森永卓郎 (C)週刊実話Web
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ロックダウン効果とコロナ一般対策~森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』

私の予測は完全に外れた。中国の上海におけるロックダウンの効果だ。


3月28日から始まったロックダウンは、当初5日間の予定だったが、5月11日現在も基本的に継続されている。感染者が減らないからだ。ロックダウン開始から5週間以上が経過したにもかかわらず、市民生活が正常化するめどは立っていない。収束とはほど遠い状況なのだ。


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私は、上海のロックダウンと一斉PCR検査の実施で、新規感染者数がゼロにはならないものの、激減するだろうと考えていた。複数の感染症の専門家に確認したが、彼らの意見も私と基本的に同じだった。


「ロックダウンと徹底的な検査には大きな効果がある。ただ、日本で同じことができるかどうかは、医学ではなく、政治や社会の問題であり、実施は難しいのではないか」と、彼らは口をそろえていた。


中国は徹底的な検査と隔離政策で、デルタ株まではコロナを封じ込めていた。今回も基本的に同じことをやっているのだが、それが通用しなくなったのは、これまでの感染対策では防ぎきれないほどオミクロン株の感染力が強いからだろう。実際に、上海で濃厚接触者を集めて隔離したところ、その中で感染が広がってしまったという話もある。


ただ、オミクロン株にまったく対抗策がないのかと言えば、そうでもないと思う。それがワクチンだ。中国のワクチン2回目接種率は、5月2日現在で約89%と世界トップクラスだ。ところが、ワクチン3回目の接種率は約53%と日本並みに低いのだ。

優先すべきは3回目の接種率を上げること

日本でも、3回目接種率の低い若者に感染が拡大していることを考えれば、3回目ワクチン接種の感染予防効果が、相当大きいことは明らかなのではないだろうか。

そう考えると、いまコロナ対策として最優先すべきことは、3回目の接種率を上げることである。自民党が提言した「イベントワクワク割」は頓挫してしまったが、例えば「3回目接種者に3万円給付」といった政策を採れば、接種率の引き上げに大きな効果が期待できる。欧米のようなコロナ規制の撤廃を考えるのは、国民の大部分が3回目接種を終えてからだろう。


また、日本がアメリカのように、マスク着用の義務をなくすことは、当分できないだろう。感染第6波の死亡者数は、すでに1万1000人を超えており、欧米のような「命より経済優先」といった方策を日本は採れないからだ。


ただ、いまコロナで亡くなっている人の大部分は、高齢者と基礎疾患のある人たちなので、彼らの感染を防げば死亡者数は大幅に減少するとみられる。通常の不織布マスクでは、感染を防ぎきれないことがすでに証明されているから、高齢者と基礎疾患を持つ人に医療用のN95マスクを無償配布し、外出するときに着けてもらえばよいだろう。


必要な財政負担は20枚セットで5000円として、2500億円程度だから、予備費で簡単に対応できる金額だ。予算466億円のアベノマスクと比べたら費用は高いが、費用対効果を考えたら、はるかによいのではないだろうか。


しかしながら、財政緊縮に走る岸田政権は検討もしていない。「キシダマスク」は実現しそうにないのだ。