(画像)Prostock-studio/shutterstock
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オウム逃亡犯逮捕から10年…あらためて振り返る“パートナー”の存在

教祖・麻原彰晃らが一斉逮捕された1995年の地下鉄サリン事件をはじめ、80年代~90年代に数々の凶悪事件を起こしてきたオウム真理教。だが、一連の容疑者が全員逮捕されたのは、今からちょうど10年前の2012年6月だった。


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思えば、この年は幕開けから怒涛だった。年明け直後の元日未明、95年から特別指名手配されていた平田信が出頭したとの速報が日本中を駆け巡り、実に17年の時を経て同日付で逮捕。6月4日には、こちらも特別手配されていた元信者の女性(のちに最高裁で無罪が確定)が電撃的に逮捕され、11日後には〝最後の逃亡犯〟だった高橋克也も連鎖的に御用となった。


わずか半年で残党だった特別手配3名が全員逮捕され、これにて一連のオウム事件は全容疑者が逮捕。節目を迎えることとなる。これにより、オウムに関するテレビ放送、新聞・雑誌記事は一時的に急増し、さながらサリン事件直後のような報道量になっていた。


その原因の1つとなったのが、彼らに共通する〝逃亡生活〟だ。17年もの間、いかに姿を消していたか、各メディアはその詳細に多くの時間と労力を割いていく。


「平田は出頭時に現金10万円を所持していた上、身なりも小ギレイだったことから、警察は逃亡を援助していた者がいると睨んでいました。当の平田本人は、『余計なことを言うと人に迷惑が掛かる』などと供述し、頑として口を割らず。しかし、1月10日には平田を匿っていたという元女性信者が出頭。犯人蔵匿の容疑で逮捕されています」(捜査事情通)

この事件を風化させてはならない

この女性の存在は、一部週刊誌で〝愛の逃避行〟などと注目を浴びることになる。それから半年後、後に無罪となった元女性信者も、平田以上の〝純愛〟で話題を集めた。

「当初、元女性信者は高橋と同棲していたのですが、2007年3月からは袂を分かち、職場で知り合った男性と同棲を開始。この生活は逮捕まで続き、男性は彼女を匿っていたとして犯人蔵匿罪で逮捕されます。男性は出会ってすぐ好意を寄せるようになり、後にプロポーズまで行いますが、元信者は相手の迷惑を考え『オウムの逃亡犯』だと自身の正体を告白。しかし、それでも〝愛〟は変わらず、親族が通報するまで愛を育みました。このカップルから証言を得たことが、11日後の〝最後のオウム逃亡犯〟高橋の逮捕につながります」(犯罪ジャーナリスト)


高橋は他人の住民票を転用する成り済ましにより、逮捕直前まで川崎市のアパートや勤務先の社員寮で生活。そのさなか、元女性信者の逮捕が伝えられると、自身にも捜査が及ぶと悟ったのか、隣の蒲田へと潜伏先を変える。


「銀行窓口で金を下ろそうとする様子や職場の防犯カメラなど、高橋に関する映像はメディアで多数公開され、捜査は劇場型に。こうして徐々に追い詰められたことにより、蒲田のネットカフェでついに逮捕へと至りました。今年ドラマ化もされた染井為人の小説『正体』は、こうした逃亡生活がモデルになっているともいわれています」(同・ジャーナリスト)


あれから10年。死刑も執行され、オウム事件は名実ともに〝終結〟しているが、風化させてはならないだろう。