(画像)Alexander Khitrov / Shutterstock.com
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金正恩がコロナまん延を白状した理由…韓国新政権発足で“死闘開始”のゴング!?

日本をはじめ人道主義に弱い周辺国は、北朝鮮による新手の「瀬戸際外交」に付き合わされるのか――。


5月15日、北朝鮮の国営通信社『朝鮮中央通信』は、新型コロナによる24時間の新たな発熱者が前日と比べ10万人以上も増加し、約39万2920人に達したと伝えた。新たな死亡者は8人で累計50人となり、また同通信は薬の誤使用で死亡する人の割合が増えているとも報じている。


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金正恩総書記は「感染者ゼロ」という〝神話〟を捏造した上、コロナ防疫を「防疫大戦」などと大げさに位置づけ、それに「勝った」と自画自賛してきた。しかし、ついに嘘八百が露呈したことで権威の失墜は免れない。


「正恩氏は14日に開催された党政治局会議で、感染の広がりを『建国以来の大動乱』と表現し、『中国の党と人民が得た先進的で豊富な防疫成果と経験を積極的に学べ』と檄を飛ばした。ということは、国民生活を大幅に制限して感染拡大を防ぐ中国方式、つまり全土で厳しいロックダウンを強行してコロナ禍に対応すると思われます。しかし、北朝鮮の経済悪化の度合いは中国の比ではなく、米国のバイデン大統領のアジア歴訪に際して、7回目の核実験を延期するという一部観測を覆す可能性も出てきます」(外交関係者)


一方、韓国の尹錫悦大統領は5月10日の就任演説で、ミサイル開発を加速している北朝鮮に実質的な非核化を求め、進展があれば経済支援を検討することを約束した。

北朝鮮の“無法”が許される世界情勢

「これまで米韓が進めてきたのは、朝鮮半島の非核化でしたが、北朝鮮のみに核放棄を求める尹氏の要請を正恩氏が呑むわけがない。ましてや、そんな韓国からの支援を受け入れるはずはないでしょう」(同・関係者)

ところで、北朝鮮はなぜ今頃になって、新型コロナのまん延を認めたのか。


「ロシア・ウクライナ戦争におけるロシア側の最前線に派遣した〝観戦チーム〟や軍トップの朴正天党中央軍事委員会副委員長などから、ロシア軍の劣勢が伝えられたことで、コロナ禍を理由に負け戦への関与を渋るつもりかもしれません。また、金与正副部長が携帯電話の普及に努めた結果、北朝鮮国内には700万台以上が行き渡っている。住民の口コミで感染者の増加が隠しきれなくなり、公式に認めざるを得なくなったのではないでしょうか」(北朝鮮ウオッチャー)


12日の夕方に発射した3発の短距離弾道ミサイルは、前政権とは打って変わって対北強硬姿勢を打ち出した尹政権へのけん制である。そこで懸念されるのは、あえて紛争を起こすことで国民の目をコロナ不安からそらし、正恩政権の力を誇示することだ。何しろ北朝鮮は、正恩氏の祖父である金日成主席の時代から、時の韓国政権との間で必ずと言っていいほど戦火を交えてきた。


「12日(日本時間)に国連安全保障理事会の緊急会合が開かれ、その席で米国は北朝鮮に対する制裁強化を訴えたのですが、常任理事国として拒否権を持つ中国は、制裁は適切な方法ではないとして反対を唱え、同じくロシアも反対しています。このように北朝鮮が韓国を攻撃したとしても、現在の安保理にはそれを止める力がない。北朝鮮は中露を後ろ盾に、右手で援助を乞い、左手で韓国を殴っても何ら非難されません。そんな無法が許される世界情勢になっているのです」(国際ジャーナリスト)

特殊部隊の訓練は“正恩斬首”が目的か

しかし、正恩氏も安穏とはしていられない。駐韓米軍特殊戦司令部による「金正恩除去・極秘訓練」が公開されたことで、その首筋には冷たい物が走っているはずだ。

「北朝鮮が4月25日に軍事パレードを行った直前、米軍特殊部隊が敵の地下バンカーを捜索し、これを占領する訓練を実施していたことが、同月28日に確認されました。地下深くに造られた北朝鮮の核ミサイル施設の破壊、および正恩氏が潜む地下シェルターに達して、殺害することが目的だと分析されています」(軍事ライター)


在韓米軍が、このような訓練の事実を写真とともに公開したのは5年ぶりで、ミサイルを乱射する正恩氏に向け、強力なメッセージを発したことになる。


「同司令部は昨年末にも韓国で、米海軍特殊部隊『ネイビーシールズ』の隊員らが、極秘裏に極寒期訓練を実施していたことをフェイスブックで公表しています。同部隊は2011年5月、国際的テロリストのオサマ・ビンラーディン容疑者を殺害した『斬首作戦』を遂行したことで一躍有名になりました」(同・ライター)


バイデン大統領のアジア歴訪の要は、対中国における日本の立ち位置の確認と、対北朝鮮情勢への韓国の備えをどうするかである。コロナ禍にあえぐ北朝鮮が挑発を控え、米韓の援助にすがるのか。答えは5月中に出るだろう。