(画像)MNAphotography / Shutterstock.com
(画像)MNAphotography / Shutterstock.com

大谷翔平「誰もやったことがないようなことをやりたい」~心に響くトップアスリートの肉声『日本スポーツ名言録』――新連載

2021年シーズンは投手として9勝、打者として46本塁打の二刀流をメジャーで実現した大谷翔平。


今季は開幕からしばらく成績が伴わなかったが、心配は無用。才能を支える「自信」がある限り、大谷の成長がやむことはない。


【関連】大谷翔平2022年“三刀流挑戦”改造計画!DHルール改定の「恩恵」と「負担」 ほか

MLB2022シーズンの大谷翔平は、打者として開幕から7試合、30打席ホームランなし。投手としても2連敗からのスタートとなった。


「今季の大谷は他チームから徹底的に研究されているだけに、昨季のような活躍は厳しいのではないか」と、不安視する声も多々聞かれた。


しかし、4月15日のレンジャーズ戦に1番指名打者で出場すると、第1打席の初球を右中間スタンドに叩き込むプレーボールホームラン。さらに第3打席では第2号を放ってみせた。


前日には自身の打撃について、「動きだしの準備が少し遅れている」と反省点を口にしていたが、これをすぐに修正。そんな自己分析能力の高さが、大谷のストロングポイントと言えるのではないか。

正しい努力を重ねれば現実にできる

「誰もやったことがないようなことをやりたい。野茂英雄さんもそうですし、成功すれば高校からメジャーへという道も拓けると思う」

これは大谷が高校3年の秋、日本でのドラフト会議を前にしてメジャー挑戦の意思を表明した際の言葉だ。当時は高校卒業してすぐのメジャー挑戦を批判的に見る向きもあり、結局は北海道日本ハムファイターズに入団することになったが、しかし本人としては成功の自信があったのだろう。


それは若さゆえの無謀さではない、しっかり自己分析した上での自信だ。


高校時代までの厳しい練習によって培われた基本的な身体能力の高さと、身長193センチという日本人離れした恵まれた体格が合わされば、メジャーで通用する可能性は十分にある。そんな確信が、大谷には当時からあったのではないか。


周囲からいくら無理だと言われても、正しい努力を重ねれば現実にできる。大谷はこのことを高校最後の夏、岩手県大会の準決勝において、アマチュア野球史上初の160キロを出したことで実証している。


「160キロの目標を掲げたときには無理じゃないかという声もあったが、そう言われると、絶対やってやるという気持ちになる。刺激というか、やる気になる」


これもメジャー挑戦を発表した同じ日の言葉で、底知れぬ気持ちの強さもうかがえる。単に負けん気が強いということではなく、確固たる自信からくる芯の強さということであろう。


メジャーリーグでの活躍という目標を定め、そのために必要十分なだけの練習を続けてきた。さらに運も味方につけるため、グラウンドのゴミを拾うなどの善行も重ねてきた。


成功のためには人間性も良くなければいけないと、大谷はあいさつや礼儀、仲間への思いやりも常に心掛けてきたという。


近頃は「努力しても必ず報われるわけではない」とか「人間性と成績に関係はない」などといったことを〝合理的な思考〟と捉える向きも多いようだが、それがいかに薄っぺらで浅はかな考えかというのは、大谷を見れば明らかだ。

達成していない目標はたくさんある

高校時代につくった目標達成シート(マンダラシート)には、技術や能力の向上だけでなく、人間性や運についてもしっかりと書き込まれており、それを忠実に実行してきたからこそ、成功を収めることができた。少なくとも大谷自身はそう考えているはずで、それが自信や気持ちの強さを支えているに違いない。

「努力しないよりもしたほうが成功に近づく」「人間性が悪いよりも良いほうが周囲の支えを得られる」


大谷はそんな昔ながらの「当たり前」を、当たり前のこととして実行してきたのだ。


メジャーリーグで完全なる〝投打の二刀流〟を実現し、MVPも獲得した。今やアメリカ国内において最も有名なベースボールプレーヤーとなり、一つの頂点に達したとも言えようが、そこで満足していないのもまた大谷のすごさである。


きっと日ハム時代には、女子アナなどからの誘いも数えきれないほどあっただろうが、それでも浮いた話は一切ない。唯一、元女子バレーボール日本代表の狩野舞子との交際が噂されるが、大谷本人は昨年帰国時の会見で結婚について聞かれて「まだまだ先なんじゃないか」と答えている。


めったに酒を飲まず、「飲む時間があれば練習しているほうがいい」と話す。美食にこだわることもなく、日々の食事はしっかりとカロリー計算がなされ、野球のために必要な分だけを摂取する。


われわれのような凡人は「成功してお金もあるのに、そんな真面目な生活をして何が楽しいのか」と思ってしまいそうだが、大谷からすれば「目標に向かわないで何が楽しいのか?」「それを達成するために、やるべきことをすべてやるのは当然でしょう」ということになる。


打者としてはホームラン王、投手としてはサイ・ヤング賞。チームとしてのワールドシリーズ優勝など、まだまだ達成していない目標はたくさんある。


きっと大谷はそれらを達成しても、なお「球速170キロ」「最多ホームラン更新」と、さらに高い目標を掲げて、史上最高の野球選手を目指していくのだろう。


《文・脇本深八》
大谷翔平 PROFILE●1994年7月5日、岩手県出身。身長193センチ、体重102キロ。2012年のNPBドラフト1位で北海道日本ハムファイターズに指名され、翌年に入団。17年にMLBのロサンゼルス・エンゼルスに移籍する。