森永卓郎 (C)週刊実話Web
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円安の今がチャンス!これで消費税率1年間ゼロ~森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』

4月18日に対ドル為替レートが126円台後半に突入し、20年ぶりの円安となった。


輸入品を商材として扱っている小売業や輸入品を原材料として使っている製造業からは、悲鳴が上がっている。また、輸入品の価格高騰を通じて、消費者の実質購買力が削がれるために、「悪い円安」との声が各界で高まっている。


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ただ、この円安は、何年も続くものではないと、私は考えている。そもそも今回の円安の原因は、日米金利差の拡大にあるからだ。


3月の米国消費者物価指数は、前年比8.5%上昇という高インフレになっている。これを抑えるためにFRB(アメリカの中央銀行)は、年内に1.75%の利上げを示唆している。


一方、日銀の黒田東彦総裁は、金融緩和の継続を明言しているから、金利ゼロの日本と金利2%のアメリカという比較のなかで、ドルを買う動きが強まっているのだ。


ただ、現在のアメリカ経済は、ウクライナ戦争で大きなメリットを受けている。いまやアメリカは世界ダントツの産油国で、原油価格高騰の恩恵を大きく受けているのだ。同時にアメリカは、世界最大の兵器生産国でもあるので、戦争は米国の軍事産業に大きな恩恵をもたらしている。


しかし、ウクライナ戦争が終結した場合、途端に原油価格は暴落し、兵器需要も激減する。そうなれば、アメリカの景気は失速し、金利を引き下げざるを得なくなる。つまり、その時点で日米の金利差が縮小に向かうため、為替は円高に向かうのだ。

絶好の景気対策になる!

円安が続く間は、物価高騰対策を講じて国民生活を守るというのが、岸田政権の基本姿勢である。すでにガソリン価格を引き下げるため、石油元売りへの補助金が給付されており、さらなる経済対策も検討されている。しかし、私はもっと効率的かつ効果的な対策があると思う。それは日本政府が持つ米国債を、このチャンスに全額売却することだ。

日本が持つ外貨準備のなかで、外国証券は今年3月末で1兆893億ドルとなっているが、ほとんどは米国債だろう。それをいま、すべて売却するのだ。ドルを売ることになれば、当然、円安に歯止めがかかる。


それだけではない。コロナ前と比べると、対ドル為替は20円ほど円安になっているから、米国債の売却によって、単純計算で22兆円程度の為替差益が得られる。消費税の税収は地方分を含めて28兆円だから、為替差益に少し財源を加えてやれば、消費税率を1年間ゼロにすることができる。


いま日本国民は、物価高に苦しんでいるのだから、消費税を引き下げれば、確実に実質所得が回復し、絶好の景気対策になるのだ。


問題は、この政策を米国が認めるかどうかだ。平時なら絶対に許さないだろう。大量の米国債を日本が売れば、米国債の価格が大きく下落し、金利が上昇してしまうからだ。


しかし、いまアメリカは金利を引き上げようとしているのだから、日本の米国債売却は、アメリカの金融政策と方向性が一致している。もしこのタイミングで売れないのであれば、日本政府は米国債を永遠に売れないことになってしまう。


ちなみに日本は、年金積立金のなかでも100兆円ほどの外国債や外国株を保有している。いまこそ売却のタイミングだ。