『痛みの悩み相談室』~年を取ると背中が曲がる理由(監修/井尻慎一郎先生)

年齢を重ねると、人間の背中は曲がってくる傾向にあります。反対に反ってくることはほとんどありません。これは、骨粗しょう症が要因となって、脊椎の圧迫骨折が1カ所ないし数カ所に生じたり、椎間板の前方部分が年を経るごとに縮んでいくことによって起こるものです。

脊椎の中心には、脊柱管という空間が頸椎から胸椎、腰椎、仙椎まで上下に広く通じています。その中を通っているのが脊髄神経で、体を動かすのに重要な役割を果たしています。しかし、年齢を重ねると脊柱管を囲む椎体の骨や靭帯、椎間板などが変形・肥厚し、脊柱管が徐々に狭くなっていきます。この脊柱管は体を反らすと狭くなりますが、前屈すると広くなります。つまり、背中が曲がるという現象は、加齢によって脊柱管が狭くなるのを避けようとする体の防御反応でもあるのです。

逆流性食道炎のリスクが高まることも…

とはいえ、曲がりすぎると上半身を後ろから支える脊柱起立筋が疲れて疲労性腰痛が起こりやすくなります。また、肺や胃などが圧迫されて肺活量が低下し、逆流性食道炎のリスクが高まります。その際は息切れや胸焼け、胃がつっかえるなどの症状が出ます。