『敗北からの芸人論』新潮社 /1430円
徳井健太(とくい・けんた)
1980年北海道出身。2000年、東京NSCの同期・吉村崇とお笑いコンビ『平成ノブシコブシ』を結成。テレビ番組『ピカルの定理』などを中心に活躍し、最近では芸人やお笑い番組を愛情たっぷりに〝考察〟することでも注目を集めている。
――本書は『デイリー新潮』の連載をまとめたものです。そもそも連載を始めたきっかけは何だったのですか?
徳井 もともと東野幸治さんがコラムを連載していたのですが、終了するにあたり、「次は徳井しかおらんやろ」と推薦してくれたんです。以前、東野さんのラジオにゲストで呼んでもらった際には「いつか売れるから大丈夫やろう、って思てたけど、いつまで経っても売れへんから呼んでみた」みたいなことをおっしゃっていたので、気にかけてくれていたみたいです。本当にありがたい話で、感謝しかありません。
――後輩芸人たちを批評する審美眼の鋭さが話題になっていますね。
徳井 尊敬の視点なんだと思います。逆に言えば、好きじゃない人には何のアドバイスも、否定も肯定も思い浮かばないので。「こんな面白い人達なら、もっとこうしたら良いのに!」みたいな話は、かなり前から後輩としていたんです。
僕は個人的に『EXIT』が好きで、それは面白いのももちろんですが、何度失敗しても這い上がっていくその姿勢と、正直さに感動さえ覚えています。だからきっと世間が知らないであろう、りんたろー。の介護との向き合い方、兼近(大樹)の児童福祉に対する考え方・行動が素晴らしいと思ったので、今回それを書かせていただきました。
同業者の支持が一番信頼できる
――人を褒めるのが苦手という人も多いです。コツなどはあるのでしょうか?
徳井 別に褒めようと思ってるわけじゃないんですけど、たぶん僕、自己肯定感が低いんだと思います。だから芸人やり始めた頃は、無理してボケたり大声出したりしてたんですが、本物と何回か対峙して、自分じゃ到底かなわないことに気がつきました。
なので無理をせず、思ったことを言ってるみたいな感じですね。無理して褒めることはないです。リスペクトです。
――徳井さんが現在、注目している芸人はいますか?
徳井 双子の漫才コンビ『ダイタク』ですね。ストイックにネタを作り続けていて、賞レースの決勝に姿を見せるのも時間の問題でしょう。でも、僕が思うのはそこじゃなくて、『オズワルド』や『デニス』などの後輩からすごく慕われている部分です。
やっぱり、同じ芸人に好かれている人は売れると思います。ブレークするまで時間はかかるかもしれませんが、同業者の支持が一番信頼できるんです。どんなに失敗し、勝負に負けても、諦めずに這い上がる度に面白く強くなっていく芸人を、僕は応援し続けていきたいです。
(聞き手/程原ケン)
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