生き残りを懸けるレンタルビデオ業界“次の一手”~企業経済深層レポート
長年、庶民に愛されてきたレンタルビデオ業界に異変が起きている。
新型コロナ禍の影響や生活様式の変化により、その店舗数が激減しているというのだ。国内ビデオレンタル店の2大チェーンである「TSUTAYA(ツタヤ)」と「ゲオ」の最新動向を探った。
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ビデオメーカー関係者が、ビデオレンタル店激減の理由をこう解説する。
「日本映像ソフト協会によると、全国のビデオレンタル店の店舗数は1990年末の約1万3500店をピークに、2020年には5分の1の約2800店にまで減少しています。その最大の理由は、若者を中心にレンタルやセル(購入)から、動画配信サービスに需要が移行しているためです」
実際、店舗数の減少に伴い、市場規模でも04年の約3800億円(日本映像ソフト協会統計)が1041億円(同・20年)にまで落ち込んだ。反対に、動画配信は3973億円(同・20年)の市場で、今なお右肩上がりだ。
動画配信サービスとは、月々500円~2000円台の定額制(サブスクリプション=通称サブスク)で、好きな映画やアニメが見放題となるサービス。オリジナルの動画コンテンツも数多く製作・配信し人気を博す。
主な配信企業としては、Amazon(アマゾン)プライムビデオ、Netflix(ネットフリックス)などの海外勢。日本勢ではHulu(日本テレビ系)、U-NEXT(USEN)などがある。
ライフスタイル型に併設し進化させてゆく
そんな中、リアル店舗を構える「TSUTAYA」と「ゲオ」はどうか。現在、「TSUTAYA」の店舗数は1034店(22年1月)、「ゲオ」が988店(21年12月)で、ピーク時より減少したとはいえ、この2つのチェーンだけで全体の7割を占める状況にある。それでは、両社の今後の生き残りをかけた動きを見てみよう。まずTSUTAYA。運営する「カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)」(東京都渋谷区)は上場を廃止しているため、経営全容の把握は難しい。だが、傘下の主要フランチャイズ企業「トップカルチャー」の業績が参考になる。ビデオ店関係者が言う。
「北陸を中心に約70店を展開するフランチャイズ大手のトップカルチャーが昨年夏、23年を目途にビデオレンタル事業からの撤退を表明し、衝撃が走りました。確かに売り上げは18年の約323億円から21年には264億円にまで激減。ここで一旦レンタル事業にメドをつけ、今後はCCC傘下で書店やカフェ、シェアオフィスなどの新たな事業を展開する予定だそうです」
大手書店関係者が言う。
「TSUTAYAは創業以来、新しいライフスタイルを提供できる場づくりをモットーとしてきました。昨今は、人々のビデオの楽しみ方の変化に合わせ、TSUTAYAも微妙に変化しつつあります」
つまり「TSUTAYA」は、今後ビデオレンタルを残しながらも、お茶と一緒に本を楽しめる場や、フィットネスジムを備えトレーニングしながら健康や体づくりの本を読める場など、本をメインとした多様なライフスタイルに対応していくようだ。そうした場を提供する方向で、徐々に店舗形態を変えている。
これに対し「ゲオ」(愛知県名古屋市)は、状況が異なる。18年の売上高は2993億円、21年は3284億円(ゲオ決算公表数字)と、意外にも売り上げは順調に伸びているのだ。
ブランド品のオフプライス店を増加
レンタルビデオ市場全体が縮小する中、「ゲオ」はなぜ好調なのか。経営コンサルタントが明かす。「レンタルビデオが動画配信に押されている現実を受け、ゲオは数年前に約1100あった店舗を徐々に減らしながらも、一方で衣料ブランドの在庫を買い集めて格安で売るオフプライスストア『Luck Rack(ラックラック)』の新店や、リユース店『2nd STREET(セカンドストリート)』の出店を加速させています」
実は今、格安ブランド品を扱う「オフプライスストア」という新マーケットが大注目なのだ。アパレル関係者が言う。
「オフプライスストアとは、小売りや卸が抱えるブランド品の衣料や靴、流行を過ぎた商品などを正価の7割~8割引で販売する店を指す言葉です。アウトレットとの違いは、アウトレットが自社商品のみを取り扱うのに対し、オフプライスは広いスペースに数多くのブランド品を同時に格安展開する点。『ゲオ』はこれに目をつけ、19年にオフプライスストアの1号店を横浜にオープンしました。以来、東京の原宿、埼玉、茨城などで相次いで出店しています。この市場は、米国ではすでに8兆円市場、日本でも22年に3兆円産業とも言われ、現在伸び盛りのジャンルとして注目されているのです」
ビデオ業界関係者が言う。
「『ゲオ』は24年までにビデオレンタルを残しつつも『オフプライスストア』を50店舗まで増やす計画だそうです」
2大レンタルビデオの雄「TSUTAYA」と「ゲオ」、今後の勝者は果たして――。今は、ゲオが半歩リードといったところか。
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