森永卓郎 (C)週刊実話Web
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プーチンをテロリストに認定せよ!~森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』

国連総会は4月7日、ウクライナで「重大かつ組織的な人権侵害」を行ったとして、ロシアを国連人権理事会から追放する決議を採択した。


決議は賛成93カ国、反対24カ国で、棄権は58カ国だった。ウクライナから伝えられる目を覆うような破壊と虐殺を見ていれば、世界がそうした判断をするのもうなずける。


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しかし、考えておかなければならないのは、なぜロシア兵が残虐行為を繰り返しているのかという点だ。ウクライナに侵攻したロシア軍の大部分は、徴用兵だと言われている。ロシアでは18歳から27歳の男性が、春と秋の2回に分けて徴兵される。原則として軍事訓練を受けるだけとされてきたが、今回はその若者たちが前線に送られているのだ。


十分な戦闘訓練を受けていない彼らは、ウクライナでいきなり生命の危険にさらされた。ウクライナ政府が国民に武器を与え、ゲリラ戦でロシア軍に挑んだからだ。ロシア兵の立場からすれば、市民の姿をしていても、いつ攻撃してくるか分からない。だから市民を捕らえ、拷問をして、戦闘に加わっている住民を聞き出そうとする。それでも分からなければ、住民を皆殺しにするのだ。


私は、そもそも彼らが残虐な存在だとは思わない。それは戦争がもたらす一種の狂気なのだ。


私は子供のころ、南方戦線から帰還した元日本兵の話を聞いたことがある。いつ敵が襲ってくるか分からない中、ジャングルで考えていたことは、1秒でも先に敵を発見し、即座に引き金を引くことだった。そして、それを繰り返すうちに、敵を撃ち殺すことが安堵感を超えて快感に変わっていったという。その元日本兵は残虐どころか、とても優しい人だった。

テロリストならアメリカも暗殺できる!

実は、私の父親は特攻隊員だった。ゼロ戦ではなく「蛟龍」という5人乗りの潜水艦に乗っていて、特攻出撃の日も決まっていた。終戦が2週間遅ければ、父の命はなかった。

戦争中、父は大学生だった。それが海軍予備学生として召集され、そのまま特攻を命じられたのだ。人命軽視の特攻は命じられるほうも悲劇だが、敵軍から見れば恐ろしい残虐兵器でもある。しかし、重要なことは、特攻を命じられた者の大部分が職業軍人ではなく、父と同じように集められた一般の若者だったことだ。もちろん、父も残虐な人ではなかった。


ウクライナの戦争も、本当に残虐なのは前線で戦っているロシア兵ではなく、彼らを前線に送り込んでいる軍上層部、とりわけ独裁者として君臨しているプーチン大統領だ。


だから私は国連総会が採択すべき決議は、プーチン大統領を「テロリスト」と認定することだと思う。そうすれば、状況は大きく変わってくるのだ。


例えばアメリカは、法律でロシアの大統領を暗殺することができない。しかし、テロリストとなれば話は別だ。現にアメリカは、国際テロ組織「アルカイダ」の指導者・ビンラディン容疑者を暗殺している。ビンラディン容疑者とプーチン大統領を比べた場合、どちらがより残虐で、どちらがより世界に脅威を与えたかは明らかだろう。


世界がロシアに求めることはたった1つ、ロシア軍の完全撤退と戦争による被害の完全賠償だ。