オープン戦最下位の原・巨人がスタートダッシュに成功。矢野・阪神が〝1人白星配給状態〟になっているせいもあるが、ベンチの雰囲気も至って良好だという。勝因は「新トロイカ体制」にあるようだ――。
「各コーチが各々の役目を分かっていて、それを全うしています。元木大介一軍ヘッド兼オフェンスチーフコーチ、阿部慎之助一軍作戦兼ディフェンスチーフコーチ、桑田真澄一軍投手チーフコーチがその中心になっています」(スポーツ紙記者)
この3コーチがトロイカ体制を牽引している。それをもう1つ高いところから見ているのが、原辰徳監督という構図だ。
「3コーチはいずれも『ポスト原』と目されています。阿部コーチが現役を引退した当初から囁かれていたように、すんなりと後継者に決まるのか、それともその前に誰かを挟むのか。その方向性も、この3人次第で定まっていくのでしょう」(球界関係者)
3コーチの言動、評判を聞いてみると「ポスト原」の最有力者も見えてきた。
「桑田コーチの評判がものすごくいいんです。お得意の英会話で外国人選手とも直接話をしていますし、先発陣のコマ不足解消、救援陣のレベルアップと結果も出しています」(前出のスポーツ紙記者)
昨季のチーム防御率リーグ4位からの立て直しが、桑田コーチに課された今季のテーマだった。キャンプ当初は、通常6人で回す先発ローテーションを5人とし、「その調整の仕方を知らないだけ」とも話していた。
しかし、いざフタを開けてみたら、先発6人制。改造を諦めたのではなく、
「自身の理論を押しつけるだけではなく、状況に応じて変えている」
と、逆に「桑田評」が高まった。
目立たない阿部コーチだが…
「選手に話し掛けるときの口調もソフト。『鍬原拓也(くわはらたくや)-翁田大勢(おうたたいせい=登録名:大勢)』の勝ちパターンの継投もできつつあり、これが最大の桑田効果です。昨季、クローザーを務めたT・ビエイラの調子が上がらず、彼の不振がそのままペナントレースに影響すると思われたんですが」(前出の球界関係者)
また、2季ぶりに三塁コーチャーに復帰した元木ヘッドも存在感を強めている。
「原監督は三塁コーチャーを誰にするかと、キャンプインした当初から口にしていました。村田修一コーチ、阿部コーチも候補に挙がっていましたが、ホーム突入か否かの判断、サインを送るタイミングなどのセンスで元木ヘッドに決まりました」(同・関係者)
桑田、元木両コーチの評判に対し、目立った貢献ぶりが聞こえてこないのが、阿部コーチだ。
「試合前のシートノックでノッカーを務めていましたが」(ベテラン記者)
作戦参謀として原監督に助言を求められているが、その返答内容というのが、実は非常に難しいのだ。
一般論として、指揮官がコーチに助言を求めるのは、選手交代のタイミングだ。指揮官はその機会を質問するのだが、参謀役はそれを先読みし、選手に準備させておかなければならない。また、交代させたあとの守備位置の変更など、常に先読みして動かなければならない。
「目立ってはいませんが、失敗の情報もありません」(同・記者)
だとすれば、ポスト原の一番手は阿部コーチなのかもしれない。
「かつて、原監督が長嶋茂雄終身名誉監督の下でヘッドコーチを務めていた際、あまりにも存在感がなかったため、古参のOBが心配したこともありました。でも、存在感を消して長嶋氏に尽くしながら、いろいろと勉強していました。原監督と同じ道程を歩んでいるのかもしれません」(前出の球界関係者)
課題は新人クローザーを守ること
その原監督だが、日本一奪還のほかに、「指導者教育に一定のメドが立ったら、勇退する」ともいわれてきた。そのタイミングは当事者にしか分からないが、昨今、こんな指摘も聞かれるようになった。
「故・星野仙一氏の采配も重なってきた」
ルーキーの大勢をクローザーに抜擢したことだ。
中日指揮官だったころの星野氏がルーキーだった与田剛氏をクローザーでスタートさせたのは有名な話。新人王と最優秀救援投手のタイトルも獲得したが、2年目以降はパッとしなかった。
その原因は、プロ2年目に傷めた背筋痛。登板過多が原因とされており、それに続いた上原晃、森田幸一両投手も長く活躍することなく消えてしまった。
「大勢をクローザーで起用させた原監督の度胸は〝星野級〟ですが、彼が長く活躍できるよう、配慮しなければなりません。そこは桑田コーチも注意深く見ていると思いますが」(前出のベテラン記者)
二軍では先発要員として調整していた山口俊のリリーフ転向が決まった。大勢を登板過多にさせないための予防策と思われるが、この「新人クローザーを守ること」が、3コーチのトロイカ体制に与えられた新たな課題とも言えそうだ。
「他球団も大勢の研究を始めています。不振の時期もあるでしょう」(同・記者)
現コーチたちは原監督に強い影響を受けている。他球団の研究も含め、大勢を守りきれば、現場を退いたあとも強い発言力を持つのは間違いないだろう。
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