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『ナイルティラピア』愛知県/蟹江町産〜日本全国☆釣り行脚

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

花冷えなどという言葉もあるように、だいぶ暖かくなってきた今日この頃ではありますが、朝晩はまだ肌寒い日もあったり。

水の中まで暖かくなるのは、あと一歩といったところでしょうか。「これだけ暖かくなったのだから、そろそろ…」と出掛けて、意外や渋い釣果に終わることもあるのが今の時期です。

もっとも、これはワタクシの腕によるところも大きいのでしょうが。

ということで今回は、安定の釣果を求めて愛知県は蟹江町にやってまいりました。蟹江町は町の総面積のうち5分の1を河川が占めるという水郷の町。加えて町内には温泉が湧き、温泉付き一戸建ての物件も多くあります。水温が不安定な今の季節でも、この温泉の排水が流れ込む箇所で竿を出せば、食い渋りの心配なく安定の釣果が期待できるという訳なんですな。

さて、朝の関西本線永和駅に降り立つと、早朝ということもあって若干の肌寒さを感じます。でも、今回の釣り場は温泉排水のドブなので不安はありません。駅から歩くこと10分ほどで、目的の側溝に到着しました。この付近の側溝には、常に豊富な温泉排水が流れ込み、この名もなき側溝にナイルティラピアが繁殖しているのであります。

クロダイにも似た体型

早朝の、まだ人けのない静かな住宅街をウロウロするのは、不審者のようでありますが、とりあえず影を落とさぬようにソッと側溝をのぞいてみると、水面にはピチャピチャと何か小魚の群れが泳いでおります。いるいる…。試しにエサの食パンを小さくちぎって投げ込んでみたところ、小魚の群れがついばんでいる様子が見て取れます。

早く釣りたい気持ちを抑えつつ竿を伸ばし、簡単な玉ウキ仕掛けをセット。鼻クソほどの大きさに丸めた食パンをハリに付け、静かに側溝に仕掛けを入れてみます。

ほどなく玉ウキがツーッと横に走り、軽く手首を返すとブルルッ! 小気味よい手応えで釣れたのは、10センチほどの小さなナイルティラピアです。予想通りの好反応に嬉しくはなるものの、さすがにこれは小さい。もっと釣り応えのあるヤツをと再び仕掛けを入れますが、またしても小さなナイルティラピア。魚に警戒されてはならず、身を乗り出してじっくり観察というわけにはいきませんが、もうちょっと大きいヤツもいるはず…。そこでエサの食パンを大きめにして仕掛けを入れてみることにします。

投入直後からポワンポワンとウキに反応がありますが、これはエサを食いきれない小さな魚がついばんでいるのでしょう。そのまま待っていると、スーッと勢いよくウキが横に走り水中に引き込まれました。反射的に竿を煽るとギュンッと竿先が絞り込まれ、鋭い手応えが伝わります。幅の狭い側溝を右に左にと元気に走り回るヒキを楽しみながら、抜き上げたナイルティラピアは20センチほど。決して大きくはありませんが、これくらいなら十分に肴になりますし、なにより手応えも楽しめます。クロダイにも似た体型で、そこそこ馬力があるので大きさ以上に強い手応えが味わえるのも、この魚のよいところです。

ナイルティラピア 
ナイルティラピア(C)週刊実話Web

温排水育ちでも臭みはない

この後もエサを大きめにすることで小型を回避、狭い側溝なので1尾釣り上げるとしばらくは魚が散り、入れ食いとまではいきませんが、ポイントをずらしながらひとしきり元気な手応えを堪能。住宅街に人けも出てきたことから竿を納めることにしました。

ナイルティラピアという名前でお分かりのとおり、アフリカ原産のこの魚。皮を引いた身色がタイに似ていることから、チカダイ、あるいはイズミダイの名で20年ほど前までは、鮮やかな血合いのフィレ製品を市場でもよく見かけました。いつの頃からか目にしなくなりましたが、現在もアジアやアフリカの各国で盛んに養殖されており、日本で釣れる物も、もともとは養殖用として持ち込まれた物が自然繁殖に至ったという経緯があります。アフリカ原産ゆえ低温に弱く高温に強いため、沖縄ではごく普通に目にするものの、内地では冬を越せず、今回のように温泉などの温排水が年中入るようなエリアでのみ繁殖しているようです。

ナイルティラピアの紅焼魚 
ナイルティラピアの紅焼魚 (C)週刊実話Web

そんなナイルティラピアを、今回は養殖が盛んな中国にならって紅焼魚にしていただきます。おろしてみると雑食ということで泥のような物が腸に詰まっており、傷付けないように除去。さすが生まれも育ちも温泉排水の魚。結構な泥臭さがキッチンに漂います。ところが、出来上がって食べてみると、これがビックリで臭みはほとんど感じられず、身離れもよく旨い! ニンニクの芽と赤唐辛子が臭みを感じさせないのか、絶妙な味加減です。ナイルティラピアをつまみつつ、昼間からビールをグイッとあおってイイ気分♡

朝の短時間で低コスト&手軽に釣りが楽しめ、満足なひとときとなりました。

三橋雅彦(みつはしまさひこ)
子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。

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