ロシア戦火の裏で進む中国の“台湾侵略”と北朝鮮 “韓国浸食”の動き…
西で上がった戦火は東に波及するのか。実は不気味な符号がある。
ロシアがウクライナに侵攻した折、ウラジーミル・プーチン大統領はNATO(北大西洋条約機構)の介入に触れて、「ロシアは世界で最も強力な核大国の1つだ」と核攻撃も辞さない空恐ろしい発言をした。
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北朝鮮外務省も第8回党大会さなかの1月8日、米国に対し「世界で水爆にICBM(大陸間弾道ミサイル)、極超音速ミサイルまで保有する国はわずかだ。米国と対峙し、米本土を射程に収めて試射まで行い、世界を震撼させている国は、地球上で我が国だけだ」と米国を威嚇している。
核戦力の放棄により、ロシアの侵攻を許すことになったウクライナの脆弱性は、非核国である我が国と韓国および台湾が、核保有国のロシア、中国、北朝鮮に取り囲まれた現状に通じる。
2月26日、北朝鮮外務省はロシアのウクライナ侵攻について初めて言及し、その責任は米国にあるとの談話を発表。そして、翌27日朝、北朝鮮の平壌郊外にある順安付近から、日本海に向けて弾道ミサイル1発を発射した。米国をけん制するため、金正恩総書記がロシアの「後方支援」に乗り出したものとみられる。
「北朝鮮はウクライナを巡る問題で、これまでロシアを支持する立場を取ってきた。北朝鮮の〝旧宗主国〟に当たるロシアは、ほぼ毎年、小麦粉などの食糧支援のほか、国連の場では北朝鮮への制裁緩和を求めるなど、何かにつけて北朝鮮を擁護してくれた。ですから恩義があるのです」(国際ジャーナリスト)
虎視眈々と機会を狙う中国
中国もまた北朝鮮の庇護者である。「北朝鮮が現在の経済的困窮から逃れるためには、国連に経済制裁を解いてもらうより、韓国が蓄えた富を取り込んだほうが手っ取り早い。ですから、韓国が大統領選で国論が内向きである今こそ、北朝鮮は中国をバックに何かしらのアクションを起こす可能性があります」(軍事アナリスト)
中国は、日米豪印戦略対話(クアッド)への協力から距離を置く韓国の動きを注視しており、中朝陣営に取り込む機会を虎視眈々と狙っている。韓国は、北朝鮮との軍事合意に基づき、米韓の大規模な合同軍事演習を過去3年間実施していない。そのため、米韓連合軍の運用能力は大幅に低下しているという。
「朝鮮戦争の終戦宣言や平和協力協定締結も、北朝鮮に有利な措置であることから、韓国の防衛体制は弱まっており、北朝鮮を敵国としてきた韓国軍の士気も下がっています」(同)
ウクライナへの武力侵攻を受け、米国、イギリス、欧州連合(EU)など世界の主要国は、ロシアに対して「これまでになかったほどの厳しい制裁」を次々と発表している。プーチン大統領は平静を装っているが、国際銀行間通信協会(SWIET)から排除されたことで、ロシアの国民経済が大打撃を受けることは避けられない。
「ロシアに対する制裁は長期にわたる可能性があります。原油や天然ガスの輸出先を失ったロシアは、中国に買い取ってもらうしかありません。必要な工業製品が国際市場で入手できなくなった場合、中国から秘かに手に入れて急場をしのぐしかない」(前出・国際ジャーナリスト)
ロシアに対する経済制裁に、中国は「制裁は解決にならない」として加わっていない。その見返りのように、中国の習近平国家主席とプーチン大統領の共同声明では、「1つの中国」つまり台湾の独立阻止が再確認されている。
標的は台湾か尖閣諸島か…
「中国の国営新華社通信の上級編集員は、『中国はロシアを支持しなければならない。将来、中国は台湾問題でアメリカと渡り合うときに、ロシアの支持を必要とする』とコメント。台湾の蔡英文総統は2月23日、ウクライナ危機をきっかけに中国が軍事行動を起こしかねないと、警戒感を示しています」(同)ウクライナ情勢が緊迫する中、中国が台湾侵略に乗り出すという懸念は拭えない。日本ではあまり報道されていないが、2月22日には北京に駐在する日本の大使館員が、中国当局に一時拘束されるという事件が起きている。
この事件は外交官の不逮捕特権を定めた「ウィーン条約」に違反しており、国家主権を一方的に侵害されたことにほかならない。
「外務省事務次官が駐日中国大使館に抗議し、謝罪と再発防止を求めましたが、中国からは『身分不相応な活動をしていたので、中国の関係部門が法に照らして調査と質問をした』と主張し、日本の抗議を一蹴した。確実に中国は日本を甘く見て、こうした対応にどこまで日本が抗議してくるのか、その本気度を測っているのです」(軍事ライター)
5年後の2027年、中国共産党大会で4選を狙う習主席が、台湾や尖閣諸島を侵略する可能性は否定できない。しかし、防衛意識の高い台湾は、ウクライナのようにすんなり侵攻できるはずはなく、もし台湾本土に上陸すれば人的被害は甚大となる。
「となれば、台湾よりも尖閣諸島のほうが侵略は簡単です。今回のウクライナ侵攻では、米国がどこまで本気でロシアと対峙するかを中国は注視している。米国がウクライナのために自国の軍隊を投入しないのであれば、無人島の尖閣のために血を流すことなどあり得ません」(同)
自国を守る気概のない国は、同盟国からあっさり見捨てられる。厳しいようだが、これが国際政治の基本である。
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