企業経済深層レポート (C)週刊実話Web
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中古車“異常な価格高騰”止まらない3つの背景~企業経済深層レポート

昨年から今年にかけて中古車の価格上昇に歯止めが掛からない。その実態を中古車販売業者が解説する。


「中古車オークション運営の最大手『ユー・エス・エス』によれば、今年2月に成約した中古車の平均取引単価は、前年同月比20.1%増の100万6000円。統計が残る1999年以降で最高額となりました」


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中古車の価格高騰は、リクルートが企画制作する中古車情報メディア『カーセンサー』による「カーセンサー中古車購入実態調査2021」(21年11月)でも明らかだ。


同調査による2021年の中古車購入総額は、前年比21.3%増の4兆1699億円で、前年の3兆4365億円を大きく上回った。15年の調査開始以降、拡大傾向にあった中古車市場だが、20年は減少に転じた。しかし、21年は前年からの回復にとどまらず、ここ7年で最大の市場規模に膨れ上がっている。


この異常とも思える価格高騰の背景には、どんな理由があるのか。自動車ジャーナリストが分析する。


「昨年来の中古車高騰は世界的なものです。特に自動車産業立国の日本では、その傾向がより目立つ。大きな理由は3つあり、1つはやはりコロナ・パンデミックの影響です」


新型コロナの感染拡大により、世界の自動車メーカーの工場が多数ある東南アジアを中心に、都市封鎖や国境封鎖が起きた。このロックダウンの結果、工場での減産や工場自体の操業停止に追い込まれるメーカーが相次ぎ、新車の生産が大きく落ち込んだという。

新型コロナ感染拡大も高騰をあおる

「そのため、新車不足ですぐに車を入手できない人が数多く出てきた。さらに、3密防止のため電車やバスでの移動を避け、個室となる車を求める人も増えた。こうした人々が手に入りにくくなった新車を回避し、入手しやすく、しかも価格が安い中古車市場に走ったことが、中古車不足と価格の上昇につながったと思われます」(同)

中古車高騰の理由は、それだけではない。


「2つめは、昨年から続く半導体不足です。米中の貿易摩擦や21年以降に多発した自然災害、さらにはコロナ禍における需要の急拡大を受け、新車の生産に不可欠な半導体が世界的に不足した。そのため、新車の生産が落ち込んで納期が遅くなり、中古車市場が拡大しました」(同)


そして3つめは、海外における日本車の人気が相変わらず高いことが挙げられる。以前から東南アジアやアフリカなどでは、日本の中古車が引っ張りだこだったが、新車不足でさらに人気が過熱しているという。


では、われわれ庶民が必要とする中古車は、どこまで高騰しているのか。具体例を詳しく見てみよう。


中古車販売会社のスタッフがこう分析する。


「人気が高い中古車は軽自動車で、伸びているのはSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)、いわゆるスポーツタイプの多目的車です」


これは先に記した『カーセンサー』の調査でも裏付けられており、第1位は軽自動車で販売全体の37.1%を占める。第2位は家族向けのミニバンで15.3%、その次にSUVで10.6%。特にSUVは18年の5.3%から4年連続で伸張している。

人気車種は半年待ちの納車…

値上がり率の高い人気車種は何か。

「軽自動車なら軽ワゴンの『エブリイ』(スズキ)や根強い人気の『ミラ』(ダイハツ)などです。これらの中古車価格は、1年前の相場と比較すると20%アップしている。また、20〜30代に人気のSUVでは、20年式の『エクリプスクロス』(三菱)の値上がり率が高く、1年前より27%アップの平均350万円。また、同じく20年式『ヤリスクロス』(トヨタ)は、1年前より17%アップの平均260万円で販売されています」(同)


人気車種は今年の初めごろから納車が遅れ始め、4カ月から長ければ半年待ちだという。


中古車人気は軽自動車やSUVだけではない。農家や建設業者に欠かせない軽トラックにも及んでいる。農協関係者が明かす。


「中古の軽トラも購入者が増えています。ただし、1年前まで100万円前後だった19年式の『キャリイ』(スズキ)が、今では平均130万円と高くなる一方。しかも、程度のいいものは品薄状態で、農家の間から廃車寸前の軽トラでも欲しいという声が高まり、20万円前後で取引されるという驚きの例も出ています」


では、いつ中古車価格が落ち着くのか。前出の中古車販売業者が言う。


「コロナ禍や半導体不足が長引き、明るい材料が見えてきません。ということは、新車の生産台数も増えそうにない。一方で下取りに出される中古車は減っており、しばらく中古車の平均単価が上がりやすい環境が続くでしょう」


今後はウクライナ情勢など、さらなる不安定要素が重なってくる。そのため当面は、業者間で程度のいい中古車の争奪戦が繰り広げられ、価格高騰は止まらないという見方が濃厚だ。