巨人・原辰徳監督が昨季限りで引退した〝平成の怪物〟松坂大輔氏とタッグを組み、昨季のナ・リーグMVP男、ブライス・ハーパー外野手の獲得を目指している。平時なら実現は難しいが、メジャーリーグは労使交渉の手詰まりが原因で開幕延期が決定。
混乱の間隙を突いて黒船来航か――。
昨季は開幕前に桑田真澄氏を投手コーチとして招聘し、テコ入れを図った巨人の原監督。しかし結果はリーグ3位に沈み、今季は日本ハム・新庄剛志新監督に人気も奪われた。
このままでは求心力を失う――。その危機感が引退した松坂氏を引き入れ、超大物助っ人獲得という戦略につながった。
オープン戦で日本ハムはチーム打率が12球団最低の1割7分1厘(3月6日時点)ながら、足攻と守備力で首位争いを展開中。5日の巨人戦ではエース菅野智之を相手に1番から4番に新人をずらりと並べ、3対0で完勝して度肝を抜いた。
「球界の盟主を自負する巨人は、ビッグボスの非常識な采配を放置できず、圧倒的な戦力で凌駕してやると。幸運にも大リーグは労使の対立で27年ぶりに開幕が延期になり、平時ではあり得ない超大物の来日の目が出てきた。メジャーに強い人脈を持つのが松坂氏。彼にアドバイザーを託す狙いはそこ」(スポーツ紙デスク)
松坂は巨人OBではないが、「原ファミリー」のコアメンバーだ。2009年WBCで侍ジャパンの監督とエースとして世界一を勝ち取り、強い絆が育まれた。原監督は「世界一の監督」にしてくれた〝侍たち〟への感謝を忘れず、後にソフトバンクから杉内俊哉投手、西武から片岡治大内野手、楽天から岩隈久志投手らをFA制度などを活用して巨人に迎え入れている。
30億円をどう捻出するか…
松坂氏との急接近が分かったのが、昨季のナ・リーグのMVP男、フィリーズのハーパー外野手の巨人へのラブコールの一件だ。
ハーパーは19年2月にフィリーズと当時のFAでの史上最高額となる13年総額3億3000万ドル(約379億円)で契約を締結。巨人といえども容易に手が出せない異次元のスター選手だ。ところがどっこい、このハーパーの方から巨人入りを売り込んできた。
3月1日、ハーパーは自身のインスタグラムに巨人のユニホームとヘルメット姿を合成した写真とともに「(読売ジャイアンツの皆さん)起きてる? 僕は時間を持て余している」「(代理人の)ボラスの電話番号は知ってるよね。話し合いましょう」と投稿。これに、巨人も公式インスタグラムで「ジャージーのサイズはいくつ?」と粋な切り返しで応じ、日米で話題になったのだ。
球界を含め、アメリカンジョークと受け止められているこの一件。しかし、実は〝間〟を取り持つ仕掛け人がおり、実現の可能性はあるという。そのフィクサーは、原監督がアドバイザーを求めた松坂氏なのだ。
松坂氏は06年オフ、ポスティング制度を行使してメジャー移籍を目指すにあたり、そのボラス氏と契約。レッドソックスと6年60億円のビッグ契約にこぎつけ、良好な関係は今も続いている。そんな中、野球解説者に転じるにあたり、ボラス氏から米球界の労使紛争の状況を聞く中で、同氏が代理人を務めるハーパーが巨人に興味を持っているという情報をキャッチしたのだ。
巨人事情に詳しい放送関係者が、その後の内幕を語る。
「松坂は初めてのキャンプ取材を巨人でスタートさせ、原監督と宮崎のサンマリンスタジアムの『原タワー』で会談しました。その際にハーパーの意向を伝えたそうです。原監督は『ウエルカムだよ』と歓迎し、『30億円をどう捻出するかだね』と。そのやり取りがボラス氏を介してハーパーに伝わり、先のインスタ発言につながったのです。ネットを介した与太話では決してありません」
原監督“自信満々”発言の裏
背景にあるのが、昨年12月から続くMLBと選手会の新協定締結の労使交渉決裂に伴う開幕延期だ。当面、中止されるのは開幕2カードだけだが、さらなる影響も予想されている。高額年俸選手は試合数に応じて減額されることから、ハーパーは巨人への緊急避難の保険をかけたのだろう。
3月1日に都内のホテルで開かれた財界人の巨人応援組織『燦燦会』総会では、渡辺恒雄・読売新聞グループ本社代表取締役主筆が「今年は優勝できると確信しております」と発言。原監督も「日本経済をすべて動かしているメンバーに見守られているということを宝物として、懸命に戦って参ります」と応じ、日本一を誓った。自信満々の発言の裏に、同日のラブコールが透けて見える。
ハーパー獲得は今後の労使交渉にもよるが、主要争点の1つが「チームの総年俸総額(ぜいたく税課税)」問題。対岸の巨人には、これも追い風となるだろう。
コロナ禍に加えて、ロシアのウクライナ侵攻で日本経済にも影響が出始めており、燦燦会メンバーの多くが「巨人の優勝で日本経済の景気浮上」で一致。松坂氏とタッグを組む原監督の手腕に期待を寄せている。
ポスト原監督を巡っては熾烈な争いが行われているが、阿部慎之助一軍作戦兼ディフェンスコーチのもとで「松坂入閣」の流れが強まっている。
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