめてビッグバンドを結成して欲しかった…
アナログな自分も、最近ようやくYouTubeを見られるようになりまして、聴きやすいクラシックのピアノソロや弦楽アンサンブル、ジャズのビッグバンドなどを好んでおります。
ですんで、世界最古と思われる氷河期の打楽器奏者まで連れ出すなら、せめてビッグバンドを結成して欲しかった。せっかくの音源がロックに収斂されて、普通のドラマーになっていますから。
こんな風に思うのも、ちょうど本作を見た時期が朝ドラの『エール』の最終回と重なっていたことがあります。モデルの古関裕而さんの名曲の数々、メロディーラインの聴きやすさと美しさ。それらはタイムカプセルのように時代を超えて、改めて感銘を受けました。
本作のメンバーに中国の古代音楽家はいましたが、日本人はエントリーされていなかった。であれば、ゴジラのテーマを作った伊福部昭さんはいかがかと。雅楽や太鼓など日本の民族音楽が効果的に使われて、古代人が作ったような音色を再現していますから。
楽器なら、香川県から産出される鉱石サヌカイトを使った打楽器を。あの不思議に癒やされる響きを使っていただきたい。…とまぁこんな風に、自分なりのマイベスト音楽家を選出する妄想で遊ぶのも一興ですよ。
やくみつる
漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。
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