
「戦後復興期のスーパースター」として中学校の歴史教科書でも取り上げられる力道山。
だが、力道山は単に時代の波に乗って人気者になったわけではない。日本にプロレス文化を定着させるまでには、さまざまな試行錯誤があったのだ。
力道山が亡くなったのは1963年だから、その雄姿をリアルタイムで見た記憶があるプロレスファンとなると、今ではかなりの少数派だろう。
当時を知らない人間からすると、大相撲からプロレスに転じた力道山は、亡くなるまでずっとスーパースターだったようなイメージを持っているかもしれないが、実際には低迷した時期も何度かあった。
54年2月、シャープ兄弟を迎えて全国を14連戦した初興行が当たり、日本中にプロレスブームを巻き起こすことになったが、それから2~3年後には早くも集客に苦しむような状況だったという。
人気凋落の原因とされたのが54年12月22日、蔵前国技館で行われた〝昭和の巌流島〟木村政彦との日本選手権大試合であった。
「木村の前に木村なく、木村の後に木村なし」とまで讃えられた史上最強の柔道家は、力道山とタッグを組んだシャープ兄弟との対戦において、いわゆる「やられ役」を務めていた。
これを不満に思った木村は54年5月に力道山の下を離れ、地元熊本で『国際プロレス団』を設立。同年11月には朝日新聞紙上で「力道山のプロレスはジェスチャーの多いショーだ。真剣勝負なら負けない」と、力道山への挑戦を表明した。
力道山はこれを快諾。両者の対戦は「相撲VS柔道」の異種格闘技戦ということでも話題性十分で、大いに注目を集めることになった。
対戦相手のマンネリ化という問題も…
試合内容については、今なお考察がなされる謎多きものであったが、木村を一方的にKOするという結果は「力道強し」を広く印象付け、これは力道山からしても望んでいたことであったに違いない。
しかし、この試合後に予期せぬ批判が生じることになる。1つは木村の大流血という凄惨な内容についてのもの。もう1つは「引き分けの約束を力道山が破った」とする〝八百長論〟だった。八百長については当事者の多くが鬼籍に入った現在、真相を解き明かすことは難しいが、いずれにしても「プロレスはいかがわしいもの」とする風潮が強まることになった。
また、新たに「マンネリ化」という問題も発生した。名実ともに国内最強の座に就いた力道山だが、相変わらず対戦相手はシャープ兄弟や二流どころの外国人しかいない。
試合内容にしても基本は力道山の勝利であり、プロレスラーとしては実質的にまだ新人だったわけだから、展開がワンパターンになりがちで、どうしても観客に飽きられてしまう。
62年に発行された自伝の中で、力道山は木村戦について「興奮してついあんな結果になってしまったが、どんな場合でも感情的になって試合をすることは邪道で、その点、木村君にはすまなかった」と反省の弁を述べ、そのうえで「ルール内でできる限りの荒わざを取り交わすことが本当の真剣勝負だ」と語っている。
つまりプロレスとは、一方的に勝利することが目的ではなく、お互いに技を出し合って戦わなければならないという意味である。
瞬間最高視聴率は何と87%を記録!
日本デビュー前の米国修行時代に、プロレスのエンターテインメント性について学んできた力道山だが、現実に集客が落ちたことでようやく「プロレスのなんたるや」を実感したということか。
そこで力道山は、己の乗り越えるべき壁として57年10月にルー・テーズを招聘する。世界最強の誉れ高い〝鉄人〟の来日はビッグヒットとなり、テーズのNWA世界ヘビー級王座に力道山が挑戦したタイトル戦は、後楽園球場特設リングに3万人の観衆を集め、テレビ中継の瞬間最高視聴率は87%を記録した(61分3本勝負。互いにノーフォールの時間切れ)。
しかし、翌年に力道山が米国ロサンゼルスでテーズに勝利し、インターナショナル・ヘビー級王座を獲得したことで1つのクライマックスを迎えると、その後はまた世間のプロレス熱が冷めてしまう。
すると、59年には「世界各地の強豪レスラーを集めてリーグ戦を行う」という構想を実現させ、『第1回ワールド大リーグ戦』を開催。日本テレビでレギュラー放送が始まったことも重なり、高いレベルで安定した人気を獲得するに至ったのだった。
このように、日本でプロレス人気を保つための方程式をつくり上げたという意味からも、やはり力道山は〝日本プロレス界の父〟なのである。
《文・脇本深八》
力道山
PROFILE●1924年11月14日(諸説あり)~1963年12月15日。日本統治下の朝鮮出身。身長176センチ、体重116キロ。得意技/空手チョップ、ボディスラム、バックドロップ。
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