菅義偉政権のブレーンを務める竹中平蔵氏が、11月28日放送の『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)で驚愕の提言を行った。コロナ禍で経営難に陥っている中小企業を救うだけでなく、大企業についても産業再生機構のようなものをつくって支援すべきというのだ。
一見、何の問題もない発言に聞こえるかもしれないが、私は背筋が凍りついた。産業再生機構というのは、「官製ハゲタカファンド」である。窮地に陥った企業に公的金融機関が救済融資をするのではなく、その会社の資本を取得した上、企業再生と称する大規模リストラと解体切り売りを行うことが仕事なのだ。従業員をクビにして、売れる資産を片っ端から売り払い、そして身軽になった本業をスポンサー企業や別のハゲタカに売り払う。マグロの解体ショーのようなものだ。
竹中氏には「実績」がある。小泉純一郎内閣時代、金融コンサルタントの木村剛氏と組んで、不良債権を短期で半減させる金融再生プログラムを断行した。きっかけは、自民党の経済産業部会に登場した木村氏が、持論の「大手30社問題」をぶち上げたことだ。不良債権問題は、莫大な借金を抱える大手30社が銀行の資金を塩漬けにして、資金が回らなくなっていることが本質だと指摘したのだ。
しかし、不良債権の実態は経営悪化ではなかった。バブル崩壊で地価が下落し、銀行に差し出している不動産担保の評価額が、融資額を下回る「担保割れ」したことが理由である。当時、私はデフレを止めて、地価を本来の水準に戻せば、不良債権問題は解消すると強く主張したのだが、小泉政権はそうした意見に一切耳を貸さなかった。結局、不良債権処理は断行された。
「ハゲタカ」に売る前にコロナ制圧を先にやれ!
一例を挙げよう。米国系ハゲタカのサーベラスが、国際興業への銀行融資5000億円を半額で購入した。同社は、この債権の一部を株式化して国際興業を傘下に収め、すぐに優良資産の切り売りを行った。帝国ホテルの株式(国際興業が発行済み株式の39.5%を保有していた)を861億円で三井不動産に売却し、八重洲富士屋ホテルを300億円で住友不動産へ、浜松町の広大な土地を日本生命保険などへ800億円で売却した。その他、傘下の地方バス会社も軒並み売却した。
こうした資産の切り売りだけで、投資金額は完全に回収されたとみられるが、その後、優良資産の大部分を失ってスカスカになった国際興業を、1400億円という高値で創業家に売り戻したのだ。今、ハゲタカたちが狙っているのは、同じことの再現である。
私は、大手企業をハゲタカに売り渡すのではなく、今すぐ新型コロナの制圧に乗り出すべきだと思う。世界の常識となっている「徹底的なPCR検査と陽性者の隔離」をすればいいだけだ。日本のPCR検査数は主要国と比べてケタ違いに少ない。加えて、日本を含む東アジアは、欧米よりも圧倒的に強い新型コロナへの抵抗力を持っているから、やる気になればコロナの封じ込めは可能である。
実際、中国や台湾、そして韓国も、ほぼコロナを封じ込めた。その結果、7~9月期GDPの前年同期比の伸び率は、日本がマイナス5.8%なのに対して、韓国マイナス1.3%、台湾プラス3.3%、中国プラス4.9%だ。コロナの制圧こそが最大の景気対策であり、そうすれば苦境に陥る航空会社や鉄道会社などを救えるのだ。
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