岸田文雄 (C)週刊実話Web
岸田文雄 (C)週刊実話Web

岸田政権は日本国民を裏切る!? 高支持率の参院選後に行われる“コロナ復興特別税”

「清和政策研究会は我が党最大、最強の政策集団であり、自民党の屋台骨であると確信しています」


岸田文雄首相は5月17日夜、東京・芝公園の東京プリンスホテルで開かれた自民党安倍派のパーティーであいさつし、安倍晋三元首相を最大限持ち上げた。


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安倍氏も「我々は岸田政権をあらゆる場面で支えていく。どうか岸田総理、ご安心いただきたい」と、2人の微妙な距離感を逆手に取って会場の笑いを誘った。


首相が「蜜月」を演出するなど、安倍氏への気づかいを欠かさないのは、政権基盤を安定させるためだ。2人でステーキを食べた4月10日の夜もそうだった。


「骨格は変えません」


首相は東京・高輪のホテル内のレストランで安倍氏に話した。会食の誘いは首相から。安倍氏は側近の萩生田光一経済産業相を伴っていた。


安倍氏に近い自民党関係者が話す。


「会合では参院選後の体制が話題になった。首相は安倍政権の手法にならい、主要メンバーは変えないと伝えたということだ」


岸田政権の骨格は、内閣では岸田派の林芳正外相、麻生派の鈴木俊一財務相、安倍派の松野博一官房長官の3人を指す。首相側近の木原誠二官房副長官もその1人だろう。自民党では麻生太郎副総裁と茂木敏充幹事長の2人がまさに骨格だ。


岸田、麻生、茂木派の主流3派と、やや距離があるとはいえ、首相の特段の配慮を受ける安倍派を加えた4派で引き続き岸田政権を担っていくというわけだ。


首相は2022年度予算が成立した3月下旬から5月中旬にかけて、安倍氏だけでなく二階俊博元幹事長ら非主流派を含めて、党内の実力者や幹部と会合を重ねてきた。


首相動静によると、3月22日の茂木氏を皮切りに、31日に甘利明前幹事長、4月1日に二階氏、11日に麻生氏、22日に森山裕総務会長代行らと会食。5月13日には麻生、茂木、松野の3氏とテーブルを囲んだ。


一連の会食での要諦は、相手もさることながら同席者の顔触れにある。茂木氏が連れていたのは無派閥の梶山弘志幹事長代行だった。甘利氏は自らに近い山際大志郎、小林鷹之の両国務担当相、二階氏は林幹雄元幹事長代理と山口壮環境相を同席させた。


「連れてくる側には『引き続きよろしく』との思いがある。首相にしてみれば、親分の顔を立てるには、今後も子分を処遇すればいい」(同・関係者)

菅氏孤立の意図は…

首相への対抗心を抱く菅義偉前首相と会わなかったのも、もう1つのポイントだ。正確には、議員会館での昼間の面会にとどめた。一方で菅氏の盟友の梶山氏や、菅氏が連携を模索する二階、森山両氏とは、飲食を交えて膝を突き合わせた。

「4派を固め、菅氏を孤立させようという狙いがミエミエだ」(同)


この段階で岸田首相が、参院選に向けての結束強化を超えて、選挙後の体制固めにまで目配せできるのは、それだけ国会が無風状態にあるからだ。参院選は勝てそうだと踏んでいるからこそ、長期政権をにらみ政権基盤をより強固にしようとしているのだ。


確かに、国会は審議が止まることもなく22年度予算は最速に近いペースで成立。対決法案とみられた経済安全保障推進法も5月11日に、野党の日本維新の会や国民民主党に加え、立憲民主党も賛成して成立した。参院選まで2カ月を切っているのに、野党は共闘が進まないどころか、分断されているのが実態だ。


こうした状況に、立憲内では「参院選敗北と泉健太代表の引責辞任はありうる」として、馬淵澄夫国対委員長など一部のベテラン議員がグループの連携確認を進めるなど、早くも次期代表選に向けた動きが水面下で始まっている有り様だ。


参院選での「自民勝利」はデータでも裏付けられつつある。党選対関係者によると、自民党は5月の大型連休前に全国で情勢調査を実施。神奈川の欠員1を含む125議席のうち、自民が5増の59、公明が14を得る結果になったという。非改選を合わせると、定数248議席のうち与党で142議席と、過半数(125議席)を超える。


報道各社の世論調査で内閣支持率は軒並み60%前後を維持し、政党支持率は野党を大きく引き離す。選対関係者はそれでも「油断は禁物だ」と党内を引き締めている。


与党寄りの党運営に拍車がかかる国民民主党が加われば、政権基盤はさらに安定する。同党への働きかけは麻生氏が中心となっており、国民の玉木雄一郎代表と、ことあるごとに連絡を取り合っている。麻生氏に近い自民党関係者によると、玉木氏側は「財務省3人組と日銀は大丈夫だが、前原は出ていく」との感触を伝えているという。

財政再建=増税というやむなさ…

「財務省3人組」とは、同省出身の玉木氏と岸本周平幹事長代行、古川元久国対委員長の3人を指す。木原氏とは先輩・後輩の間柄になる。「日銀」は、日銀マンだった大塚耕平代表代行、「前原」はもちろん前原誠司元外相のことだ。

連合の組織内議員については「連立政権への参加は難しいが、分党して閣外協力をするなど、やり方はいろいろとある」として、方法を模索するという。


ここまで触れてきたように、岸田首相は参院選勝利を半ば織り込み、着々と政権の基盤固めを進めている。だが、単に長期政権を目指したいから足元の強化にいそしんでいるわけではない。当然のことながら、参院選後の政策展開が胸中にある。


ウクライナ危機への対応や日米同盟の強化、防衛力整備は重要な課題だ。エネルギー需給のひっ迫を見据えた原発再稼働の推進も懸案として横たわる。


だが、政権にとっての最大のテーマはこれらではないという。岸田派ベテラン議員が話す。


「財政再建を置いて他にない。これこそが岸田政権の使命だと言っていい」


政権の喫緊の課題は、ウクライナ危機もさることながら、2年半にもわたる新型コロナウイルス禍でダメージを受けた経済を立て直すことだ。そのためには今後も経済対策を打ち続ける必要があるが、財源を国債に頼る構図は変わらないため、国の長期債務残高はついに1000兆円を超えてしまった。


実は、官邸が「大いに肝を冷やした」(政府関係者)場面があった。3月中旬以降、1ドル=115円台からじりじりとレートを下げてきた円が、4月28日に一気に20年ぶりの131円台にまで下落した局面だ。


「海外の投機筋が売り浴びせを仕掛けたのは間違いない。30年前の英国のポンド危機のように、日本の財政がどこまで耐えられるのか試している」(同・関係者)


利上げを進める米国との金利差拡大と、エネルギーなど資源価格高騰による経常赤字の常態化が円安の主因だ。しかもウクライナ危機の影響で今夏以降、インフレが進む可能性があるのに、「通貨の番人」のはずの日銀は大規模緩和策を見直せないでいる。


「ここを狙われた。つるべ落としの円に、官邸内は『いまいくらだ』『止まるのか』とパニック状態になった。6月には135円まで下がるだろう。日銀は動けない、財務省も介入できないなら150円もあり得る」


先の政府関係者が懸念を募らせる。


首相動静をもう一度見ると、岸田首相は前財務相の麻生氏と2回も会食をし、円安が進んだ4月には鈴木財務相、宮沢洋一党税調会長とも飲食を共にしていた。

担当は“ポスト岸田”狙う茂木氏か!?

注目したいのは、4月11日の麻生氏との会合だ。ここで首相と麻生氏は、参院選後の体制として「財務相が大事だ」との認識で一致したという。

先の岸田派ベテラン議員が話す。


「麻生氏は財政再建が急務との思いが強い。首相の本音も同じだ。いま財政再建への強い姿勢を示さなければ、いずれ本当に円危機がやって来る。だから次の内閣改造では財務相が重要だと2人で確認したわけだ」


財政再建を進めるなら、視野に入るのは増税だ。


「消費増税はすぐには無理だが、東日本大震災の時のような復興増税ならできるのではないか。無関係の支出が問題になった震災復興特別税の一部をスライドさせてもいい」(同・議員)


東日本大震災では震災復興基本法を直ちに制定し、法人税と所得税、地方税の住民税にも上乗せして、10年間で計12兆円余りが徴収された。同じような〝コロナ復興特別税〟の導入が、政権内でひそかに浮上しているというのだ。


だが、これを誰にやらせるのか。新たな復興増税を実現するには相当な腕力が必要で、現財務相の鈴木氏には荷が重すぎる。そこで、永田町でひそかに取り沙汰されているのが茂木氏だ。幹事長としては悪評が絶えないが、政策能力に関しては誰もが一目を置く。


「ポスト岸田」を狙う茂木氏にとっても悪い話ではないだろう。


この場合、後任の幹事長には萩生田氏か、連合を自民党に引き寄せた論功行賞として、茂木派から小渕優子党組織運動本部長を充てるのはどうか――。


一連の会食で、首相の脳裏にはこうした構想も描かれたようだ。国民民主党の財務省出身組を政権に接近させているのも、財政再建の一翼を担わせる思惑があるのは間違いない。


しかし、すべてが岸田首相の思惑通りにいくのだろうか。コロナ感染者は依然として多く、2月以降のわずか3カ月で1万人が死亡し、累積で3万人を超えた。


首相は経済最優先で、インバウンドを拡大するため水際対策の緩和に踏み切るだけでなく、夏に向けてマスク使用の緩和も視野に入れる。だが、官邸内では「参院選の最中に感染拡大の第7波に襲われたら厳しい」との声が上がる。


国民民主党が想定より振るわないのも誤算だ。支持率は1%前後に低迷しており、永田町では「比例代表は300万票にも届かず、2議席がやっと」との見方がもっぱら。惨敗なら玉木氏の責任問題となり、軌道修正を迫られる可能性もある。


逆に立憲民主党は参院選で大崩れせず、選挙の行方を左右する32の改選1人区でも二桁は取って善戦するのではないかとの指摘もある。先の自民党の情勢調査が、こうした数字をはじき出していた。


増税が有権者から手痛いしっぺ返しを受けるのは、橋本龍太郎政権が倒れた1998年や、民主党政権の退潮につながった2010年の参院選からも明らかだ。


だが、首相が将来の増税を考えているのなら、選挙で信を問うべきだし、一切触れることなく検討を進めるのなら、それは国民への裏切りに他ならない。


岸田首相の「真の勝負」となる参院選後、そして日本の浮沈もかかる一大決戦に、首相はどう臨むのか。