企業経済深層レポート (C)週刊実話Web
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ふるさと納税返礼品に“家庭用シェルター”登場!~企業経済深層レポート

国内で核対応型、防災型の地下シェルターへの関心が急速に高まっている。


核対応型、防災型地下シェルターとは、具体的にどのようなものか。地下シェルターを設置するメーカー関係者が明かす。


「まず核対応型。日本は原爆により、広島で約14万人、長崎で約7.4万人が亡くなったといわれています。後遺症も含め、いったん核攻撃を受ければ被害は甚大。しかも、今の核兵器は広島、長崎の数百倍から数千倍の威力を持つといわれ、想定される被害は当時の比ではない。そんな核攻撃から身を守るために設置する避難所の1つが、核対応型地下シェルターです」


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核対応型は気密性に優れた設計。内部の人間を核攻撃から守りつつ、爆発後に空中に浮遊する放射性物質をシェルター内に取り込まない特殊な換気機能を持つ。核攻撃に耐えうるということは、サリンやマスタードガスなどの化学兵器や、生物兵器による攻撃にも耐えられる。無論、兵器でなくても、例えば新型コロナの最悪株発生時などにも駆け込めるだろう。


一方、防災型地下シェルターとはどんなものか。


「東日本大震災級の大地震が起きても、地震の揺れを地上比の約半分に抑制し、家屋や家具の倒壊による被害や不安を軽減できます。また、イザという時に核対応型ほどではないものの、核やミサイル砲撃にも一定の対応は可能です。遮音性に優れ、防音効果も高いため、平時は楽器室などにも使用できます」(同)

“核の脅威”を身近に感じる具体的な事例

このような核対応型地下シェルターに対する関心が高まった背景には、ロシアのウクライナ侵攻がある。防衛省関係者が言う。

「今日の核危機の高まりは、ロシアのプーチン大統領が、ウクライナの紛争に欧米が介入した場合、核の使用もあり得るとチラつかせたことがきっかけです」


しかも同じタイミングで、北朝鮮は米全土を射程に収めるICBM(大陸間弾道ミサイル)の打ち上げ実験を再び行った。


「このため日本国内でも『核脅威』論が一気に強まり、核シェルターに関心が高まったのです」(同)


それを身近に感じられる具体的な事例も相次ぐ。総務省関係者が明かす。


「総務省が管轄する『ふるさと納税』で、ついに返礼品として『核シェルター』が登場しました。国民の間で『核シェルター』が現実味を帯びてきた証しです」


今年「核シェルター」を返礼品にしたのは茨城県結城市。寄付額2090万円を納めた人が対象だという。


もっとも結城市の返礼品の核シェルターは、地下ではなく屋外型だ。幅約2メートル、奥行き約4メートル、高さ約2メートルのサイズで、鉄板、鉛板、断熱材製の壁は、厚さが50ミリを超え5人までの避難が可能。室内には、核の放射性物質や化学兵器による有毒ガスなどを除去できるイスラエル製の特殊フィルターを完備する。普段シェルターとして使用しない時は、書斎などとしても使える。


同じく「ふるさと納税」の返礼品には「防災型地下シェルター」も現れている。総務省関係者が言う。


「1億円の防災型シェルターを返礼品にしたのは、栃木県矢板市です。21平方メートルの広さで、特殊な換気装置や非常用電源を備え、土砂崩れ、竜巻などの災害時にも安全に過ごせる。実際、昨年暮れに兵庫県の方が申し込んだというから驚きです」

日本の普及率は0.02%という現実

ところで、こうしたシェルターの平均相場は、どれほどなのか。シェルターを扱うメーカー関係者が言う。

「価格は業者によってまちまちだが、強いて平均価格を出せば、核対応地下型鋼鉄製シェルターが4人用で1500万円~。厚さ30センチのコンクリート製で1000万円前後が相場です」


なお、防災型では、50トンの土圧・水圧に耐える(6~10畳程度)鋼製地下シェルターが750万~900万円前後だ。いずれにせよ、一般庶民にとっては決して安価ではない。


NPO法人「日本核シェルター協会」によれば、核シェルターの人口あたりの普及率(2014年)は、北朝鮮と国境を接する韓国の300%を筆頭にスイス、イスラエルが100%、ノルウェー98%、米国82%、ロシア78%だ。対して日本はたったの0.02%だという。防災型でも0.2%程度だ。


立憲民主党前衆院議員の亀井亜紀子氏(島根)がツイッターで、こう呟いた。
《キエフが攻撃された時、市民は地下鉄の駅に逃げ込んでいた。島根には地下鉄がなく、どこに逃げる? 戦前のように防空壕もない。チェルノブイリが攻撃された今、スイスのように核シェルターを地域や家庭に配備すべきだと思う。原発は安全だと主張する人も、他国からの爆撃は想定外だろう》
ウクライナには、旧ソ連時代に作られたシェルターがキエフだけでも5000を数えるという。それが皮肉にも今はウクライナの人たちの命綱になっている。

自民党は、国土強靭化政策で核や防災対応シェルターの設置を検討し始めたというが、形が見えにくい。


核、大量破壊兵器、激甚災害などの脅威に晒された今日、政治がダメならやはり個人でカネと知恵を絞り、地下シェルター設置を模索するしかないのか。