企業経済深層レポート (C)週刊実話Web
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大手商社7社“過去最高益”で絶好調の理由~企業経済深層レポート

国内大手商社の最新決算が絶好調だという。大手商社の最新動向を探った。


経営コンサルタントが、次のように分析する。


「国内大手商社の御三家といえば三菱商事、三井物産、伊藤忠商事。その1つ三井物産が、5月に発表した2022年3月期決算は、純利益が前年比約3倍の約9150億円と過去最高益でした。以前の最高益(12年約4340億円)の約2倍というから凄い、の一言です」


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残りの2社、伊藤忠商事と三菱商事も好調で、決算予測(2月)では8200億円台と過去最高益だという。


それにしても、大手商社が絶好調な理由は何か。今後もこの好調は続くのか。


それを分析する前に、そもそも商社とはどんな会社なのか。経営コンサルタントが解説する。


「石油や石炭から始まり、農産物、機械、IT関連など『ラーメンから飛行機まで』、儲かるなら世界中どこにでも商社マンが出向き、合法なモノなら何でも買いつけ、開発に携わる。こうした商社マンが所属するのが『ザ・商社』です。一般的に大手商社という場合は『総合商社』を指します。これに対し、食品などの特定分野のみを扱う商社を『専門商社』といいます」


では、大手商社にはどんな企業があるのか。商社関係者が解説する。


「『5大商社』といわれる三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、丸紅、住友商事の5つが有名です。ここに旧日商岩井系列の双日とトヨタ自動車系列の豊田通商を加え、『7大商社』とするくくり方もあります」

今後はロシアが大きく関わる…

各商社の特徴はどうか。先の商社関係者が言う。

「明治時代に政府の後押しで一大企業となった財閥系と非財閥系があります。財閥系としては三菱商事、三井物産、住友商事などです。非財閥系としては伊藤忠と丸紅などがあり、これらは繊維系がルーツです」


以上の基礎知識を踏まえて、各大手商社の最新動向を見ていこう。


冒頭の三井物産をはじめとする御三家商社がそろって絶好調と分析した、経営コンサルタントの話に戻る。22年決算が、なぜ過去最高益の見通しなのか。


「資源バブルです。資源事業がそろって好調でした。三井と伊藤忠は豪で鉄鉱石、三菱商事も豪で原料炭事業に関わり、それが絶好調なのです。資源バブルはコロナ禍が一段落し、世界的にリベンジ消費の熱が高まった影響といわれています」


そんな絶好調の大手商社だが、実は不安要素もある。金融系シンクタンク研究員が指摘する。


「市場予想では来年23年3月決算では今期の揺り戻しで資源価格が下がり、伊藤忠や三菱商事、三井物産の純利益は6000億円前後と今期より大幅減になると予想されています。それと来期は、今決算にまだ織り込まれていないウクライナ情勢や、世界的な半導体不足の影響などが大きく出ると見られているのです」


例えばウクライナ情勢絡みでは、ロシアの液化天然ガス(LNG)開発、「サハリン2」の事業に三井物産と三菱商事が、「サハリン1」に伊藤忠と丸紅が関わっている。


また、三井物産は北極圏での「アークティックLNG2プロジェクト」という事業にも参画。この事業はロシアが主導する年産2000万トンの巨大LNG計画で、23年の稼働を目指す。三井物産はここに4500億円を出資し、10%の権益を確保しているのだ。

非資源事業・再生エネルギーに本気

ロシアのウクライナ侵攻では、日本は欧米と足並みをそろえ制裁を強めている。今後のロシアの出方次第では、各商社とも厳しい立場に陥る可能性もある。

こうした国際情勢を踏まえ、金融系シンクタンク関係者が言う。


「日本の商社はこれまで資源事業依存型でした。しかし、資源事業は国際的な政治や景気の影響を直に受けやすい。このため、多くの商社は化石燃料から脱却し、再生可能エネルギー(再生エネ)などの脱炭素時代に合わせたビジネスモデルやクルマ、食物、ITなどの非資源事業の比率を高める動きを活発化させています」


特に非資源事業に力を入れているのが、伊藤忠商事だ。例えば伊藤忠は、アラブ首長国連邦(UAE)で家庭ごみを燃やしその余熱で発電する、世界最大級のごみ焼却発電を受注した。総事業費は約1200億円で24年に稼働予定。同様の発電を世界中で展開予定という。また、中国で電気自動車(EV)、医療などに力を入れ「中国最強商社」としてさらなるパワーアップをはかる。


対して三菱商事は、30年度までに再生エネ分野などに総額約2兆円を投資。この再生エネには政府も40年までに原発45基分にあたる最大4500万キロワットの洋上風力発電をぶち上げるなど力が入る。手始めとして国は、秋田県沖と千葉県銚子市沖で発電規模約170万キロワットの事業者を公募した。


「その入札で三菱商事が圧倒的低価格で東京電力などを退け総取りした。再生エネに懸ける三菱の本気度が窺えます」(商社関係者)


他にも将来不足するとされる食肉を補う事業として人工肉を模索するなど、各商社の非資源事業シフトは活発の一途だ。商社のサバイバルから目が離せない。