新井見枝香 (C)週刊実話Web
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カリスマ書店員・ストリッパー/新井見枝香インタビュー~“性欲の対象”に憧れて…

新井見枝香は、全国レベルで名の知れたカリスマ書店員だ。ラジオやテレビにも出演し、朝日新聞などで書評コラムも書いている。


書店員としては直木賞・芥川賞の発表と同時に、自身の名前を冠した「新井賞」を発表。時に、その本の方が本家の受賞作より売れることもあるという。そんな彼女が、2年前からなんとストリップの舞台に降臨。どんなステージなのか? なぜ踊るのか? 見て、聞いてきた――。


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東京・台東区にある『シアター上野』。都内に残る、数少ない劇場の1つだ。30人も入れば満席になる小さな小屋で、彼女は昭和のヒット曲に合わせて『モンスター』を踊っていた。金髪。細身の体型。顔には満面の笑み。8割方入っている客は、一糸まとわぬ姿の彼女を手拍子で盛り上げる。その表情はいかにも楽しそうで、場内は幸せオーラに包まれていた…。


――舞台を拝見しましたが、踊りにぎこちなさがなく、慣れていると感じました。ダンスの経験があった?


新井 いいえ、それが全然ないんです。体育の授業のダンスは嫌いだったし、踊りたいと思ったこともない。クラブのようなところも行ったことはありません。なのに、初めて舞台に立った日からなぜか「堂々としているね」と言われたんです。


――身体もシェイプアップされていて、開脚など柔軟性も素晴らしい。そこは鍛えているんでしょ?


新井 それもまったく。たぶん、遺伝なんだと思います。母は180度開脚をしながらアイロンをかけるような人でしたから(笑)。誰にも習ってないのに、Y字やI字バランスができちゃうんです。そこはラッキーだったなぁと思います。

「1回ステージに上がってみない?」

――そもそも、どうして踊り子になろうと?

新井 3年くらい前でしょうか。私が書店員として働いていることもあり、『裸の華』(桜木紫乃著)という小説を読んでいたんです。踊り子が主人公で、舞台上で骨折して引退し、故郷でお店を開くというお話。作者の桜木さんとも仲良くさせていただいていて、シアター上野に誘ってくださったのが最初の縁でした。拝見した舞台は相田樹音さん。なんと、その小説のモデルさんだったんです。


――生まれて初めて見たストリップはどうでした?


新井 可憐さと儚さを併せ持っていて、とても美しい舞台でした。たちどころに魅了されて、翌日も1人で見に行くくらいハマってしまったんです。彼女を追いかけて遠征もするようになって、仲良くしていただいて食事を一緒にする間柄に。そんなある日、樹音さんからサプライズの提案をされたんです。「今度、桜木さんが見に来るんだけど、1回ステージに上がってみない?」って。


――トークゲストとかではなく、踊り子として?


新井 はい。その頃には常連のお客さんにも私の存在は知られていて、いきなり舞台に出て踊り出したら驚くだろうな、面白そうって。案の定、桜木さんは腰を抜かさんばかりにビックリしてくれてました。


――ちゃんと踊れたんですね?


新井 音楽が始まったら出るしかないですよね。ぶっつけ本番でしたが、樹音さんの振り付けを思い出しながら見よう見まねで服を脱ぎ、ショートパンツ1枚にまでなりました。不思議と恥ずかしさはなく、なんだか楽しいなと思ったのを覚えています。終わって舞台袖に下がった時、「すごくよかったから(踊り子を)やってみない?」と誘われて、数カ月後に本格デビューしたんです。ちょうど彼氏もいなかったし、親への後ろめたさもない。それよりも、劇場が年々減っている状況を黙って見ていられなかった…という思いもあります。


――書店員との両立はどうしているんですか?


新井 舞台は10日間単位のお仕事なので、その間は休まなければいけないのですが、副業に理解がある会社なので、なんとか説得できました。バンド活動をしたり、劇団に入っている同僚もいるので、「それと一緒です」って(笑)。職場でも応援してくれる人が多くて、ステージ衣装を作ってくれたり、舞台を見に来てくれた人もいるんです。「明日から10日間お休みをいただきます」と言うと「行ってらっしゃ~い」と送り出されたりして、自分でもビックリしています。


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新井 それが、全然ないんです。お付き合いしたことなら少しはあるのですが、ナンパとか告白された経験はゼロ。それに応えるかどうかは別にして、モテたら幸せだなぁと思います。実際、他人が自分に対して性欲を抱くという風に思えないんです。変な話かもしれませんが、踊り子としてだけでなく、一女性としても性欲の対象になってみたい思いはあります。


――あれれ? ずいぶんと自己評価が低いんですね?


新井 私の舞台を見に来てくれている人は、きっと性的な感情じゃないと思うんです。明るくて元気をもらえるとか、癒やされるとか、そういう評価なんじゃないでしょうか? それの証拠と言えるのかどうか、デビュー1年目でハイジニーナ(無毛)にしたんです。


――今もそうですよね。


新井 はい。なぜかというと、なかなか人気が出ないので、お姐さんたちに相談をしたんです。「どうやらハイジニーナ(無毛)にしたら人気が出るらしい」と、私なりに判断をして剃りました。そしたら、それまで私を応援してくれていたお客さんがショックを受けて、来てくれなくなっちゃったんです(笑)。もちろん、ハイジニーナ(無毛)が好きだからと来てくれるお客さんも増えたのですが、悩ましいですよね。


――維持するのも大変なのでは?


新井 そうなんです。毎日剃っているのですが、もともと器用じゃないのでカミソリ負けしたり生傷が絶えません。お姐さんは「だったら止めれば」と言ってくれるんですが…。


――そのお姐さんはどうしている?


新井 YとOだけきれいに剃っていて、センターの部分はちょこっとだけ生やしています。「だから両方のニーズに応えられる」と言ってました(笑)。


――さて、今後はどんな活動を考えていますか?


新井 最近、ラジオトークというのをやっていて、YouTubeみたいなハイテンションは苦手ですが、音声だけでじっくりと話すのは楽しいですね。食べることが好きなので、ツイッターやインスタグラムでも食べたものとか作ったものを色々とアップしています。舞台と同様、そちらにも遊びに来ていただけるとうれしいです。
新井見枝香◆あらいみえか 1980年7月24日、東京生まれ。身長159センチ。東邦音大中退。HMV&BOOKSに在職。近著に『胃が合うふたり』(千早茜と共著・新潮社)。3/10まで『シアター上野』に出演中。