ひるなま 福岡県出身、B型、38歳エロ漫画家。ある日突然、腹が減る。こんな程度で病院に行く人いる？　胃が疲れているのかな…と思って病院に行ったら末期のがんが発覚。現在も闘病を続けながら活動中。

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――末期がんの体験記として大きな話題になっています。発売までの経緯を教えてください。

ひるなま　がんが発覚し手術が決まった頃は、心細くて。自分と似た状況の人の体験記や手記が読めないかと探したのですが、欲しい内容のものが意外と見つからなかったんです。だったら自分が出そう、というわけで、ちょうどお誘いくださった『COMICポラリス』さんで描かせていただくことにしました。

――最初にがん告知を受けたとき、どのように感じましたか？

ひるなま　まだ他人事だと思っていたときは、やっぱり映画やドラマのように劇的かつ明確な告知シーンがあって、余命を告げられてそこから患者生活が始まる…といったイメージを持っていました。

でも実際には作中に描いた通り、連日の検査で容赦なく確証が突きつけられていき、告知の頃にはすでに手術・入院の段取りがすんでいました。あまりに目まぐるしくて、当時は現実の問題を処理するだけで精一杯で、自分の感情と向き合う余裕はありませんでしたね。

「がんって本当に自覚症状がないんだな」

――自身の体験を漫画化することに葛藤はなかったのでしょうか？

ひるなま　私が安心して手術や闘病生活を迎えられたのは、やはりたくさんの方々がいろんな体験と情報をつづってくださった積み重ねの歴史あってこそです。自分もその一端となれるなら、むしろ光栄だと思っています。

ただ大腸がんはどうしても経肛門的検査や苦痛の表現が多くなりますので、生々しくなりすぎないように親しみやすい〝兎の擬人化〟で描かせていただきました。

――がんになったことで気づいたことはありますか？

ひるなま　がんって本当に自覚症状がないんだな、ということです。検査で見つからなければ、初期のうちは自分では気づけないと本当に思います。そして私は切除手術後2年が経過し、再発もしているのですが、それでもまだがんそのものによる苦痛は一切ありません。あるのはすべて抗がん剤による副作用なんです。

だから、明らかに合理性を欠いた代替療法や疑似科学に騙される人が減らないんだなと、最近気づいてきました。まだがんなんて他人事だと思っている方も、闘病中の方も、もちろん私も、自分の体の中で何が起こっているかは見えません。だから、検査が大事。コロナ禍で病院に行きづらかったり、痛いのや苦しいのが嫌だったりするけど、とにかく検査は「体へのご褒美」と思って、受けてもらいたいなと思います。

（聞き手／程原ケン）