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蝶野正洋『黒の履歴書』~“脱マスク”で模索する日本人の新しい生活様式

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web

公共の場でマスクをつけることが推奨される、いわゆる「マスク生活」に入って、もう2年以上が経った。

もはや感染予防効果というよりも、外に出る時には当たり前のようにマスクをすることが常識というか、習慣になってしまった。

最近、新しいiPhoneに替えたんだけど、ロック解除用の顔認証がマスクを着けたままでも出来るようになっていた。こうやって、さまざまなシステムが「マスク有り」にシフトしていることを考えると、この生活がまだまだ続くということなんだろうね。

ウチの子どもたちも、夜に近くの公園に行く時でもしっかりマスクを着ける。誰もいないから、いらないよって思うんだけど、着けないと落ち着かない。

学校でも、マスクを着けての授業が続いていて、ちょっとボンヤリしたり、うたた寝しても先生からバレないそうだ(笑)。ただ、先生もマスクを着けていて表情が読み取れないから、今どこが重要なポイントなのか分かりづらいという。これだと将来的には学力にも影響が出てくるかもしれないね。表情を読み取るという基本的なコミュニケーションができないから、記憶に残りにくくなってしまう。

大人も同じだよ。俺も、コロナ禍になってから知り合った人は、顔をちゃんと見たことがないから、どうしても印象が薄くなってしまう。名刺に顔写真を入れている人がいるけど、これからは表には素顔で、裏にはマスク姿の写真にしたほうがいいね。

医療側と政治家の見解の違い

ただ、俺にとって1つだけ楽なことがあって、大きめのマスクをして外を歩いてると誰にも声をかけられないんだよ(笑)。まぁ、マスクよりもサングラスをしてないから気づかれないだけかもしれないけどね。

逆にいうと、俺にとってサングラスは変身アイテムというか、かければプロレスラーのスイッチが入る。そう考えると、今の人たちはマスクがオン・オフの切り替えアイテムになってるのかもしれないね。

一方で、「脱マスク」の動きも始まっている。東京都医師会の会長は「屋外では着用を見直してもいい」と発言。でも、岸田首相は「今の段階でマスク着用を緩和することは現実的ではない」とコメントしている。相変わらず、医療側と政治家で足並みがそろわない。

まだまだ油断がならないという状況も分かる。中国や北朝鮮では大変な状況だというし、新たに猛威を振るっているのは変種のコロナウイルスという話もある。それでいて外国人観光客の受け入れも始めるというから、どうにもチグハグな印象を受けてしまうよ。

これでまた日本で感染が広がってしまっても、できる対策は「まん延防止措置」や「緊急事態宣言」しかない。そうなると、いよいよ外食産業は大変だろうね。

昨今の値上げラッシュで、消費者の財布の紐は固くなって、外食は控えようというムードになっている。そこでまた営業規制になったら、立ち行かなくなる店舗が増えるんじゃないかな。

悪いのはコロナなんだけど、右へ倣えの対策しかできない自治体も、一般市民にも問題がある。マスクだって、誰もが盲目的に着け続ける必要はない。そんな日本人の傾向を踏まえた、さらに新しい生活様式を提示する段階に入ってるんじゃないかな。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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