
三沢光晴「おまえにはプロレスを続けてほしい。つらいかもしれないが、絶対に続けてほしい」~一度は使ってみたい“プロレスの言霊”――最終回
2009年6月13日、プロレスリング・ノアの三沢光晴が試合中のアクシデントで亡くなった。享年46。
プロレス史に残るあまりにも衝撃的な出来事だったが、そんな悲しみを乗り越え、なおプロレスを応援し続けてこそ、三沢の遺志に沿うことになる。
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広島県立総合体育館グリーンアリーナ大会で行われたGHCタッグ選手権、王者組の齋藤彰俊とバイソン・スミスに三沢光晴と潮崎豪が挑んだ一戦。
試合終盤、齋藤が雪崩式アイアンクロースラムを炸裂させると、三沢はその時点から足元をふらつかせていたという。だが、本当にどこかケガをしたのか、それともいわゆる「プロレス的な動き」なのか、判断がつかないのは仕方のないところである。
齋藤はさらに蹴り技を畳みかけて三沢を追い込むと、その体を抱えてバックドロップを放った…。三沢はこの時、すでに意識を失って受け身が取れなかったのか、不自然な形でマットに落ち、その瞬間に全身が青ざめていったという。
異変に気付いたレフェリーが「動けるか」と問いかけると、倒れたままの三沢は「動けない」とかすかにつぶやいた。試合はそこでレフェリーストップとなったが、心肺停止状態で病院に搬送された三沢は、そのまま息を引き取り、死因は頸髄離断と発表された。
チケットを買ってくれたファンへの責任感
突然訪れた三沢の死は、すべてのプロレスファンに大きな衝撃と悲しみを与えることになった。最後の対戦相手となった齋藤には、聞くに堪えない罵声が浴びせられた。ファンとしても「齋藤には責任のない事故」と理解しながら、それでも誰かを悪役にして怒りをぶつけないことには、三沢の死を受け止められなかったのだ。事故の前兆はあった。三沢はノアの旗揚げ以降、社長業に忙殺されながらも、チケットを買ってくれたファンへの責任感から一度たりとも休場はしなかった。
全日本プロレス時代からは見る影もないほどに、三沢の腹回りは太くなったが、これには社長としてのスポンサー接待などの影響もあったのだろう。首、肩、腰、膝には慢性的に激痛が走り、日常生活にも支障をきたす状態で、まともな練習ができなかった。
〝絶対王者〟として小橋建太をエースに立てたが、その小橋も故障や病気で欠場を余儀なくされてしまった。丸藤正道や力皇猛、森嶋猛ら次世代に道を譲ろうともしたが、小橋や三沢と比べれば知名度の差が大きく、テレビの視聴率や地方での興行成績は振るわなかった。
2006年12月に自身三度目のGHC王者となり、そこから7度の防衛を果たしたが、これはあくまでも「団体を支える」ためのこと。試合内容としては精彩を欠くものも少なくなかった。
しかし、いくら三沢の体調が悪かったとしても、直接、死のきっかけをつくってしまった齋藤の心労辛苦は大きかった。
備えられていた“遺言”の存在
齋藤は引退どころか自死も頭をよぎったという。それでも事故の翌日からリングに上がったのは、「ここで俺が辞めたらファンが怒りをぶつけることができなくなる」との思いからだった。戦い続けることが齋藤なりの責任の取り方だった。不幸な事故から数カ月がたった頃、そんな齋藤にノアの社員から一通の手紙が手渡された。
《重荷を背負わせてしまってスマン。きっとおまえは俺のことを信頼して、全力で技をかけてくれたのだと思う。それに俺は応えることができなかった。信頼を裏切る形になった。本当に申し訳ない。それでも、おまえにはプロレスを続けてほしい。つらいかもしれないが、絶対に続けてほしい》
三沢が亡くなる2年ほど前に、この「遺言」を託された知人が聞き書きしたものだという。その頃から三沢は、自分に万が一のことがあったときのため、備えていたというのだ。
うがった見方をすれば、いくらか出来すぎの話のように思えなくもない。しかし、三沢なら十分にあり得る話だというのも、ほとんどのプロレスファンが感じることであろう。
自分を慕ってくれる選手やスタッフたちのため、そしてプロレスを応援してくれるファンたちのためにも、自分が原因で禍根を残すようなことは決してあってはならない。
それが三沢の生き方であり、そんな三沢がいたからこそ、今もなお純粋な気持ちでプロレスを応援できるというファンは、決して少なくないはずだ。
《文・脇本深八》
三沢光晴 PROFILE●1962年6月18日~2009年6月13日。北海道出身、埼玉県育ち。身長185センチ、体重110キロ。得意技/エルボー攻撃、エメラルド・フロウジョン、タイガー・スープレックス、フェイスロック。
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