(画像)ID1974 / shutterstock.com
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プーチン大統領に迫るクーデター…「暗殺部隊」その全貌

ロシアの軍事侵攻により、ウクライナでは民間人を含め多くの犠牲者が出ている。


世紀の蛮行を止めるには、ウラジーミル・プーチン大統領を止めるしかない。


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「世界一暗殺が難しい男」と言われるプーチン氏だが、諜報組織や軍、新興財閥、そしてロシア国民からも「反プーチン」の声は高まりつつある。暗殺や失脚、クーデターなど、同氏の排除に向けた意外な「黒幕」も存在するという。


「今、すべてが可能になりつつある。プーチンは自分の身の安全が脅かされることを十分承知している」


英国の公共テレビ局『チャンネル4』の報道番組で、そう明かしたのはジャーナリストのアンドレイ・ソルダトフ氏。ロシアの諜報組織に確かな情報源を持つソルダトフ氏は、連邦保安庁(FSB)の対外諜報部門トップらがプーチン氏の逆鱗に触れ、自宅軟禁などの処分を受けたことをスクープしている。


FSBはプーチン氏がかつて所属したソ連国家保安委員会(KGB)の流れをくむスパイ組織だが、ウクライナ侵攻に関して都合のいい情報しかプーチン氏の耳に入れていなかったという。2~3日でカタが付き、ゼレンスキー大統領もあっという間に降伏するか追放されると吹き込まれていたプーチン氏は、想像以上の大苦戦に怒り心頭だ。


3月16日のテレビ演説でも「真の愛国者と人間のクズや裏切り者を区別し、吐き出すことができる」と述べ、国内の不満分子を弾圧することを示唆した。また、FSBに加えてロシア軍に対しても大なたを振るい、8人の司令官を解任したと伝えられている。


当然ながら諜報組織や軍にも不満はくすぶっており、そのことはプーチン氏も承知のようだ。前出の英報道番組で、司会者に「ウクライナの最前線にいる将軍たちが、FSBの将校たちと一緒にプーチン氏を追放することはないのか」と尋ねられると、ソルダトフ氏は「大統領はすでに予防策を講じ、クーデターや暗殺に備えている」と答えた。

「ロシアにブルータスはいないのか」

プーチン氏は有事の際、暗殺を恐れて首都モスクワのクレムリン(大統領府)を離れると言われてきた。エストニアのリホ・テラス元国防相は、今回のウクライナ侵攻の際に「プーチン氏はウラル山脈にある隠れ家に側近を招集し、会合を開いた」と明かしている。

プーチン氏がロシアで権力を握ってから20年を超えるが、「一貫した優先事項はクーデターや暗殺を回避する組織づくりだった」(大手紙外信デスク)という。


ロシア国営メディア『ロシア・ビヨンド』によれば、大統領の滞在場所には無線での爆発信号を妨害する装置が設置されている。連邦警護庁(FSO)所属のシークレットサービスは、いずれも35歳未満で身長175~190センチ、体重75~90キロ。彼らコワモテは「銃士」と呼ばれ、大統領の周囲を4重に取り囲んでいるという。


大統領車で移動する際には、自動小銃のAK47やドラグノフ狙撃銃、対戦車擲弾発射器、対空ミサイルシステムを装備した装甲車と車列を組む。


組織的なクーデターの阻止にも余念がない。2016年には新たな武力機関の「国家親衛隊」を創設し、いまや軍と牽制し合うほど力を付けた。


また、大統領に提供される食事は、医師がシェフと一緒にチェックしているとも報じられ、コロナ禍では5メートル離れたテーブル越しに面会する様子も放映された。


寸分の隙もないように見えるプーチン氏だが、米共和党のリンゼー・グラム上院議員は3月3日にツイッターで、ロシアのウクライナ侵攻を「終わらせるには、誰かがあの男(プーチン氏)を排除しなければならない」と投稿。古代ローマの独裁者、ジュリアス・シーザーの暗殺に加わったブルータスを引き合いに出し、「ロシアにブルータスはいないのか」と書き込んだ。

政権を批判する秘密文書が流出…

前出の外信デスクは「プーチン打倒に動く可能性があるのはFSBだろう」と語る。FSB内部から「ウクライナ侵攻は完全に失敗した」「6月になったらロシアには経済がなくなる」と、政権を批判する秘密文書が流出しているからだ。

FSBの工作員は過去に神経剤「ノビチョク」を使って、元スパイを海外で殺害したり、野党の有力政治家を重体にしたりと、恐ろしい「実績」を持つ。VXガスは致死性が高いことで知られているが、その5~8倍も猛毒という有力な武器を使いこなせるのだ。


一方、ロシア軍はウクライナ侵攻を直前まで知らされておらず、まともな作戦を立案できないまま矢面に立たされている。


米シンクタンクのロバート・ランシング研究所は、ロシアに軍事クーデターの兆候があるとして、大統領の最側近の1人、ショイグ国防相が「FSBを支配しようとしている」「プーチン氏の周囲に空白をつくり、孤立を深めている」と指摘。すでに「ボディーガードの一部が交代させられた」と分析している。


欧米などの制裁で資産が凍結され、経済が破綻寸前になったことで、ロシアの新興財閥「オリガルヒ」もプーチン氏に恨み骨髄だ。


ロシアでは日露戦争に敗れた1905年に反政府運動が全国に広がり、第一次世界大戦中の1917年にはロシア革命が起きて、ニコライ2世が追放、殺害されるなど「不人気な戦争」の際に大きな市民の蜂起が発生している。


プーチン氏が最も恐れているのは、ロシア国民かもしれない。