鬼越トマホーク(右=金ちゃん、左=坂井良多) (C)週刊実話Web
鬼越トマホーク(右=金ちゃん、左=坂井良多) (C)週刊実話Web

鬼越トマホークインタビュー~「殴り合いから始まった“喧嘩芸”」~

――まずは、コンビ結成のきっかけを教えてください。


金ちゃん(以下、金)「NSCに入ってすぐの5月に結成しました。実は初め、僕は別の同期とコンビを組んでいたんですが、ネタ見せのときに良ちゃんが声を掛けてきたんですよ。『2番目でもいいから、俺とコンビ組んでくれない?』って。要は〝オトモダチ〟の関係みたいな」


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坂井(以下、坂)「いやいや、そんな誘い方はしてないと思いますよ。この人、イイ男ぶりたいだけですからね」


金「またまた~。恥ずかしがるなって。一目惚れしたんでしょ、俺に」


――(笑)相方がいると知りつつ、誘った理由は?


坂「戦略的な部分ですね。イカツい奴と体格いい奴が組んだらインパクトあるし、他と被らなくて目立つなと」


金「2人とも強面ってなかなか珍しいじゃないですか。俺、サンドウィッチマンさんが好きなんですけど、『あ、これサンドさんより強面だぞ』って思って。可能性は感じました。そこで、ちょうど僕が最初の相方にフラれちゃったので、正式にコンビを組むことに」


――タイミングが良かったんですね。


金「コンビ名もすぐ決まりました。最初、俺が『いちごミルク』ってコンビ名を提案したら、ふざけるなって怒られましたけど(笑)」


――そこから10年以上、2人で活動されてきました。


坂「実は俺たち、2回解散しているんですよ。まずはNSC在学中に1回。その後、卒業してすぐに2回目」


金「当時はハーフ芸人ブームで、同期でもあるマテンロウのアントニーや、デニスの(植野)行雄ちゃんがバンバン地上波に出ていた頃だったんです」


坂「同期に仕事があるのに、俺らにはない…って挫折を味わってしまったんですよ。しかも当時、アントニーが嫌な奴でね~。イジッてきたりするもんだから!」


金「そこで俺らも斜に構えた反応をするんですけど、実際、劇場に出ても死ぬほど人気がなくて、出待ちの女の子もゼロ。だんだん心が腐っていきましたね」


――話し合って解散に?


金「いや、良ちゃんの束縛で10円ハゲができてしまったんですよ(笑)。今でこそ俺に興味ない、みたいな顔してますけど、毎日鬼メールして来て、追い打ちかけてきて…」


坂「尖ってたんですよ。お互いにね。焦りもあったし。最後は喧嘩別れみたいな」


金「そのとき、スキンヘッドが苦手になって、街中でスキンヘッドを見るだけでビクッ! ってなるくらい。スキンヘッド恐怖症でした」

ジュニアさんの番組で企画になった!

――そこから再結成したのはなぜですか?

金「解散してから仲良くなったんです。それで良ちゃんからまた誘いが来たんですが、どうせ長続きしないだろうと断っていた。最終的に『俺、田舎に帰ろうと思う。これがラストチャンスだぞ?』ってなぜか断られている側の奴が上から目線で来て(笑)。ただ、俺も悔しい部分があったんで、またハゲができたら辞めるからと言って快諾しました」


坂「確かに2人ともハゲだったら売れねえもんな~」


――その後、2人の代名詞でもある「喧嘩芸」はいつ誕生したんでしょう。


金「再々結成した3年後の2014年に、吉本本社で派手なガチ喧嘩をしちゃったんですよね」


坂「単独ライブ直前で、とりあえず出囃子だけでも決めないと…ってときに、3曲ずつ持参することになったんですが、金ちゃんが3曲全部JUJUを持ってきたんです。ただでさえピリピリしてるときにJUJU。そこで俺がキレちゃった」


金「実はJUJUの時点でキレちゃったんで出せなかったんですけど、大黒摩季も持ってきてました(笑)。これ初出し情報です」


坂「ぶん殴っちゃって、大揉め。そこにインポッシブルのひるちゃんこと蛭川さんが止めに来てくれたんですが、俺が『うるせえ、お前らは巨大昆虫と一生戦ってろ!』って叫んで(※インポッシブルには昆虫と戦うネタがある)」


金「普段、温厚な蛭川さんが、良ちゃんにドロップキックをかましてました」


坂「反省しましたね。吉本辞めさせられると思った。でも、そこで話を聞きつけた(千原)ジュニアさんが『喧嘩を止めに来てくれた先輩に暴言吐くって、システムとしておもろいな』と、ご自身がやっていた番組『ざっくりハイタッチ』(テレビ東京系)で『鬼越トマホークの喧嘩を止めよう』って企画を打ってくれたんです」


金「そこでイッキにお笑いファンの方に認知してもらった感じですね」


坂「本当にジュニアさんには頭が上がらないです」


金「恩人ですよ。その後もありがたいことに何回も企画してもらいました」


坂「ただ『アメトーーク!』(テレビ朝日系)で披露したら、めちゃくちゃスベッて。そのときにジュニアさんもいたんですけど、無視されました。『こんな若手おるんや~』みたいな顔して!」


金「あなたの作品ですよ、われわれはと!」


坂「それで、他の番組にも出始めて、これからだと思っていた矢先、『ざっくり――』が打ち切りになっちゃったんです。アンガールズの田中(卓志)さんが乳首マッサージ企画の収録中に勃起しちゃって、それをなぜかテレ東が流して問題になった(笑)。勃起一発でまさかの終了」


金「だから、田中さんが勃起してなければ、俺ら、もうちょっとテレビに出られてたかもって思って!」

アクリル板を越えて喧嘩を止めた先輩!

――なるほど。その後はどうなったんでしょう?

金「3年くらい潜りました。バイトもしつつの生活になったんですが、18年に『ウチのガヤがすみません!』(日本テレビ系)で錦戸亮君が僕らのことを紹介してくれたんですよ」


坂「そこから『喧嘩芸』を芸人だけじゃなくて、『俳優さんとか他業種の方にもできるのかも?』と分かって、広がりができました」


――大物タレントの方にも臆せず披露して凄いです。


坂「最初は怖かったですけどね。今はもう慣れたんで。エッチなお店の女の子と一緒で、どんなお客さんが来ても仕事をするのみです」


金「その表現はいろいろとやめなさい! でも、ここ数年はコンプラが厳しくなったり、コロナで飛沫問題があったりして、喧嘩するのにも気を遣います」


坂「1人だけいましたよ。コロナ禍でもアクリル板飛び越えてまで喧嘩を止めに来たおじいちゃん。(笑福亭)鶴瓶さんなんですけど(笑)」


金「喧嘩が始まった瞬間、猛ダッシュで来て。おじいちゃんがガチで怒られてるの初めて見ましたよ。中居(正広)くんにも『べーさん、何でそんなことしたの~』って。そしたら『大好きやったんや。ずっとテレビで見てて止めたかったんや!』って絶賛してくれました」


――鶴瓶さんまでファンだったとは、知名度がどんどん上がっている感じですね。


金「そうですね。それもマネジャーの小菅君が『うちのガヤ』の流れをうまく利用して、新しい仕事を入れてくれたおかげなんです。本当に感謝していますよ」


坂「でも、そんなマネジャーをこの人は自分の結婚式に呼ばなかったですからね。他の社員は呼んだのに」


金「いや、あのときはまだ仲良くなる前だったから…! 実はここ数年も何度か解散危機があったんですよ。大概、良ちゃんが『解散だ!』って暴れだして。この前は、それを小菅君が泣きながら止めてくれたんです。そしたら、良ちゃんが急に『ちょっとみんな熱くなりすぎじゃないですか?』とか言い出して! 『はあ? お前のせいだよ』と」


坂「ん~、第2人格が出てきちゃいましたね~」


金「まあ、小菅君の涙がなかったら冷静になれなかったと思いますよ、こいつも」


坂「だけど、そんな彼にお前は何をしたんだっけ?」


金「…だから! 式をやったころは、まだ俺らに利益をもたらしてくれる存在か分からなかったし…」


坂「この人、最低ですよ!」

先輩芸人にも“攻めの姿勢”で

――(笑)ちなみに、最近はYouTubeチャンネルの方も注目されていますね。

金「たまたまコロナ禍で始めた『芸人ランキング』がお笑いファンの方にハマったようです。だから、見てるのは、俺らのファンじゃない人が多いというか…」


坂「楽屋ネタも多いので、みんな興味があるようで」


金「今後はトークだけだとネタの消耗が激しいので、ロケ企画も予定しています」


――いいですね。先日は、宮迫博之さんとコラボして話題になりました。


金「あれは宮迫さんの経営している焼肉屋さんに勝手にバイトで応募したら、まさかの連絡が来たんですよ。話題になって良かったなと」


――次、また新たにコラボしたい人は考えてますか?


坂「ガチでアンジャッシュの渡部(建)さんですね!」


金「向こうにメリットなくない? ボコボコにされたら」


坂「でもボコボコにしないと成立しないじゃん。『謹慎中のお取り寄せグルメランキング』とか『自分より女癖の悪い芸人ランキング』を、ぜひね!」


金「いじりすぎだよ!」


坂「渡部さんに限らずスキャンダル系の人はやりたいです。事件を起こして最初に優しくしたのが鬼越トマホークっていうのが欲しい」


――攻めの姿勢が凄いです。


金「まあ俺らは芸人と迷惑系ユーチューバーの間くらいの人間なんで。その姿勢を崩さないように活動したいとは思っています」


――最近は『水曜日のダウンタウン』(TBS系)でも攻めてましたね…!


坂「上海さん…いや、Hさんの件はね。若手の中で怖いってビビられてたから、楽屋で陰口叩くよりは、本番でやって笑いが生まれればいいなって考えだったんです。今エラいことになっちゃってますが」


金「もう本当にこれ以上はやめてくれよな…」


坂「どうにか面白い喧嘩に、とは思ってます。テレビで昔から見てた人と喧嘩できるって、そうそうないので」


金「ここで宣言しとくけど、直接対決があるときは、俺は絶対行かないからな。HさんVS坂井ってことで」


坂「いや、絶対来いよ。来なかったら…解散な!」


金「もう勘弁してくれ(笑)」


(文/kitsune 企画・撮影/丸山剛史)
鬼越トマホーク(右=金ちゃん、左=坂井良多) ともに1985年生まれで、金ちゃんは東京都、坂井は長野県出身。NSC東京校の同級生として出会い(15期)、コンビ結成。NSCは首席で卒業したものの、その後、低空飛行と解散、再結成を経て、「喧嘩芸」を武器に徐々に業界に浸透。現在はテレビ、舞台、そして自身のYouTubeと多忙な日々を送っている。その風貌と芸風から「黒いサンドウィッチマン」の異名を取ることも。