新型コロナウイルス感染症を巡り、「最悪の事態」を想定して対応してきた岸田文雄首相。
1月9日から適用し続けた「まん延防止等重点措置」が、3月21日をもってついに全面解除となり、首相は記者会見で「第6波の出口がはっきり見えてきた」と胸を張った。
しかし、政府対策本部で解除を正式決定した17日、全国の新規感染者数は約4万4000人。第6波のピークだった2月5日の約10万6000人に比べると半減しているが、デルタ株が猛威を振るった第5波のピークは、昨年8月20日の約2万6000人。感染を下げきったとは、とても言える状況ではない。
もちろん、新型コロナが日本に上陸してから2年以上が経過し、「社会への影響が限界にきている」(新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長)のはよく分かる。感染者のほとんどが軽症者とあって、経済界を中心に解除を求める声が強かったのも事実だ。
解除基準緩和のエビデンスはなし!?
そこで岸田政権が思いついた策が、解除基準の緩和だ。感染者数が大幅に下がらないなら、基準を下げてしまおうという実に乱暴な手法だった。新規感染者数が高止まりしていたり、病床使用率が50%を超えていたりしても、医療への負荷が低下する見込みなら解除できるというもので、最初から「解除ありき」だったのは疑いようがない。
重点措置下での大型イベントについては、大声を出さないなどの感染防止計画を作成するという条件付きで、これまであった2万人という上限を撤廃した。
さらに、保健所の業務逼迫回避と社会機能維持のため、企業などの一般事業所では、濃厚接触者を特定せず、出勤制限も求めないと決めた。まさに制限緩和策の大盤振る舞いで、「これまでエビデンス(科学的根拠)に基づいて決めていた自宅での待機期間は何だったのか」と、自民党の閣僚経験者もあきれ顔だ。
夏の参院選を控え、お得意の「聞く力」を発揮した格好だが、そこに科学や政策論はなく、あるのは大衆迎合だけ。桜の季節を迎えて制限緩和に走る、実にユルい岸田政権なのであった。
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