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『風のことは風に問え 太平洋往復横断記』著者:辛坊治郎~話題の1冊☆著者インタビュー

『風のことは風に問え 太平洋往復横断記』著者:辛坊治郎/扶桑社

『風のことは風に問え 太平洋往復横断記』扶桑社/1650円

辛坊治郎(しんぼう・じろう)
1956年大阪府出身。早稲田大学法学部卒業後、読売テレビ放送に入社。アナウンサー、プロデューサー、報道局情報番組部長・解説委員長などを歴任。現在は、(株)大阪綜合研究所代表、報道情報番組の司会、ニュース解説、講演会など、幅広く活動。

――太平洋横断の再挑戦に成功しました。今、どのようなお気持ちですか?

辛坊 太平洋横断前は、チャレンジ成功後、自分がどう変わるのか楽しみにしていたのですが、自分では何かが変わったような感じは全くありません。でも、よく他人には「辛坊さんは変わった」と言われますね。でも、人生の優先順位というか、自分にとって本当に大切なことが何なのかは見えました。このあたり、新刊に詳しく書いてありますので、是非お読み下さい。

――洋上ではどんな生活を送っていたのですか?

辛坊 基本的に陸上でのルーティンを崩さないように心がけていたのですが、激しく揺れる船の上ではまともに食事を摂ることさえままならず、往路だけで体重が15キロも減りました。嵐の連続だった往路に比べると、安定した貿易風帯を走った復路は時間的、精神的にも余裕が生まれ、読書が進みました。

出港前にかなりの量の本を積んで行ったのですが、復路の途中で読む本がなくなり、仕方がないので、船の機器のマニュアルを読んで過ごしました。電子ブックに入れた吉川英治訳の『三国志』を読破しましたが、登場人物が皆、60歳前後で死んでしまい、「人間はいつか必ず死ぬのだ」と強く思いました。

その瞬間を思い出すと身体が震える…

――航海にはトラブルが付きものですが、命に関わる危機などはありましたか?

辛坊 何せ私は出港前、大阪湾に浮かべた船で宴会するだけの「なんちゃってヨットマン」でしたから、太平洋横断中は自分の操船ミスで危機の連続でした。正直、生きて帰れたのが不思議なくらいです。一番の危機は、往路、サンディエゴ到着直前に海に落ちそうになった事です。

今でも、その瞬間を思い出すと身体が震えます。また復路では、気象が安定していたこともあり、「寝ぼけて海に飛び込んだらどうしよう」などと、とても不安な日々を過ごしました。嵐の連続だった往路の方がむしろ精神的には安定していたと思います。

――次はどんなチャレンジを予定していますか?

辛坊 太平洋横断に使った船は帰国後すぐに売ってしまい、現在、次の船の整備中です。今度の船は少し小さめで、日本の近海だけを走ることを想定しています。4月の半ばには進水出来そうなので、この船で約400ある日本のすべての有人島に上陸して動画撮影を行い、私のYouTubeチャンネル『辛坊の旅』で公開する予定です。

残りの人生の時間を考えると、これが私の最後のライフワークになりそうです。是非ご覧ください。

(聞き手/程原ケン)

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