
漫才コンビ『錦鯉』の持ちネタで、『移民の歌』を懸命に歌っているボケの長谷川雅紀に、渡辺隆が「ブルーザー・ブロディが出てくるぞ!」と突っ込むくだりがある。
今なお〝超獣〟のインパクトは、昭和のプロレスファンの心に強く残っているのだ。
新日本プロレスに参戦以降、ブルーザー・ブロディは「インテリジェント・モンスター」と呼ばれるようになった。1982年末から翌年にかけて連載された漫画『プロレススーパースター列伝』のブロディ編において、元新聞記者という前歴(実際には新聞のアメフトコラム担当)と、その内面性が描かれたことの影響もあっただろう。
85年3月21日、後楽園ホール大会。メインイベントのアントニオ猪木VSハクソー・ヒギンズが始まる直前、ベートーヴェンの『運命』が流れると、スーツ姿に花束とチェーンを抱えたブロディが登場し、すでにリングに上がっていたガウン姿の猪木と、視殺戦を繰り広げてみせた。
ちなみに、猪木は自著で『運命』を選曲したのが自身であったことを明かしている。他のスタッフからは「大げさすぎる」「クラシック音楽は似合わない」と笑われたようだが、しかし、これによって〝キングコング〟や〝超獣〟と呼ばれてきたブロディが、実は知的であるとファンに印象付けることになった。
インテリジェント」の箔付け
翌日に行われた移籍会見にも、ブロディはスーツ姿で現れ、その冒頭で「本日はブルーザー・ブロディの新たなる出発の日です。こんなエキサイティングな発表をみなさんと分かち合えることをうれしく思います」と、やはり怪物イメージとは異なる丁寧なあいさつをしている。
この時に猪木の印象を問われたブロディは、「猪木の目を見ていると、私と同じバーニングスピリットを感じることができる。彼と私の戦いはマインドとマインドのぶつかり合いとなるだろう。非常に楽しみにしている」と語った。
これがプロレス専門誌の表紙に「猪木の目にバーニングスピリッツをみた」と記されたことで、今日までブロディの名言として伝えられている。
こうしたキャラクターの変更は「全日本プロレス時代とは違うブロディ」を強調することで、その商品価値を上げたいという新日側の計算もあっただろう。
その当時、看板外国人選手がいなかった新日にとって、ブロディは願ってもない貴重な存在であり、これは新日初参戦の3日前に、後楽園ホールで猪木とブロディの有料公開練習を行ったことからもうかがえる。
そうして迎えた4月18日、猪木とブロディは両国国技館大会のメインイベントで激突した。
試合前にブロディが控室の猪木を襲撃したことなどは、ヘタをすると茶番にもなりかねなかったが、ここで効果を発揮したのが「インテリジェント」の箔付けで、「知的なブロディのやることだから、きっと何かしら意味があるのだろう」と、ファンやマスコミは深読みをした。
戦いぶりもそれまでのアメリカンスタイルと大差なかったが、猪木がうまく合わせた部分もあっただろう。単なるラフ&パワーファイトではない、どこか格調の高さを感じさせるものとして受け止められた。
「新日」以外では受け入れられなかった
結局、猪木とブロディのシングル戦は、計7回行われ、結果は猪木の1勝2敗4分け。勝敗はいずれも反則決着によるもので、今になって振り返ってみれば、名勝負というよりはむしろ凡戦に近かった。
しかし、それでも批判が起きなかったのは、ブロディ=知的のイメージ戦略がうまくいったことが大きかったのではないか。実際、猪木戦後のブロディは、試合内容自体は代わり映えしなくとも「神経戦で猪木の上を行くことができた」などと、意味ありげなことを話していたものだった。
「ブロディは自分のレスラーとしての価値を高めるために、己のスタイルを貫いた」とはよく言われることだが、こうして振り返ると、新日参戦初期には団体側の要望にかなり寄り添っていたようにも見える。
あるいは本来ブロディ自身が、知的な面や人間味を出すことを望んでいながら、新日以外では受け入れられなかったのかもしれない。
その証拠に87年から全日に復帰したブロディは、その翌年3月、ジャンボ鶴田の持つインターナショナル・ヘビー級王座に挑戦し、これに勝利するとファンや関係者たちと涙ながらに抱き合い、喜びの感情を爆発させている。
このことはブロディの新境地を予感させる一幕となったが、同年7月16日にプエルトリコで凶刃に倒れたことで、結局「新たなブロディ」を見ることはかなわなかった。
《文・脇本深八》
ブルーザー・ブロディ
PROFILE●1946年6月18日~1988年7月17日没。米ミシガン州デトロイト出身。身長198センチ、体重140キロ。得意技/キングコング・ニー・ドロップ、ドロップキック。
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