日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web
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『ソウシハギ』東京都八丈島/八重根産〜日本全国☆釣り行脚

東京都は八丈島の八重根桟橋に来ております。前夜の強風から一転、朝から好天となり勇んで桟橋の先端に入った前回。


目の前の大海原に気が急いて、仕掛けを作るのももどかしく、市販の仕掛けを足下にドボン。ササノハベラやらカワハギやらの小物と戯れ、南国ならではのメガネハギなんぞがヒットして、1人で喜んでいるワタクシの傍らで、黙々と仕掛けを作り、そして寄せエサ作りに励む友人。


【関連】『メガネハギ&カワハギ』東京都八丈島/八重根産〜日本全国☆釣り行脚 ほか

何か狙ってますな…。離島の一級ポイントにて、ガマンできずに小物で喜ぶ人と、狙いすまして入念に準備を整える人。どちらが〝ちゃんとした釣り人〟かは自明の理というヤツですね。


しばらくして準備が整ったようで、友人も竿を振り始めました。横目で見ていると、開始早々に竿が曲がり、取り込まれたのはダツです。ダツは食べ方と部位によってはおいしく食べられる魚ですが、釣りでは完全なる外道魚。ついでに結構アブナイ奴だったりします。というのも、光に強く反応する習性があり、夜釣りで海面に強い光を当てると飛んで来る、という話を耳にします。実際、夜間潜水ではヘッドライトの灯りに飛び込まれ、首や目に突き刺さる事故も起きていますから、危険な魚と言えるでしょう。


日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

そんなダツの魚影はかなり濃いようで、その後もダツ連発。「こればっかりですねぇ…ホラ」と渡された偏光眼鏡で海中を見ると、確かにかなりの数のダツが見てとれます。そして、その下には何やら悠然と泳ぐ大きめの魚影もチラホラ。この大きい魚を釣ってほしい…(完全に人頼み)。

肉付きのよいボディーは旨そうだが…

さて、こちらは引き続き足下のベラやらキタマクラ(外道のフグ)などと戯れていると、バシュッ! と鋭く竿を煽る音が響きました。隣を見ると、明らかに今までのダツとは違う何かよい型の魚が掛かったようで、磯竿が大きく弧を描いております。急いで玉網を手にして友人の所へ行くと「結構ヒキますねぇ」と、あくまで落ち着いた様子。

大きく曲がった竿は断続的に鋭く絞り込まれ、見ているだけでもスリリング。なかなか姿を見せない相手にワクワクしながら網を構えていると、やがて面積のある白い魚影が浮上し、水面に出たところで無事ネットイン。そのまま堤防上に引き上げてみると、50センチはあろうかというソウシハギでした。ダツとはまた違ったタイプのアブナイ奴ですが、肉付きのよいボディーはなんとも旨そうです。「コレでしたかぁ…」と苦笑いでハリから外し、逃がそうとする釣友を慌てて止めて「いらないんだったら下さ~い」と〝横取り40萬作戦〟を試みると快く頂くことができました。


ソウシハギ (C)週刊実話Web

このソウシハギ、何がアブナイのかと言いますと、内臓にパリトキシンという猛毒を溜め込んでいることが多いんですな。ちなみにパリトキシンの毒性は、フグ毒のテトロドトキシンの約50倍ほどとのこと。フグは〝当たると死ぬ〟ことから関西では鉄砲とも呼ばれますが、ソウシハギはさしずめバズーカといったところでしょうか。

グッと堪えて内臓はすべて廃棄!

ちなみにこの魚の特徴ともいえる、いかにも毒々しい蛍光ブルーの鮮やかな模様は、ミドリイシなどの珊瑚礁に紛れると見事な保護色となります。人間目線では派手にも思える模様が、魚目線では逆に自然に溶け込む意味合いがあるというのも面白いものです。

そんなソウシハギを今回はせっかくなのでテッサ(鉄砲刺身→フグ刺)のように薄造りにして晩酌です。まずは内臓を傷つけないように頭を落とすと見事な肝が現れました。


ソウシハギ (C)週刊実話Web

「こ、これは極めて旨そうだ…」コレの肝醤油で一杯やりたいところをグッと堪えて内臓はすべて廃棄。しっかりと水洗いした身を薄く切って皿に並べ、ソウシハギの薄造りの完成です。


ソウシハギの薄造り (C)週刊実話Web

ではひと口…フグに勝るとも劣らず、な~んていうと言い過ぎですが、上品かつ白身の味わいがしっかりとあって美味です。薄造りの下に箸を入れてガバッとすくって口にすると、より風味がしっかりと感じられ、日本酒との相性も抜群。貧乏性のワタクシですから、高価なフグでこんな豪勢な食べ方ができるわけもなく、束の間の贅沢気分(フグではないので実はエセですが)を堪能。釣り上げたうえに魚をくれた友人には、ホント感謝であります。


※本文中にもあるように、ソウシハギは内臓に猛毒パリトキシンを蓄えていることが多いため、決して食べることを推奨するものではありません。
三橋雅彦(みつはしまさひこ) 子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。