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蝶野正洋『黒の履歴書』~マイク・タイソン事件に思う“飲酒ゾーニング”の必要性

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web

プロボクシング元世界統一王者のマイク・タイソンが、飛行機内で乗客に執拗に絡まれ、ついに堪忍袋の緒が切れて鉄拳制裁したという事件があった。

最近のご時世だと「どんな状況にせよ殴ったタイソンが悪い」という流れになるかと思ったけど、意外と「タイソンが怒っても仕方がない」という意見も多かった。これは絡んだ客が泥酔していて、タチが悪かったというのもあると思う。

俺も数は少ないけど、街を歩いていて無礼なヤツに絡まれるということはあった。プロレスファンは意外と礼儀を知っていて、声をかけてくれる時もちゃんとしているし、こっちが対応できなさそうな時には遠慮してくれたりする。面倒なのは、酒を飲む場所でたまたま隣同士になったとかで、俺のことをあんまり知らないのに絡んでくる輩だよね。

この傾向は万国共通で、俺が珍しくキレたのも、十数年前に台湾で会食している時だった。向こうの風習なのかもしれないけど、あいさつしてからお互いに酒を一気するのがマナーというのがあって、酔っ払ったよく知らないオジサンが各テーブルを回ってくるんだよ。そいつが何度も俺の所に来ては一気飲みを勧めてくるから、「うるせぇな、飲みたいなら1人で飲め!」と一喝したことがあったね。

酒でいえば、俺がいろんな当事者に話を聞いてる『熊本旅館破壊事件』も、諸悪の根源は酒の飲みすぎだよ。これは、1987年の新日本プロレスの巡業中に旅館で宴会が開かれて、みんな飲んで暴れて最終的には旅館から修繕費を請求されるほどの事態になったという事件。俺は先輩レスラーたちが酔って目が据わってきた頃には、危険を察知して部屋に引っ込んでた。

酔っぱらいなんて見るだけでストレス

余談だけど、この間、この事件について藤原喜明さんとトークをして、あの時にトイレが詰まった原因は藤原さんが猪木さんに頼まれて作ったワカメスープが元凶だったということが判明した。飲みすぎたレスラーたちが、次々と消化してないワカメスープを吐いたせいで、悲惨な状況になってしまったんだって(笑)。

今回のタイソンの件も、ちょっかいを出した男が酒を飲みすぎたことが元凶だよ。飛行機内はタバコが吸えないんだから、酒も飲めないようにすればいい。少なくとも、飲酒してもいい席とダメな席を分けるべき。飲んでない人からしたら酔っぱらいなんて見るだけでストレスだからね。

それに、酒を飲んだら無礼講というのが、だんだん時代遅れになっている。

先日、音楽フェスで、あるアーティストが酔っ払ってステージに上がってきた先輩アーティストに苦言を呈したことが話題になったけど、これも根っこは同じ。酒を飲むのは勝手だけど、シラフでやってる人たちに迷惑かけることがよくない。音楽フェスなんて、観客も酒を飲んで盛り上がってるから、別にいいじゃないかという意見もあるけど、これもみんなで酒でもなんでもやっていいライブと、ノーアルコールでクリーンなライブ、とステージを分けたらいい。要は〝ゾーニング〟だよ。すでにタバコの喫煙でゾーン分けができているんだから、飲酒でもそうなっていくと思う。それでも禁酒ゾーンで酔っ払ってるやつがいたら、鉄拳制裁してもいいというルールにはならないけどね(笑)。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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