新大関、御嶽海(出羽海部屋)が名実ともに誕生した。去る2月28日、春場所の新番付会見で、御嶽海は番付に載った自分の四股名を指さし、大きな笑みを浮かべた。
しかし、新大関の座は決して座り心地のいいものではない。
実はその逆。やっとの思いでたどり着いた割に、実は呪われた地位なのだ。
それを裏付けるデータがある。15日制が定着した昭和24年(1949年)夏場所以降、新大関優勝をやってのけたのは5人のみ。平成18年夏場所の白鵬が最後で、もう16年も出ていない。
それどころか、負け越す新大関も珍しくない。事実、栃ノ心、貴景勝、正代と、直近の5人中3人までが途中休場して、いきなりカド番に追い込まれている。
正代は令和2年秋場所、初優勝して待望の大関の座をつかんだ。名門の時津風部屋からは57年ぶり、出身地の熊本県からは58年ぶりの大関誕生で、次の横綱候補として大いに期待された。
ところが、新大関だった九州場所3日目の高安戦で足首を痛め、5日目から休場。これで勢いが失せたのか、大関在位8場所で二桁の勝ち星を挙げたのは、たった1場所だけ。今場所は何と3回目のカド番だ。
稽古時間が思うように取れない新大関
「大関になると後援者などの喜びも大きく、あいさつ回りや祝賀会などで、いっぺんに忙しくなる。そのため、稽古時間が思うように取れないところに、他の力士たちが目の色を変えて襲ってきますからね。よほどの実力者でないと好成績を挙げられません」(担当記者)
御嶽海も笑ってばかりはいられない。長野県からは227年ぶりの大関誕生で、地元は新聞の号外まで出るなど大フィーバーだったが、1月末には新型コロナに感染して1週間も入院する始末。2月中旬から稽古を再開しているものの、体重が7キロも減るなど仕上がりが遅れている。
「大関は言い訳ができない。しっかり調整して、最高の初日を迎えないと」
そう自らを戒め、新大関優勝を目標に掲げている御嶽海。果たして、前途は大きく開けるのか。
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