社会

ロシアがたどる“北朝鮮化”の道…核はあるのに食うものがない!

(画像)Anton Veselov / Shutterstock.com

ロシアのプーチン大統領は世界を破滅させるつもりなのか。

3月4日、ウクライナ南東部にある欧州最大級のザポロジエ原子力発電所の一帯が、ロシア地上部隊の砲撃を受け制圧された。原子炉に支障が出ない場合でも、電源の故障から冷却システムに不具合が生じれば、甚大な放射能汚染を引き起こしかねない。

2月27日にはプーチン大統領が、北大西洋条約機構(NATO)首脳らによる声明と西側諸国の対ロシア経済制裁を受け、核戦力を含む核抑止部隊を高度の警戒態勢に置くよう軍司令部に命じた。

ロシア国防省も28日、ショイグ国防相が核戦力強化準備態勢に入ったと発表。これは大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、長距離爆撃機の3大核戦力を運用する部隊が、すべて戦闘準備に入ったことを示している。

「西側諸国がプーチン大統領の個人資産を凍結すると発表したため、これらの制裁に対して、禁じ手である〝核の脅威〟を持ち出したのです」(経済アナリスト)

同日、ロシアの強固な友好国であるベラルーシも、非核国家の地位を放棄する内容の改憲案を承認した。これでロシアは、ベラルーシに核兵器を搬入することが可能になったが、両国は核拡散防止条約(NPT)の加盟国。ロシアは核保有国としての責任を放棄し、ベラルーシは非核国家の義務を破ったことになる。

西側諸国が経済制裁を強める中、企業撤退の動きも加速している。特に目立つのはエネルギー関連だ。

2月28日、石油大手の英シェルは、三菱商事と三井物産が出資するLNG(液化天然ガス)プロジェクト『サハリン2』を含む、ロシアからの全面撤退を決定。3月1日には米エクソンモービルが、経済産業省や伊藤忠、丸紅の合弁会社が30%出資する『サハリン1』からの撤退を発表した。

ロシアは北朝鮮と同様の歪んだ極貧状況に…

3月2日には決定打ともなる出来事が起きた。欧州連合(EU)が「国際銀行間通信協会(SWIFT)」の決済システムから、ロシアの有力銀行7行を排除することに合意したのだ。

「日本政府もこうした動きに合わせ、ロシア中央銀行との取引を制限すると発表。国際社会はロシアの軍事侵略に対して、いわば〝兵糧攻め〟で応戦しています。そもそもロシアは、原油や天然ガスといった資源を輸出し、それで得た収益で消費財を輸入するという経済構造ですから、今後は中国にいっそうの協力を求めざるを得ません」(大手シンクタンク研究員)

ロシアは面積こそ世界一だが、人口は約1億4500万人で、日本をわずかに上回る程度。経済規模は日本の3分の1以下、米国の10分の1にも満たない。GDP(国内総生産)もG7諸国はもちろん、韓国よりわずかに下回っている。

「経済制裁が本格的に繰り出されたことで、ロシアが北朝鮮と同じく、核およびミサイルは保持しているものの、肝心の食べ物がないという、歪んだ極貧状況に向かうことは確実です」(同)

ロシア、中国、北朝鮮に共通するのは、言論統制と国内反対派の粛清などに基づき、長期的な独裁体制を敷いていることだ。そのため、これらの国々は民主主義陣営からの「国際法違反」という非難にも、全く聞く耳を持たない。

プーチン大統領は2月21日、ウクライナ東部で親ロシア派の武装勢力が実効支配してきた2つの地域について、独立を自称してきた「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」を承認した。22日には、2014年から続く東部紛争の和平条件を定めた「ミンスク合意」について「もはや存在しない」と言い切っている。

「韓国は韓国で、中国によるウイグル、チベットなどへの弾圧、北朝鮮の度重なる挑発、そしてロシアのウクライナ侵攻でも、相手国の顔色をうかがうばかりで、完全に〝レッドチーム〟入りしています」(国際ジャーナリスト)

今こそ北方領土問題に声を上げよ!

北朝鮮は相次ぐミサイル発射について、国連安全保障理事会から中止要請を受けているにもかかわらず、馬耳東風を決め込んでいる。3月5日にも弾道ミサイルとみられる飛翔体を発射したが、明らかにロシアを側面支援する行動だった。

ただ、ロシア軍には不透明な部分もある。近年における米軍の定石と同様、ミサイル攻撃の次に大規模空爆を実施するとみられていたが、ロシア空軍に目立った動きはなかった。

その結果、ウクライナ軍はトルコ製ドローン(無人機)による攻撃に成功し、ロシア地上軍に大きな被害が出た。米国の軍事専門家はロシア軍の停滞について、航空機と熟練パイロットの不足が一因ではないかと指摘している。北朝鮮同様、通常戦力は意外と脆弱なのかもしれない。

ところで、ロシアによるクリミア半島併合や親ロシア派による支配地域の独立承認、そして今回のウクライナ侵略はすべて国際法に違反している。

「日本はこれまで北方領土問題を動かすため、ロシアとの共同経済活動に向けて協議を進めてきました。しかし、侵略国家の本性を露呈した現在、もはや経済協力を行うわけにはいかない。日本は協議の中止をロシアに伝え、今こそ北方領土はウクライナと同様の問題だと、声を上げなければならないでしょう」(同)

日本は「法の支配」を踏みにじるロシアに対して、批判の先頭に立たなければならない。

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