森永卓郎 (C)週刊実話Web
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外貨資産あえて売り推奨する理由~森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』

アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)は、5月4日に短期金利の誘導目標を0.5%引き上げて、0.75%~1.0%にすることを決めた。0.5%の大幅利上げは22年ぶりだ。


私はインフレ抑制のため、今後も急速な金利引き締めは続くとみている。短期金利と異なり、市場で決まる長期金利はすでに3.0%まで上昇しているからだ。


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ただ、強い金融引き締めが、景気の減速と株価の下落をもたらすのは常識だ。実際、5月9日のNYダウは、3日間続落で3万2245ドルとなった。年初と比較すると4555ドルも下がっている。私は、これからもっと下がるだろうとみる。米国株が完全なバブルを起こしてきたからだ。


例えば、株価の割高指標の1つであるバフェット指数(株式時価総額÷国内総生産)は、1月3日に210%に達した。適正水準は80%とされるから、本来より2.6倍高い株価がついていたことになる。また、25倍を超えたらバブルと言われるシラーPER(株価収益率)も、1月3日に39.9倍に達していた。米国株価は、どの割高指標で見ても完全なバブル状態であったが、それがいま調整局面に入ったということだ。


今回のバブルは株式だけでなく、コモディティ市場も一斉に値上がりしたのが特徴で、例えばニューヨーク原油は3月6日の128ドルをピークとして、5月9日は102ドルまで下がっている。小麦も同じく3月7日に14ドルのピークを付けたが、5月9日は11ドルだ。結局、ロシアのウクライナ侵攻で商品市場が一時的に高騰したものの、すでにピークアウトしたとみられるのだ。

使う時期に株価が戻らない可能性

ウクライナ戦争がバブル崩壊の下支えをしたが、それも消えかかっている。だから、これで戦争が終われば、商品価格とともに株価も大きく下落することが見込まれる。

原油や小麦の需給ひっ迫懸念がなくなるだけではない。世界最大の産油国かつ兵器生産国である米国は、戦争特需の喪失に加えて、金融引き締めの景気抑制効果に直面する。さらに、中国のゼロコロナ政策継続で、中国経済が急減速しているあおりも受けるだろう。


そうなると問題になるのは、米国株がどこまで下がるのかということだ。これまで米国株の最大の下落は、1929年10月の「暗黒の木曜日」からだった。だが、実は短期間で暴落したのではなく、最安値になったのは3年後の32年7月である。そのときの株価は、最高値から9割も下がった。ちなみに最高値の株価を回復したのは54年で、実に22年も後のことになる。


もちろん、まったく同じことが起きるとは言えないが、似たようなことが起きる可能性はある。だから、私は外貨の資産を持っている中高年層は、売却するか、少なくとも一部を売って、利食いしたほうがよいと思う。若い人なら株価が回復するまで、安くなった株を買い続けるという選択肢もあるが、中高年は老後資金を使う時期に株価が戻らない可能性が高いからだ。


また、米国経済が減速すれば、米国の金利が下がってくるから、日米金利差が縮小して為替が円高に向かう。そうなると外国株は、ダブルパンチで下がってしまうだろう。いまは金融系エコノミストを信用すべきでない。彼らの9割は、リーマンショック直後でも買い推奨をしていたからだ。